「這えば立て、立てば歩めの親心」ということわざのように、親は、子どもの成長を楽しみに待ちかねてしまいますよね。しかし、子どもが成長するにつれて、‟言うことを聞かない”、‟思い通りに育ってくれない”など、育児で悩むことはありませんか。
目次
子育てに失敗したと思ったことのある親はどれくらい?
HugKum編集部では、パパママ100人に「子育て中、失敗したと思ったことがありますか」など、子育てで悩んでいることについてアンケート調査しました。その結果は以下です。
「子育て中、失敗したと思ったことがある」と回答した人は47.1%。約半数の人が子育てに一度は失敗を感じているようです。では、どんな時に、「失敗した」と思ったのでしょうか?
子育てに「失敗した」と思う瞬間はどんなとき?
「失敗した」と思う瞬間は、どんな時でしょうか。具体的に、どういうケースがあったのか、アンケートの結果を紹介します。
子どもがワガママを言ったとき
乳幼児のワガママは、「お腹が空いた」「眠い」などからくる成長に必要な要求のワガママがほとんど。しかし、成長してくると子どもは「ご飯より、お菓子がいい」「夜遅くまでゲームをしたい」など成長に不要な要求をしてくることが多くなります。親は、それをワガママと判断し、甘やかした子育てをしてしまい「失敗した」と感じてしまうのでしょう。
・甘やかしすぎて、ワガママになった(30歳代・徳島県・子ども1人)
・外でわがままばかりのとき(30歳代・三重県・子ども3人)
・言うことを聞かない(40歳代・富山県・子ども2人)
・物を買い与え過ぎて物欲が強くなってしまったこと(30歳代・千葉県・子ども2人)
食事でのマナーが悪いとき
マナーについての意見では、食事のマナーについて挙げている声が多い結果に。食育は親のしつけによるものだと自己嫌悪に陥りやすいようです。子どもが好き嫌いをしたとしても、悪い所ばかりを指摘せず、根気よく丁寧に教えていくが最善策です。
・食育のスタートに失敗した(40歳代・大阪府・子ども1人)
・お菓子を食べ過ぎてご飯を食べない(30歳代・千葉県・子ども2人)
自立心が育っていないと感じたとき
子どもが何事にも受け身の姿勢だと心配になりますよね。そして、その原因は‟甘やかしすぎたのかしら⁉”と自身の子育てを反省してしまうのでしょう。
・甘えん坊気味だから(30歳代・富山県・子ども1人)
・自分で出来る事が少ない(40歳代・岐阜県・子ども2人)
勉強をしないとき
子ども自らが勉強をすれば「勉強をしなさい」と言わずに済むのに、と思うのでしょう。一体どうしたら、自学自習ができるのでしょうか。
・自主的に勉強しないところ(50歳代・東京都・子ども2人)
・テストが悪い(40歳代・岡山県・子ども2人)
勉強を習慣付けるには、自転車の練習のように初めに親がサポートすること。「勉強しなさい」ではなく、「一緒に勉強しようよ」と声かけをしてみるのがおすすめです。
掃除や片付けができないとき
大人でも整理整頓は難しいもの。まして、子どもにそれを求めるのは至難の業。つい、自分が苦手だからと自己嫌悪に陥ってしまうのでしょう。
・整理整頓が苦手だから(40歳代・愛知県・子ども3人)
もっといろいろやらせておけば良かったと感じたとき
習い事開始は、「本人がやりたいと言い出したとき」が本来のプロセス。しかし、子どもがやりたいと言うのを待っていたら、タイミングを逃した!と感じる親が多いことがアンケートの結果から分かりました。
・いろんな事にチャレンジさせたかった(30歳代・神奈川県・子ども2人)
・うちの子は運動が苦手なので、小さい時からもっと体を動かして遊んだり、いろんなスポーツをやらせたりしてみればよかったと思いました(30歳代・新潟県・子ども2人)
子どもを怒ったり、叱ったりするとき
我が子だから、本気で向き合い、本気でぶつかり合ってしまうから起こる叱咤。親は心の中では、子どもがすぐに謝ってくれれば矛を収める準備もしているはずですが、子どもの態度によっては親も引っ込みがつかなくなり、言い過ぎてしまうこともあるでしょう。
・自分の気分で、つい怒ってしまう(40歳代・新潟県・子ども2人)
・子どもを叱り過ぎた時(30歳代・千葉県・子ども2人)
・育てにくい子どもなので、こちらもイラっとして暴言を吐いてしまう(40歳代・大阪府・子ども2人)
子どもを比べてしまったとき
同じ家庭環境で育った兄弟姉妹でも、実は長男と次男、長女と次女などすでに違う環境で育っています。しかし、親は、上の子なんだから下の子の面倒を見るのは当たり前など、長子にプレッシャーをかけてしまったり、「隣の芝は青く見える」ということわざのように、お友だちのほうがよく見えてしまうものですね。
・長女よりも、次女への愛情がどうしても多くなってしまいます。長女は少しひねくれた感じになることが多くなってしまいました(30歳代・東京都・子ども2人)
子育てに失敗したと思ってしまう原因は?
