動画視聴で保護者が不安なことは?藤川先生を囲んで座談会を開催
青少年のインターネット利用やいじめ防止対策等についても実践的な取り組みに関わっている千葉大学教育学部の藤川大祐教授。小学生のお子さんを持つ保護者3名と、SNSやスマホ、動画視聴にまつわるお悩みをテーマに座談会を開催しました。
幼児の動画視聴「うちはココに悩んでいます」
ちょっと動画を見せるつもりが、気づいたら1時間…。やめさせると大泣き!
ソーンヒルさん(年長 長男、年少 長女)のお悩み
私自身が家事や用事を済ませたいとき、ついYouTubeを見せてしまうことがあります。一度見せると、なかなかやめられなくなり、最終的には私が取り上げる形になってしまい、子どもが泣いてしまうことも…。こうした状況で、どこまで動画視聴を制限すべきか悩んでいます。
タブレットでのYouTube視聴、正しい使い方がわかりません
古澤さん(長女小1、長男年中)のお悩み
うちの子も、タブレットを使わせるとずっと見たがります。知育系のアプリならいいかとも思うんですが、気づくとYouTubeばかりになってしまうんですよね。まだキッズケータイしか持たせていませんが、ゲームは多少やらせています。スマホが日常に深く根付いているわけではないのですが、今後、ゼロか100かではなく、正しい使い方を親子で学びながら身につけていくにはどうすればよいでしょうか。
大切なのは、動画視聴と遊びのバランス
「ゼロか100か」ではなく、「バランス」
藤川先生:大事なのは 「バランス」 です。幼児期は、さまざまなことを吸収しながら成長する大切な時期。ゲームや動画ばかりになってしまうのはよくありませんが、おっしゃる通り「絶対に禁止する」というのも極端すぎます。
好きなゲームを楽しむ時間は確保しつつ「やりすぎたかな?」と感じたら、外に連れ出したり、親子で会話を楽しんだり、体を動かす機会を作るとよいでしょう。特に幼児期の子どもは、 3次元の空間で実際に体を動かして遊ぶことが発達にとって重要です。
スマホやパソコンでは体験できない「実際に手を動かす」「人と関わる」「五感を使って遊ぶ」 といった経験を意識的に取り入れると、ゲームや動画の時間とのバランスが取れます。昼間にしっかり体を動かして遊べば夜の寝つきがよくなり、生活のリズムも整いやすくなるでしょう。
なぜゲームに夢中になる?

編集部:動画だけでなく、ゲームも同じです。夢中になりすぎると時間を忘れてしまうことがありますよね。
藤川先生:それだけ魅力的なんですよね。自分に合ったゲームに出合うと、いくらでも遊べてしまうものです。
古澤さん:ゲーム以外のことを楽しめるようにするには、親はどうすればいいんでしょう?
藤川先生:次のような工夫をするといいでしょう。
・読み聞かせ
・積み木やブロック、おままごと
・工作やお絵描き
・親子で一緒に遊ぶ時間を増やす
こうした活動を通じて、「ゲーム以外にも楽しいことがある」と思えるようになると、自然とゲームへの依存度も下がっていきます。 親子で一緒に遊ぶ時間を意識的に作ると、子どもにとってはゲーム以上に楽しい時間になることもあります。
「ゲームをやめさせる」のではなく、「ゲーム以外の楽しさを見つける」ことが、バランスの取れた生活につながるのではないでしょうか。
正しい動画との付き合い方
「動画を絶対に見せない」と頑張らなくていい
藤川先生:親も完璧を求めすぎると疲れてしまいますよね。だからこそ、適度に動画を活用しても問題ありません。ただし、いつまでもひとりで動画を見せているのはよくないので「30分だけ」のように時間を決めましょう。
ソーンヒルさん:動画を見せてもいいと聞くと、少し気が楽になります。
藤川先生:昔も『おかあさんといっしょ』(NHK)などを見せながら家事をしていましたし、ビデオやDVDが普及してからは、ベネッセの月刊DVDなどを繰り返し見せていました。
古澤さん:動画を見せすぎると発達に影響があるのでは?と気になります。
藤川先生:小児科の先生たちの間でも長年議論されてきたテーマですが、動画を見たからといって発達に悪影響が出るという明確な証拠は少なく、あまり神経質になりすぎる必要はないと思います。「多少多く見たところで問題ない」という専門家の意見もあります。
ただし、長時間の視聴が続くと目が悪くなるリスクがあるので、適度に休憩を挟むことが大切です。
安全なYouTube Kids
藤川先生:気になるのは「どんな動画を見せるか」です。ソーンヒルさんは、お子さんにはYouTube を見せていますか? それとも YouTube Kids ※1を利用していますか?
ソーンヒルさん:うちの子はダンスが好きなので、YouTubeでダンス動画を見せたり、アニメを見たりしています。
藤川先生:YouTubeは基本的に13歳以上向けなので、不適切なコンテンツも含まれます。そこで便利なのが YouTube Kidsです。
ソーンヒルさん:ありがとうございます。YouTube Kidsはどんなコンテンツなんですか?
藤川先生:フィルター機能があり、不適切な動画を避けられるので、幼児にはYouTube Kidsを活用するのがおすすめです。
年齢が上がってくれば自分で判断してよいと思いますが、幼児期のお子さんが自分で全部判断するのは難しいので、親が安全な環境で見せてあげてほしいですね。
※1 YouTube Kids
動画視聴と遊びのバランスをどう取る?
編集部:YouTubeだけになるのが問題なんですよね。
藤川先生:その通り。動画と積み木やおままごとなどの3次元の遊びをバランスよく取り入れるのが大切です。
完璧な子育てを目指しても、実際にはそこまで影響がないことも多いですから、忙しい日は動画視聴が増えても構いません。その週は少し動画を控えて、外遊びや親子のふれあいを増やすなど、バランス調整は週間単位で無理なく取り組んでください。
「テレビよりYouTubeのほうが時間管理しやすかった」先輩ママの声
鬼石さん(小6 長男、小2 次男):幼児期のころはテレビよりもYouTubeのほうが、子どもと時間を約束しやすかったですね。
YouTubeは動画が短いので、イヤイヤ期のころは、「あと〇分」よりも「この動画が終わったら」と伝えるほうが、子どもも納得しやすかったです。テレビは「番組が終わるまで見たい」となりがちでした。
また、親がしっかり使いこなしたいので、YouTubeやiPhoneの新しい機能については、できるだけ勉強して活用するようにしています。
藤川先生:本来、ITは生活を便利にするためのものなのに「ITがあるから育児が大変になる」というのは本末転倒。日頃から 新しい情報をキャッチして活用すれば、子育ても楽になりますし、保護者同士で情報交換できる場があると、より安心して子どもと向き合えるのではないでしょうか。
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取材・文/黒澤真紀