※この記事は 【生成AIで子どものことばを磨く】AIに「負けない」から「共存」へ の続編です。
生成AIの活用例③ 敬語に親しむ
生成AIは、話しことばの改善にも役立ちます。特に敬語というのは日本語にとって身近でありながら実は非常に習得が難しいものですが、生成AIとの対話のなかで、自然に身に着けることができます。
たとえば「言う」の尊敬語が「おっしゃる」、謙譲語が「申し上げる」だ、というように、一つひとつ学んでいくのは面倒なばかりでなく、実際にいざ使わなければならないときにすぐ出てくるようにはなりません。現実的な場面の中で習得していくことが必要です。
大家族があたりまえだった昔は、親が(義)父母に使うことば遣いを聞きながら自然に覚えることができたものですが、今はなかなか難しい。先生が生徒に丁寧語で話すようになっても、尊敬語や謙譲語を聞く機会は少ないかもしれません。
でもたとえば、生成AIに「私を国王だと思って、とびきりの敬語で返事をしてもらえますか」と依頼したところ、こう返事をもらいました。
恐れながら、謹んで申し上げます。
陛下のお言葉を賜り、誠に光栄に存じます。この臣が、御質問にお応え申し上げます際には、最大限の敬意と慎みを持ちまして、陛下のお立場にふさわしい言葉を用いる所存でございます。
思わず吹き出してしまいました。「国王」はちょっとやりすぎたかもしれませんが、こういう風に、いろいろと立場を変えながらさまざまな敬語を使い分けられるようになります。
ためしに「あなたが国王で、私が臣下だという設定でしゃべってもいいですか」と訊いてみてください。国王らしいことば遣いで返事をしてくれます。こちらのことば遣いがおかしなときは、直してくれるように言っておくならば、なお効果的でしょう。
このように、生成AIは、会話を通じて自然に敬語を習得するのに役立ちます。
生成AIの活用例④ 国語のクイズを出してもらう
これはもうすぐに実例を見てもらいましょう。「小学3年生用の漢字の問題10題作ってください」と依頼しました。数秒で出た回答が以下のものです。
小学3年生用の漢字問題を10題ご用意いたしました。それぞれの問題には、日常生活でよく使う漢字が含まれています。
1【読み方問題】 次の漢字の読みを答えなさい。
青空 / 学校 / 電話
2【書き問題】 次のひらがなを漢字に直しなさい。
しんぶん / せんせい / どうぶつ
3【部首問題】 次の漢字の部首を答えなさい。
鳥 / 雨 / 林
4【同じ部首の漢字を探せ】 「花」と同じ部首の漢字を1つ書きなさい。
5【反対の意味の漢字】 次の漢字の反対の意味を持つ漢字を書きなさい。
大 → ( ) 右 → ( )
6【漢字の使い方】 次の文を完成させるために、( )に適切な漢字を入れなさい。
今日の( )は、とても晴れている。
学校で( )を習いました。
7【熟語を作ろう】 次の漢字を使って、2つ以上の漢字でできている言葉を作りなさい。
花 / 友
8【送り仮名をつけなさい】 次の漢字に適切な送り仮名をつけなさい。
食( ) / 見( )
9【漢字を組み合わせよう】 「目」と「耳」を使って、熟語を作りなさい。
10【同音異義語】 次の文にふさわしい漢字を入れなさい。
母が(かいもの)に行く。
朝、(かいすい)で泳ぐ。
これらの問題は、漢字の読み書きや意味理解の力を養うことを目的としています。
わたしの依頼した「10題」は読み書きを合わせてトータルで10問くらいというつもりだったのですが、生成AIはなんとこちらの期待をはるかに超えて、10種類20問以上を作ってくれました。ありがとう。
8の「食」は「たべる」と「くう」のどちらを書くべきか悩む子がいるかもしれませんし、10の「かいもの」と「かいすい」は厳密には「同音異義語」ではないですし、「海水で泳ぐ」とはあまり言わない気もしますが、それくらいは目をつぶりましょう。
漢字だけでなく、慣用句、熟語、文法など、生成AIは、ことばに関する問題をいくらでも出してくれます。活用例③の敬語に関するクイズも作れます。もちろんすべての問題に対して、答も(依頼すれば)同時に作ってくれます。
