子どもの好きなお話の「3つの特徴」とは?絵本のプロが教える0,1,2歳児の読み聞かせアドバイス

近年、乳児期からの絵本に触れることの大切さが見直されています。保育の現場でも子どもたちが絵本に接する時間が増えているそう。子どもに絵本を与えたいけど、選び方の基準がわからないという方は多いと思います。ベテランの図書館司書で読書アドバイザーの児玉ひろ美さんが、0・1・2歳児に向けた絵本選びのヒントをお伝えします。

絵本がきっかけで気づいた子どもの成長

松谷みよこさんの『いない いない ばあ』は、初版から50年以上たった今も読まれ続けているロングセラー絵本です。ところが、この数年、保護者の方から「読んでも子どもの反応が薄くて」「あまり好きじゃないみたいで」という声が寄せられるようになりました。

この声を受けて、わたしが思ったのは「親子で実際の、いないいないばあ、の遊びをしていないのでは?」ということでした。お子さんたちは、母さんやお父さんと「いないいないばあ」をしないまま、絵本ではじめて体験をしているのではないかと思ったのです。そこで、絵本を喜ばなかったという6か月のお子さんがいらっしゃるご夫婦に、1週間、たっぷり「いないいないばあ」を遊んでから、改めて絵本を読んでみて、とお願いをしてみました。

すると、お子さんは絵本をみただけで、おしりを弾ませて喜んだり、自分のよだれかけで「いないいないばあ」をしたりと、あきらかな反応があったそうです。そのご夫婦はお子さんの様子の変化に驚いて、しみじみと「1冊の絵本でこんなに子どもの成長を喜ぶことができるものなのですね」と語ってくれました。

0・1・2歳の子どもの好きなお話とは?

『いないいないばあ』の事例は、絵本がお子さんの体験と一致したことから生まれた例ですが、幼い子どもの好きなお話には特徴があります。絵本を選ぶ目安になさってください。

言葉・場面がくりかえされるお話

言葉であれば、「ごっくんごっくん」「じゃあじゃあ」などのオノマトペが用いられているものも多いでしょう。同じだからと、音を省略せずに丁寧に読みます。場面では、その繰り返しの言葉、例えば『おおきなかぶ』の「うんとこしょ、どっこいしょ」などは、やや声を張ってスムーズに読みましょう。また、くりかえしの音や言葉を、お子さんと一緒に読むのもいいですね。

ハッピーエンドのお話

最後は幸せな気持ちで終わる作品を好むのは、子どもに限ったことではありませんね。大切なことは、子どもにとって納得のいく「めでたし」であることですが、その内容は「おいしかったね」「じょうずにできました」「おやすみなさい」など様々です。子どもがしあわせな気持ちになることが「めでたし」と考えてください。そんなお話をいくつかご紹介しましょう。

「にこっ!」でおわる:『だるまさんが』かがくいひろし作 ブロンズ新社

「またあした!」でおわる:『ぺんぎんたいそう』齋藤槙:作 福音館書店

「おててがでたよ~」でおわる:『おててがでたよ』林明子:作 福音館書店

安心の場に戻るお話

「めでたし」のひとつにもなるのですが、どこかに出かけ、その出発場所に戻ってくることは、子どもにとって安心感を育みます。それは、自分の家ばかりではなく、椅子やベッドのこともあり、家族や友だちでもあります。お話の例を3つ紹介します。

お母さんのいるおうちに帰る:『ぼくつかまらないもん!』マーガレット・ワイズ・ブラウン:作 長野ヒデ子:絵 あすなろ書房

お父さんに捕まえてもらえる:『こりゃまてまて』酒井駒子:作 福音館書店

お母さんにだきつく:『ねーずみ ねずみ どーこいきゃ』こがようこ:構成 降矢なな 童心社

お話の中では、出発場所に戻ることで主人公は成長しています。子どもは小さなものに自分を同一化して物語を楽しみます。絵本を開いたときに比べて、本を閉じたときに主人公が少し成長していることを感じられるでしょう。

身近な大人が子どもに声を出して読んであげるのが絵本

色、音、ふれあい遊びに喜ぶ0歳児。身近な食べ物や動物に心と体が動き出す1歳児。主人公と自分を重ね合わせて、ハラハラ、ドキドキしたり、発見を楽しめるようになる2歳児。

絵本は子どもがひとりで遊ぶためにあるのではなく、身近な大人が声に出して読んであげるためにあるのです。子どもは言葉を耳から聞き、絵を目で読みます。お子さんと時折アイコンタクトをとりながらページをめくる楽しみを、どうぞ親子で味わってください。

 

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『子どもを育てる0・1・2歳児にぴったりの絵本』(小学館)

児玉ひろ美さんが公立図書館司書とJPIC読書アドバイザーのふたつの立場から0・1・2歳児と読みたい絵本をセレクト。
子どもが楽しめる絵本の選び方と読み方をわかりやすく紹介しています。

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教えてくれたのは

児玉ひろ美|読書アドバイザー

公立図書館司書とJPIC読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演を行う。近年は大学にて児童文化財としての絵本の魅力を学生に伝えている。鎌倉女子大学短期大学部非常勤講師など、幅広く活躍。著書に『0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』『子どもを育てる0歳・1歳・2歳児にぴったりの絵本』(共に小学館)がある

構成/Hugkum編集部

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