本当に「独身税」なの? 〝子ども・子育て支援金〟の概要や実際の負担額、対象者を解説

最近、SNSなどで「独身税」という言葉が話題になっています。一般的に独身税とはどのような制度のことを意味するのでしょうか? 現在話題になっている「子ども・子育て支援金制度」の概要や、支援金の負担額についても解説します。

独身税とは

独身税とは、一般的に独身の人のみに課される税金を指します。具体的には、どのようなものがあるのでしょうか? 日本で「独身税」と呼ばれる制度についても確認しましょう。

「子ども・子育て支援金制度」を指す俗称

2026年4月から始まる「子ども・子育て支援金制度」は、SNSなどで「独身税」とも呼ばれています。

名称だけ見ると、子どもや子育てをしている人に支援金を送る制度です。独身の人に恩恵がない制度であり、独身の人の負担が大きいという理由から、独身税という俗称が広まっています。

しかし、子ども・子育て支援金制度は税金ではありません。健康保険料の中に含まれるもので、独身だけが対象ではないため、一般的な独身税の定義からは外れているといえるでしょう。

過去に独身税が施行されていた国もある

過去に、独身の人だけに税金をかける制度を施行していた国もあります。例えば、ブルガリアでは過去に、独身者に収入の5〜10%の税金をかけていました。

独身税の施行だけが原因とは限りませんが、結果的には成果が出ないまま廃止されています。

また旧ソビエト連邦(現ロシア)でも子どものいない世帯に対して税金をかけていたことがありますが、国家の崩壊に伴い廃止されました。

独身者や子どものいない世帯に対して税金をかけると、これから結婚・出産を検討している世代に経済的な負担が増えてしまいます。特に、不況や不安定な情勢など結婚・出産をためらうような理由が存在する場合、近年では失敗に終わる事例が多いようです。

「子ども・子育て支援金制度」とは

独身税とも呼ばれる「子ども・子育て支援金制度」は、具体的にどのような制度なのでしょうか? 実際に、独身の人に対して大きな負担がかかるのかも気になるところです。創設の理由や対象者、支援金の金額など、制度の概要を解説します。

創設の理由や支援金の主な用途

「子ども・子育て支援金制度」は、少子化対策を目的として創設されました。子どもがいる家庭を支援することで、出産や育児への意欲を高めようとする目的があります。

支援金は、妊婦への支援給付金や児童手当、出産・育児休業の手取りを上げるための給付金など、子育て世帯への幅広い支援に活用されます。

これまでにも支援は行われていますが、支援を強化し、給付を増やすことが中心です。

支援金を負担する対象者

実際に、支援金を負担するのは公的医療保険に加入している人全員で、子育て世帯も含まれます。

国民健康保険・被用者保険・後期高齢者医療制度など、保険の種類は問いません。つまり、子どもや健康保険料を納めていない人を除いて、原則支援金を負担することになります。

子どもの有無や現在子育てをしているかどうかにかかわらず、負担の対象です。独身者だけでなく子育て世帯や子育てが終了した世帯も、支援金を負担します。

支援金の徴収方法と年間の財源

「子ども・子育て支援金制度」の支援金は、保険料と同時に徴収されます。会社員であれば給料から天引きされ、国民健康保険であれば保険料の支払いのときに徴収される仕組みです。

意識して自分で納めるわけではありませんが、これまでよりも健康保険料の金額が高くなったように感じる可能性はあるでしょう。

子ども・子育て支援金には、年間3兆6,000億円が使われることとなっています。そのうち、医療保険からの徴収分は年間約1兆円と見込まれています。

出典:子ども・子育て支援金制度について|こども家庭庁

「子ども・子育て支援金制度」の基本的な負担額

子ども・子育て支援金制度が始まると、一体どのくらいの金額が徴収されるのでしょうか? 加入している保険や年収によっても異なるため、それぞれの例を紹介します。

加入している保険によって異なる

支援金の負担額は、2026年から段階的に上がっていきます。また、加入している保険によっても異なるため、平均的な負担金額を見ていきましょう。

国民健康保険 加入者1人当たりの月額負担金額(カッコ内は被保険者1人当たり)
2026年 250円(350円)
2027年 300円(450円)
2028年 400円(600円)

被用者保険 加入者1人当たりの月額負担金額(カッコ内は1世帯当たり)
2026年 300円(450円)
2027年 400円(600円)
2028年 500円(800円)