さらに、有名な文学作品(つまり生成AIが既に学習している作品)に関してならば、内容に関する問題も出してくれます。ためしに、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』のテーマに関する問題を出してもらい、わざとトンチンカンな解答をしてみたところ、人間の教師とは違って、憤りや落胆を表すことなく、優しく訂正してくれました。
ただ、文学作品に限らず、情報の確かさが問題になるようなものに関しては、お子さんだけで使うのはやめておいたほうがよいでしょう。その場合は、親が真偽をまず確認しておく必要があります。
生成AIの活用例⓹ 的確な伝え方を学ぶ
さて、ここまでいくつかの活用例を見てきましたが、しかしこうして使っていく中で、ときにこちらの要求に必ずしも応えてくれない場合があることに気づくでしょう。AIが知らない、あるいはなんらかの倫理基準に抵触することで回答を拒否するというような場合ではなく、ピント外れな答が返ってくるときです。
その場合は、こちらの尋ね方がまずかったということになります。
たとえば、活用例④のように、クイズを出してもらう場合、ただ「漢字のクイズを出してください」というだけでは、簡単すぎたり難しすぎたり、あるいは数が多すぎたり少なすぎたりしてしまうでしょう。「3年生の」とか「10題」とかいう適切な限定が必要です。
あるいは活用例⓵のように作文を手伝ってもらう場合も、たとえば「夏休みの思い出に関する作文を手伝ってください」と頼んだところ、いきなり模範的な作文そのものが返ってきました。
あまりに親切すぎて、私の考える「手伝い」の範囲を超えていました。それで「手伝ってください」ではなく、「アドバイスをください」と指示をし直すことで、自分自身で作文を仕上げていく手助けをしてくれるようになりました。
相手が人間であれば、とりわけ家族同士など親しい間柄であれば、みなまで言わずともこちらの気持ちを察してくれて、ほしい答を与えてくれるかもしれません。ですが、生成AIにそこまで求めることはできません。
でもだからこそ、誤解が生じないようにきちんと伝わるかたちで指示を出すことが必要になり、試行錯誤を繰り返しながら、どうすれば伝わるか、ということを学習できるようになります。
これはゆくゆく、どんな相手にも伝わりやすい文章を書く上での訓練になりえます。
親がまず使い慣れる
この稿では「国語力」に関わることだけ考えましたが、生成AIが教育において効果を発揮する場面はほかにもたくさんありえます。
また、生成AIができることは加速度的に増えています。上にあげた以外の使い途もどんどん増えていくに違いありません。
お子さんにとって、生成AIは、少なくともある種のゲームよりよほど価値あるものになりえます。なにより決まった使い方があるわけでなく、使う人のそれぞれのニーズに合わせて応えてくれる点で、非常に有能かつ有効です。
ですが、その分、注意も工夫も必要になります。子どもにまったく野放しで使わせる前に、まず親が十分に使い慣れる必要があります。
今回は活用法にしぼり、生成AIの危険性については触れませんでしたが、調べものに使った場合の情報の信用性の低さや、生成AIとの対話にのめり込んで現実の人間関係に戻れなくなるといった問題もあります。少し前ですが、生成AIと結婚した、と宣言する人まで現れました。ゲームほどではないにせよ、依存の危険があるということです。
ですから、まずは親が、そして慣れてきたらお子さんと一緒に使うようにしてみてください。遊びながら新しい使い方が発見できるかもしれません。
うまく使えば、生成AIは、遊び感覚で対話しながら、自分のことばを磨くために役立つとても有能な家庭教師になりえます。
AI活用例〈作文・文章添削編〉はこちら
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