「ボスニア・ヘルツェゴビナ」ってどんな国? 平和のシンボルとなった橋や路上のバラ、サッカー日本代表監督との関係など、魅力をたっぷり紹介【HugKum世界紀行】

バルカン半島にある国「ボスニア・ヘルツェゴビナ」。ここには平和のシンボル的な橋や路上に咲くバラ、絶景の滝など、たくさんの見どころがあります。この記事では、ボスニア・ヘルツェゴビナの基本情報、有名スポット、特徴などを紹介します。どんな国なのか、さっそく見ていきましょう。

ボスニア・ヘルツェゴビナ基本情報

まずはボスニア・ヘルツェゴビナの正式な国名や首都、場所などといった基本情報を見ていきましょう。

国名

正式な国名は、「ボスニア・ヘルツェゴビナ」といいます。

首都

首都は、サラエボです。

場所

ボスニア・ヘルツェゴビナは、東南ヨーロッパのバルカン半島北西部に位置する国です。北から西側はクロアチア、東側はセルビア、南側はモンテネグロに接しています。

日本との時差

日本とボスニア・ヘルツェゴビナとの時差は7時間で、日本のほうが7時間進んでいます。たとえば日本が午前7時だとすると、ボスニア・ヘルツェゴビナは午前0時となります。

面積

ボスニア・ヘルツェゴビナの面積は、5.1万平方キロメートルです。これは日本の中国地方(約3.1万平方キロメートル)と四国地方(約1.8万平方キロメートル)を足した面積とほぼ同じです。

エリア

ボスニア・ヘルツェゴビナは、大きく3つのエリアに分かれています。

ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(青)、スルプスカ共和国(赤)とブルチコ行政区(緑) Wikimedia Commons(PD)

●ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦は、中央部の大きな範囲を占めるエリア。首都・サラエボや、モスタル、ヘルツェゴビナ=ネレトヴァなどの都市があります。

●スルプスカ共和国
スルプスカ共和国は、ボスニア・ヘルツェゴビナの構成体の1つで、北西部に位置します。塩の採掘や温泉などが有名です。

●ブルチコ行政区
北東部にあるブルチコ行政区は、クロアチアとの国境となっているサヴァ川に面しているエリア。ボスニア・ヘルツェゴビナ最大の港町で、国境にかかる橋や、美しい市庁などが魅力です。

人口

ボスニア・ヘルツェゴビナの人口は、323.3万人(2022年・世界銀行)です。これは静岡県の人口(361.9万人)よりもやや少ない数となります。

首都サラエボの市街地

言語・公用語

ボスニア・ヘルツェゴビナで使われている言語は、ボスニア語、セルビア語、クロアチア語です。

通貨

ボスニア・ヘルツェゴビナの通貨単位は兌換(だかん)マルクです。日本円にすると、1兌換マルクは81.16円です(2024年9月29日現在)。

宗教

ボスニア・ヘルツェゴビナの人々が信仰する宗教は、イスラム教、セルビア正教、カトリックなどです。

カトリックとイスラム教、セルビア正教会が混在する街並み(ボサンスカ・クルパ) Photo by Mazbln , CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

歴史 概略

ボスニア・ヘルツェゴビナには現在の国境となる以前から複雑な歴史がありますが、概略を示すと次のとおりです。

6世紀 スラヴ人定住開始
14世紀 ボスニア王国を確立
1463年 オスマン・トルコがボスニアを征服
1878年 オーストリア・ハンガリー帝国の統治下となる
1918年 セルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国領となる
1945年 旧ユーゴスラビアを構成する共和国の一つとして発足
1992年2月 独立を問う住民投票を実施し、独立宣言
1992年4月 民族間の本格的紛争に突入
1995年12月 デイトン和平合意成立

紛争の爪痕の残る街並

天気・気候

ボスニア・ヘルツェゴビナは、地域によって気候が異なります。

内陸部は夏は暑く乾燥していて、冬は寒く雪も降ります。山岳部は夏は涼しいですが、冬は寒さが厳しいです。海岸部は夏は暑く乾燥していますが、冬はさほど寒くなく穏やかな気候となっています。

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都・サラエボと日本の首都・東京をくらべると、ボスニア・ヘルツェゴビナのほうが平均気温は低く降水量も少ない傾向にあります。

ボスニア・ヘルツェゴビナの治安・住みやすさ

ボスニア・ヘルツェゴビナの治安や、住みやすさを解説していきましょう。

治安は安定してきている

1995年の紛争終結後、ボスニア・ヘルツェゴビナの治安は安定してきています。ただしスリやひったくりといった犯罪が多いため注意が必要です。

またボスニア・ヘルツェゴビナとスルプスカ共和国の境界周辺地域は地雷が残っている可能性があるため、これらの地域には外務省の危険情報が出ています(2024年8月1日現在)。

