今まで母乳やミルクしか口にしなかった赤ちゃんが食べ物を口にするということは、人としての成長をとても感じる瞬間ですね。ですが切り離せないのがアレルギーの心配事。初めての食材を食べさせるときは、本などで教えられる成長に合わせた食材から始めるのはもちろんのこと、食材の柔らかさなどの調理法だけでなく、食べているときや食後の赤ちゃんの表情、様子もよく観察しながら食事を進めていきましょう。
今回は、3大アレルゲンの中でも最も多いといわれる卵アレルギーが心配されるお子さんへの、離乳食の進め方や量、卵黄から始め、全卵、白身への詳しい移行の仕方を、アレルギーに詳しい小児科医の藤川万起子先生に取材しました。
目次
離乳食の「卵」が心配なママの口コミを紹介
Q.生後7ヶ月の赤ちゃんがいます。卵が入ったおかゆを食べたら、口のまわりから顔全体が赤くなりました。
Q.生後8ヶ月の子どもにまだ卵を食べさせていませんが、生卵を触った手を口に入れて発疹が出てしまいました。
Q.上の子が粉ミルクアレルギーだったので、母乳だけで育児していたのに上のこと同じような湿疹が出ました。病院で検査したら卵アレルギーとの診断。食べさせていないのに、どういうことでしょうか?
アレルギーが心配な場合の「卵」の進め方や量は?
卵を使った離乳食はいつから?
まず、赤ちゃんに卵を食べさせるのは、6~7カ月の離乳食中期となってからです。0~1歳児で即時型アレルギー反応を起こして医療機関を受診した患者の原因アレルゲンは下表の通り、①卵②乳③小麦が過半となっています。
量について
アレルギー反応を起こしやすい卵を食べさせるときは、少ない量からスタートし、食べているときや食後の赤ちゃんの反応、アレルギー症状が出た場合はどのような様子かを見守りましょう。
ほかに注意すべき食材は?
もし食物アレルギー反応を起こした場合は、原因アレルゲンはある程度の耐性ができるまでは除去します。
アレルギー原因食品の内訳グラフ
原因食品の内訳(対象は食物摂取後60分以内に症状が出現し、かつ医療機関を受診した患者)「食物アレルギー診療ガイドライン2012」(日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)より
卵の進め方
離乳食を経て1歳半になったら、かたゆで卵の卵黄を耳かき1杯から
卵の場合は、1歳半まで完全に除去し、血液検査の結果、アレルギー反応が弱ければ(ランク3以下であること)、経口減感作療法を開始します。最初はかたくゆでたゆで卵の卵黄を耳かき1杯から少しずつ与え始めます。
週7日のうち1日おきに3日間おこなうとよいでしょう。1週間に耳かき1杯位のペースで増やしていき、反応が現れる場合は増やさずにその1杯手前の量で維持し、あせらずゆっくり量を増やしていきます。
食物アレルギーの有病率(年齢別)「保育所における食物アレルギーに関する全国調査」 (日本保育園保健協議会、平成21年)より
卵黄が大丈夫なら、アレルゲンの強いゆで卵の卵白へ
ゆで卵黄が2分の1個~1個食べられるようになったら、ゆで卵白も耳かき1杯から追加していきます。卵白のほうが卵黄よりアレルゲンが強いので卵黄から始めるのです。
卵白も一定の量が摂取できるようになったら、全卵が少量入っているまざりもの(ハム、かまぼこ、揚げ物の衣など)を少しずつ食べさせていきます。卵黄→まざりもの→卵白の順のほうが減感作しやすいという方が私のクリニックでは多いので、卵白の反応が強くて心配な場合は、まざりものを先に食べさせるようにしています。 乳や小麦にアレルギーがあるかないかでまざりものの与え方や種類が変わってきます。
自己判断せず、専門医と相談して進めよう
ここまで与えられるようになるまで、1~2年かかるのが普通です。3歳を超えるとさらに与えやすくなります。1歳半の時に血液検査の結果、アレルギー反応が強かったお子さんは3歳位から減感作療法を始めるとうまくいくことが多いようです。とはいえ、おうちの方が自己判断せずに、必ずアレルギー専門医と相談しながら進めていきましょう。
卵アレルギーがある場合に参考にしたい、アレルゲンの強い食べ物、弱い食べ物
卵アレルギーがある場合の進め方、正しい順番は?