子育て中に「失敗した」と不安を感じてしまう一因として、精神科医・水島広子先生は、マイナス面が目につくと、不安が深まり悪循環になると分析しています。
この不安は、“うちの子、大丈夫かしら…””私の育て方が悪かったのかしら!?“と真剣に悩んだりしてしまい、そうなると、「過干渉ママ」になると警鐘を鳴らしています。
子どものマイナス面ばかりが目に付いてしまうから
精神科医・水島広子先生は、子育て中の不安から“子どものことを、もっとよく見よう!”と思い、過干渉になっていくママが多いと、語ります。過干渉になると、さらに子どものことがいろいろ目について、子育て不安を深める――という悪循環に陥りやすくなるそう。
もしも、”私、過干渉かな!?“と心配なときは、子育ての不安を解消していくことが大切で、それは、まずはママの考え方を変えてみることと、水島先生は話します。では、どうやって解消するのでしょうか。
【1】子どもに、無理な理想や期待を押し付けない
思い描くような子育てができないときは、子どもの年齢や性格をよく見て、無理な理想や期待を子どもに押し付けていないか確認を。
【2】ママの“当たり前”を基準にしない
ママからすると“できて当たり前!”“わかって当然!”と思うことでも、子どもは人生経験がまだ短いので、わからないことやできないことがたくさんあります。そのためママの“当たり前”を基準にして考えないこと。
【3】“足りないところ探し”はNG
幼稚園や小学校などでほかの子と比べたりして“うちの子は○○ができない!”“××が苦手!”と足りないところ探しを始めると、子育て不安は募る一方。ほかの子とは比べずに、わが子の日々の成長や長所に目を向ける習慣をつけましょう。
【4】完璧主義の子育てはやめる
完璧主義のママは、子どもを追い詰めてしまう傾向があります。そのため子どもの前でも素直に「ママも失敗しちゃった。これから直すね」と言える勇気をもちましょう。子育てで大切なのは“完璧な人になりなさい”と教えることではなく、失敗から学べる子を育てることです。
【5】煮詰まったときは、専門家に相談する
子育て不安が一向に減らないときは一度、専門家に相談を。過度に不安を抱く場合は、不安障害などの病気も考えられます。
「子どもを怒ってしまう自分はイヤ」と感じているから
水島先生は、ママのイライラは、困っているサインと教えてくれています。
「『怒り』を感じることは、決して悪いことではないんですよ。『怒り』は、自分が困っていることを知らせてくれる大切な感情の一つですから。『怒っている自分』を感じたら『今、自分は困っている』と心が教えてくれていると考えてください」
お母さんが怒ってしまう理由は、大きく分けて3つに分けられるそう。
1 なんで、そうなの?=子どもが自分の期待に応えていない
2 わざと私を困らせている?=自分が「被害者」になっている
3 こうなるはずではなかったのに=予定が狂ったことでパニックになっている
ご自身を振り返ってどうでしょう?
失敗はない?子育ての本当の目的とは
では、子育てには目的や成功の秘訣などがあるのでしょうか。
東京大学名誉教授で、日本保育学会会長汐見稔幸先生は、「非認知能力」を伸ばすことが成功する子になるカギになるのでは?と語っています。
「非認知能力」とは?
「非認知能力」とは、コミュニケーション力・がんばってやりきる力・気持ちのコントロール力という、情動・感情に関連する能力です。その反対は「認知能力」で記憶力や思考力などの知性いわゆる「IQ」(知能指数)。ちなみに、「非認知能力」は「EQ」(感情指数)といえるそうです。
「非認知能力」が高い人は、大人になって「成功」している結果が
今までは、認知能力が高い人が将来、社会で成功すると考えられていましたが、今、「非認知能力」が高い人のほうが、大人になってから成功している人が多いというデータが出てきているそう。
特に、乳幼児期に「非認知能力」が高まると、それが生涯、影響し続ける可能性が示唆されています。そのため、乳幼児期には、認知能力よりも、そちらの発達を最優先にすべきだということが今、世界の常識になりつつある、と汐見先生は語っています。
子育てにおいて、大切にしたいこと
最後に、アンケートの声から、子育てに大切だとみなさんが感じていることトップ3を紹介します。
コミュニケーションを取ること
コミュニケーションの必要性は多くの方が回答していました。家族だから言わなくても分かるとないがしろにはせず、会話の重要性を感じているようです。
・コミュニケーションを密にする(40歳代・愛知県・子ども3人)
・本音で話をすること(40歳代・三重県・子ども2人)
・ちゃんと向き合う(40歳代・大阪府・子ども3人)
・褒めること、ありがとうをしっかり伝えること(30-39歳・東京都・子ども2人)
・家族の団らんの必要性を感じた(40歳代・山口県・子ども3人)
愛情や思いやり
子どもはママが大好き。ママに「大好き」とハグされたらうれしいに違いありません。また、アンケートの結果から、思いやりやまごころ、やさしさをもって子育てすることを心掛けていることが分かります。
・愛情を注ぎ続けること(50歳代・大阪府・子ども2人)
・思いやり(30歳代・埼玉県・子ども2人)
・やさしさ(30歳代・東京都・子ども2人)
子どもを尊重すること
・子どもは親の所有物や、親の夢を叶える道具でもない。子ども自身の個性を尊重する必要こと(40歳代・神奈川県・子ども3人)
・子どもを信じる(40歳代・山口県・子ども2人)
・子どもと同じ目線になる(30歳代・石川県・子ども2人)
そもそも子育てにおいて失敗や成功はなく、親が他の子と比べたときに勝手にそう感じてしまうのかもしれません。子育てに悩んだときは、自分が自身の親にして欲しかったことを考えてみるのはいかがでしょうか。 きっと、もっと話を聞いて欲しかった、うれしいときや悲しいときに寄り添って欲しかった、など情動や感情に関することを思い出すのでは。もちろん、他のことも思い浮かべるでしょう。それを元に我が子をサポートしていけば、自然と「非認知能力」も育まれるのではないでしょうか。
文・構成/HugKum編集部