ニーズが急増する「夜間中学」とは? 入学の要件や学校の特徴を知ろう【学びの多様性を考える】

現在、文部科学省は、全ての都道府県・指定都市に「夜間中学」が設置されることを目指し、設備や内容面の充実に取り組んでいます。夜間中学では、どのような授業が実施されるのでしょうか? 設置の目的や近年の動向、入学の要件などを解説します。

夜間中学とはどんな学校?

「夜間中学」と聞いて、普通の中学との違いや、誰が何の目的で通うのかをイメージできない人は多いかもしれません。夜間中学とは、どのような学校なのでしょうか?

公立中学校の夜間学級のこと

夜間中学とは、公立中学校の夜間学級のことで、正式名称は「中学校夜間学級」です。昼間の中学と同じ教科を学び、全ての課程を修了すると中学校卒業の資格が得られます。

戦後の混乱期は、中学を卒業しないまま仕事や家事に従事する若者が少なくありませんでした。これらの人々に義務教育の機会を提供するために、公立中学校の二部授業として設けられたのが、夜間中学のはじまりです。

1945年ごろに昼間の中学校に付属して設立され、1955年ごろには全国の設置数が80校を超えました。

出典:文部科学省・文化庁の取組について|文部科学省

全国で増加中の夜間中学

戦後の高度経済成長期を経て、夜間中学は徐々に減少しましたが、近年は全国の設置数が再び増加しています。2024年4月時点では、31都道府県・指定都市に53校が設置されています。

開校を決定した地域や開校に向けて検討を進めている地域もあり、今後はさらに数が増えるでしょう。生徒層も時代とともに移り変わり、現在は本国で義務教育を修了できなかった外国籍の人が多く見られます。

不登校の小中学生が増加傾向にあることから、今後は授業を十分に受けられないまま卒業した「中学既卒者」の学び直しの場にもなると予想されています。

出典:夜間中学の設置・検討状況:文部科学省

夜間中学の基本情報

夜間中学に入学後、生徒はどのような学校生活を送るのでしょうか? 生徒の募集時期や入学の要件など、入学に関する事項もあわせて見ていきます。

入学の要件は各学校に確認

入学要件は、各学校によって若干の違いがあります。例えば、東京都の夜間中学では、以下のような要件を設けています。

●小学校や中学校を卒業していない人
●不登校などの理由で、中学校の授業を十分に受けられなかった人
●都内在住または在勤
●15歳以上

2022年時点では、全国にある開校中の学校全てで「中学校を卒業していない人」だけでなく、「十分な教育を受けられなかった中学既卒者」も対象です。既卒者の場合、本人の入学目的や就学状況から、各校が入学の可否を判断する形になるでしょう。

また、入学の要件には「学校が設置された都道府県内に住所や勤務地があること」が含まれるケースも多く見られます。

生徒の募集時期と入学手続き

募集時期は学校によって異なりますが、通常は4月入学が基本です。随時入学を認めるところもあるため、詳細は各校に問い合わせましょう。入学までのおおまかな流れは以下の通りです。

1.説明会に参加する
2.自治体で事前相談する
3.入学希望申請書を作成し、期日までに提出する
4.希望者は入学体験に参加する
5.学校で面談を行う
6.面談結果が通知される

事前相談や面談などを経て、ふさわしいと判断された人が入学できます。

入学後の生活は公立中学と似ている

夜間中学の学習教科は9科目、授業は週5日で原則3年間、教員免許を持つ公立中学校の先生が教えます。ホームルームや学校行事もあり、昼間の中学と過ごし方は大きく変わりません。

授業料は無償で、学校によっては簡易的な給食を提供しています。ただし、給食費・教材費などは有料のこともあります。

昼間の中学との違いは、「授業時間数」です。例えば、昼間の中学には年間で約1,015時間の授業時間数が確保されますが、夜間中学は700時間前後に短縮されるケースもあります。

外国籍の生徒が多い学級では、必要に応じて通訳を用意したり、日本語を教えたりする場合があるようです。

出典:公立中学校の夜間学級|東京都教育委員会ホームページ
夜間中学の設置・充実に向けて【手引き】|文部科学省

覚えておきたい関連キーワード

夜間中学に関連する学校には、「不登校特例校」と「自主夜間中学」があります。一般的な夜間中学との違いを押さえましょう。

学齢生徒を受け入れる不登校特例校

不登校特例校(学びの多様化学校)とは、不登校の学齢生徒のために特別な配慮をしている学校です。「学齢生徒」とは、就学して義務教育を受けるべき年齢の生徒を指します。

夜間中学が「昼間の中学で不登校になっている学齢生徒」を受け入れる場合、事前の申請によって不登校特例校の認定が必要です。

2024年7月時点で、不登校特例校は全国に35校ありますが、需要に比べてまだまだ少ないといえます。

出典:学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧 :文部科学省

無認可の自主夜間中学

自主夜間中学とは、地域住民やボランティア団体などによって運営される「非公式」の学習機関です。年齢や国籍に関係なく、生徒のニーズに合わせた授業を展開しています。

フリースクールや日本語学校のような役割もあり、不登校状態にある中学生や日本語を勉強したい外国人も参加できます。

公立の夜間中学との大きな違いは、中学校の卒業資格が得られない点です。学校としての認可は受けておらず、あくまでも「学び」を必要とする人が通います。全ての授業に出席しなければならない決まりはなく、いつ何を学ぶかは本人の選択に委ねられます。

夜間中学の役割と重要性を知ろう

夜間中学は、さまざまなバックグラウンドを持った生徒たちがともに学べる場所です。1945年ごろに設置されて以来、義務教育を受けられなかった多くの人を受け入れてきました。

夜間中学での学校生活は、昼間の中学と大きく変わらず、全課程を修了すると中学校の卒業資格を得られるのが特徴です。資格を取得することで自信や達成感を手に入れ、新たな道が開かれる人もいます。

近年は、不登校などで全日制の中学に十分通えなかった人の「学び直しの場」として注目されている点も、押さえておくとよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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