ポイント
卵を初めて摂取する場合は卵黄からおこなうこと。卵黄→混合した卵→卵白の順に進めるとよいでしょう。加熱により、卵の抗原性が低下するため、まずはしっかりと加熱した卵から。そして、卵アレルギーがある場合は卵に替わる良質なたんぱく質を摂取することも意識しましょう。
卵アレルギーの場合、食べられないもの
鶏卵と鶏卵を含む加工食品
その他の鳥の卵(鶏肉、魚卵は基本的に除去する必要なし)
マヨネーズ
洋菓子類の一部 (クッキー、ケーキ、アイスクリーム等)
練り製品(かまぼこ、はんぺん等)
肉類加工品の一部(ハム、ウインナー等)
卵アレルギーのアレルゲンの強さと食品リスト
最も強い
生卵
強い
〈卵を多く使った料理〉 卵焼き、茶碗蒸し、オムレツ、天津飯、スクランブルエッグ、プリン 〈卵が生の状態で使用されている食品〉 マヨネーズ、アイスクリーム、ミルクセーキ、淡雪かん等
やや強い
〈卵を多く使った菓子類〉 カステラ、ケーキ、丸ボーロ等 〈魚肉加工品、練り製品〉 ハム、ウインナー、ちくわ、かまぼこ、はんぺん等
弱い
〈卵を使った焼菓子類、卵を塗りつけた菓子類〉 ビスケット、菓子パン等 〈つなぎに入っているもの〉 食パン、市販の揚げ物の衣等
卵が使われている可能性があるもの
うどん、マカロニ、スパゲティ、はんぺん
アレルギー表示
エッグ、マヨネーズ、オムライス、親子丼などと表示されている場合あり。(卵殻カルシウムは鶏卵を含まないため食べてOK)
卵アレルギーのときに摂りたいたんぱく質代替食品
鶏卵1個 →魚1/2切れ30~40g →豆腐(絹ごし)1/2丁130g →牛乳コップ1杯180ml など
卵アレルギーがあったら、調理はこう工夫しよう
肉料理のつなぎは?
使用しないか、でんぷん、すりおろした芋で代用しましょう。
揚げ物の衣は?
鶏卵を使用せず、水とでんぷんの衣で揚げてみましょう。
洋菓子の材料は?
ケーキ、クッキーなどは重曹やベーキングパウダーでふくらませて。
料理の彩りは?
カボチャやトウモロコシ、パプリカなどあざやかな野菜で代用しましょう。
卵アレルギーは遺伝する?
母乳に移行する抗原量は、摂取量の10万~100万分の1にすぎないので、一般的には受有中の母親の食品除去は必要ない程度だといわれていますが、卵に至っては母親が食べると子どもに湿疹が増えるという話は、私も何度か聞いています。しかし、だからといって母親が自己判断で摂取食物を制限するのはよくありませんので、必ずアレルギー専門医に相談して判断しましょう。またその時期と期間も自分で判断せず、医師に判断してもらいましょう。
この質問の場合は、上の子に粉ミルクアレルギーがあったため、母乳で育てたところ粉ミルクアレルギーは出なかったのですが、アレルギーを起こしやすい体質は遺伝していたようです。離乳開始前に卵アレルギーが出現した場合、お母さんの母乳中の卵白がアレルゲンになった可能性があるので、お母さんが一定期間卵の除去をしてから母乳を与えて、様子をみるのがよいでしょう。そのかわり、生後5~6ヵ月になったらまず野菜から離乳食を始め、大豆製品や魚などのたんぱく質を少しずつ進めていった方がよいです。
お話を伺ったのは…
藤川 万規子先生
あゆみクリニック(埼玉県春日部市)院長。1985年東邦大学医学部卒業。民間病院勤務を経て2000年に内科、小児科の「あゆみクリニック」を開院。これまでに1万人以上の子どもを診察。園医、校医としても活躍。医師、母親、両方の立場からの親身なアドバイスが反響を呼び、地元ではもちろん、遠方からも来院する患者が後を絶たない。「命の大切さ」を子どもたちに伝える授業や講演活動も積極的におこなっている。
出典:『即、役立つ 治療とケア 治せる!楽になる! 子どもアレルギー診察室』
本の中にはアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、ママが気になるアレルギーへのお悩みがQ&A形式でたくさん掲載されています。ぜひ手にとってみてください。
イラスト/松永えりか 再構成/HugKum編集部 写真/繁信あづさ