住みやすさは悪くない

現在のボスニア・ヘルツェゴビナは、治安も比較的よく物価も安いため、その点では住みやすい国という声もあります。

ボスニア・ヘルツェゴビナの見どころ・観光

ボスニア・ヘルツェゴビナには、世界遺産や観光スポットなどの見どころがたくさんあります。その代表的なものを紹介していきましょう。

モスタル旧市街の古橋地区

2005年に世界文化遺産に登録された「モスタル旧市街の古橋地区」。この町のシンボルとなっているのが、オスマン帝国に支配されていた時代に建設されたとされる橋「スターリ・モスト」です。

モスタルのシンボル「スターリ・モスト」

地元の石灰岩を使ったトルコ式アーチ型の石橋で歴史的価値が高く、多民族・多文化の共生や平和の象徴となっています。

ヴィシェグラードのソコルル・メフメト・パシャ橋

ボスニア・ヘルツェゴビナ東部に位置するヴィシェグラードの「ソコルル・メフメト・パシャ橋」も、2007年に世界文化遺産に登録されています。

白い石造りのアーチが美しい

この橋は全長約180メートル、石造りの巨大な橋で、16世紀末にオスマン帝国の宮廷建築家だったミマール・スィナンが手がけたものです。石造りのアーチが美しく、当時のオスマン帝国の建築技術の高さが伺い知れます。

「サラエボのバラ」

首都・サラエボの歩行者天国には、路上でたくさんのバラを見ることができます。といっても本物のバラではなく、紛争中に受けた路上の砲撃跡に赤いペンキが塗られたもの。

紛争中に受けた路上の砲撃跡

この赤いペンキがバラの花びらのように見えることから「サラエボのバラ」と呼ばれています。このサラエボのバラは、紛争の悲劇を忘れないために残されているのだそうです。

クラヴィカの滝

夏には泳ぐこともできる

ボスニア・ヘルツェゴビナの南部にある「クラヴィカ滝」は、全長約120m、落差約25~30mの滝がいくつも並ぶ滝です。

ダイナミックな滝と、エメラルドグリーンの湖はまさに絶景。ボスニア・ヘルツェゴビナの「平和のオアシス」といえるスポットです。

ボスニア・ヘルツェゴビナの特徴・有名なもの

観光スポット以外の、ボスニア・ヘルツェゴビナで特徴的なものや有名なものを紹介していきましょう。

国名の由来

「ボスニア・ヘルツェゴビナ」という国名は、前後でそれぞれに意味があります。

「ボスニア」は、北部を流れるボスナ(清い)川という意味で、英語に訳したものです。「ヘルツェゴビナ」は、ドイツ語の「Herzog(公爵)」という言葉に由来し、15世紀に現ヘルツェゴヴィナを統一した領地を「ヘルツェグ(軍司令官)」と呼んでいたため、その名がついたといわれています。

国旗の意味

ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗は、青、白い星、黄色の逆三角形で構成されています。

ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗

青と星は、EU(ヨーロッパ連合)の旗を手本にしてデザインされ、ヨーロッパの一員であることを表しています。黄色の逆三角形は、黄色が希望と太陽、逆三角形が国土の形を表しています。

このデザインには、ボスニア、セルビア、クロアチアの3つの民族の融和の願いが込められているのだそうです。

ボスニア料理

ボスニア料理は肉料理が多いのが特徴的。牛肉、ラム肉、豚肉などを焼いたり煮込んだりする料理があり、味付けはこってりしています。

ボスニア料理の定番「チェバブチチ」

なかでも、ひき肉のソーセージを油でひたひたになったパンではさみ、生タマネギを添えて食べる「チェバブチチ」は国民食です。

サッカー日本代表監督

ボスニア・ヘルツェゴビナは、日本サッカー界と縁があります。というのも、元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシム氏やヴァイッド・ハリルホジッチ氏はボスニア・ヘルツェゴビナ出身だからです。

ボスニア・ヘルツェゴビナではサッカーが国民的スポーツとなっており、この国出身の選手が世界で活躍しています。

サッカーが国民的スポーツ

美しい風景が広がる「ボスニア・ヘルツェゴビナ」

ボスニア・ヘルツェゴビナは、多様な文化と自然の美しさが織り交ざった魅力あふれる国です。古代から続く歴史が刻まれた橋や建築物、紛争の爪痕を残しつつも平和を象徴するスポット、絶景の滝や豊かな自然に囲まれた風景などが訪れる人々を魅了します。

紛争を経たからこそ、今では観光地としても注目を集め、多文化共生の象徴として世界中の人々が訪れる場所となっています。ヨーロッパの「隠れた宝石」ともいわれるこの国に思いを馳せてみてください。

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文・構成/HugKum編集部

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