全体的な平均の負担金額は1人当たり数百円程度に収まるものの、2028年まで毎年金額は上がっていきます。

年収によっても変動がある

支援金の負担金額は、年収によっても変動します。こども家庭庁は、年収別の負担金額を試算しているため、例を見てみましょう。

【2028年のケース】
被用者保険(月額)
200万円 約350円
400万円 約650円
600万円 約1,000円
800万円 約1,350円
1,000万円 約1,650円

国民健康保険(月額)
200万円 約250円
400万円 約550円
600万円 約800円
800万円 約1,100円

一般的な負担金額は、数百円から1,000円台が想定されます。大幅な負担増ではないものの、今後見直しが行われる可能性もあり、年間では数千円から1万円程度の負担になるため、わずかな金額というわけではありません。

出典:子ども・子育て支援金制度について|令和7年3月こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室

支援金制度が「独身税」と批判される原因

昨今の高齢化や少子化を考えても、子どもや子育て世帯への支援は必要なものですが、なぜ支援金制度が独身税と批判されているのでしょうか? 批判の原因を探ってみましょう。

子どものいない世帯には恩恵がない

「子ども・子育て支援金制度」は、子育て中またはこれから子育てをする人しか恩恵を受けられない制度です。支援の対象が子どものいる家庭に限定されているため、その他の世帯には恩恵が及ばないという指摘もあります。

しかし、独身者や子どものいない世帯は支援金を払うだけで直接的な還元がないため、実質的には独身者に負担がかかる独身税と同じ仕組みではないかとの批判もあります。

特に、若い世代の独身者や、子どもがいない世帯にとっては、経済的な負担が増えてしまい、出産や育児に踏み切れない恐れもあるでしょう。

少子化対策としての効果が疑問視されている

「子ども・子育て支援金制度」は、すでに子どもがいる人や、近いうちに出産をする人に向けた支援内容です。

まだ結婚をしていない人に対しては支援がないため婚姻率を上げる対策にはなっておらず、本当に少子化対策になるのか効果が疑問視されています。

また、子育て世帯や今後結婚・出産を予定する世代も支援金を支払わなければならないため、たとえ支援金がもらえるとしても、今以上に子どもを増やそうという意識が高まりにくい可能性も考えられるでしょう。

子ども・子育て支援金に関するQ&A

制度が始まると、子育て世帯にはどのような支援や負担があるのでしょうか? 子ども1人当たりの支援金額や、負担感について解説します。

子ども1人当たりにいくら支援される?

子どもには、現時点でも児童手当が支給されています。現時点の給付総額は、子ども1人につき高校卒業までに約206万円と試算されています。

制度によって、児童手当が最大146万円追加で支給される見込みです。つまり、合計で最大352万円の給付となる見込みです。

そのほか、支援内容は子どもに直接給付されるものだけでなく、妊婦や育児休業向けの給付金もあるため、全体的な支援の額は大きくなるでしょう。

支援金制度によって金銭的な負担が増えてしまうのでは?

子ども・子育て支援金は、子育て世帯も支払います。金額の負担が大きくなるのであれば、いくら支援を受ける対象となったとしても、メリットは少ないでしょう。

こども家庭庁によると、賃上げや医療・介護関連の改革によって実質的な負担を増やさない範囲で支援金を設定しているとのことです。子育て中やこれから子どもを出産する世帯にとっては、支援の対象になれば大きな負担はないかもしれません。

しかし、全ての人の給料が今後スムーズに上がっていくとは限りません。物価高も進んでいるため、少額とはいえ負担に感じる可能性はあるでしょう。また、子どもが成長し18歳以上になると後は支援金を支払うだけになるため、子育てをした家庭であっても負担は続きます。

出典:子ども・子育て支援金制度のQ&A|こども家庭庁

独身税との批判はあるが少子化対策は急がれる

独身税とは通常独身の人だけが支払う税金を指しますが、日本では2026年4月から始まる「子ども・子育て支援金制度」の俗称として独身税という言葉が広まっています。

しかし、支援金を負担するのは独身者だけではありません。これまでに子どもを育てた人も、現在子どもを育てている人も、公的な医療保険に加入している人は全員が負担するものです。

少子化対策になるのかどうかは疑問視されていますが、子どもを育てやすい環境をつくるため、さまざまな支援を目的として制度が創設されています。

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構成・文/HugKum編集部

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