乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「がまん」することが苦手な子供の対応についてお話を伺いました。
Q:3歳の娘は、「ちょっと待って」と言っても待つことができず、怒ったりすねたりします。もう少しがまんを覚えてほしい……。
A:がまんを教えようとせずに「気づく心」を育てましょう
洗いものをしているときに「絵本を読んで!」などと言われると、つい「ちょっと待ってね」と答えたくなってしまいますよね。でも3歳ぐらいまでは、できるだけ「ちょっと待って」を避けたほうがよいのです。
「待つ意味」がわかったうえで待つことが大切
「待って」と言われて待つ、という行動に必要なのは、実は「がまん」ではなく、「相手を思いやる心」や「状況を判断する力」です。だから、幼い頃から「ちょっと待って」を繰り返して「がまんの練習」をさせるだけでは本当の意味でのがまんは育ちません。それどころか、日頃から大人の都合で一方的ながまんを強いられていると、本当に大切なときにがまんすることができなくなってしまうものなのです。
「絵本を読んで!」と求めたときに応じてもらえた、という体験の積み重ねによって、子どもは親への信頼感を高めていきます。もし要望に応えられないときには、その理由を言葉できちんと説明しましょう。すると、「いつもはしてくれるのにできないのは、今は何かわけがあるのかな」と、親の気持ちを考えることができるようになります。そして、「生活にはいろいろなことがあり、自分だけでなく、他者にもいろいろな気持ちや状況があって、できるときと、できないときがある」という柔軟な考え方もできるようになります。
大切なのは自分の気持ちを抑え込んでがまんすることではないのです。「少し待ったほうがいい」と自分で判断できるようになることが、意味のあるがまんです。「指示されたから待つ」のとは意味合いがまったく異なります。もちろん、子どもの望みにすぐに応えるのは、簡単なことではありません。でも3歳までの親の頑張りは、まさに「急がば回れ」。根気よく、できることにはなるべく誠実に対応し続けてみてください。その姿勢が他者の立場を思いやる心を育て、同時に自分の気持ちを大切にする心も育てていくのです。
がまんさせるときには必ず理由を伝えて
「子どもの望みに応える」とはいっても、たとえばものをほしがるような場合は、際限なく買い与えるわけにはいきません。でも買えないときは、ただ「ダメ」と拒否するのではなく、「〇〇だから」と、きちんと理由を伝えます。できれば出かける前に、「今日買うのはお肉と野菜だけね」「お菓子はひとつだけね」などと具体的に伝え、子どもが心づもりできるようにしておくとよいでしょう。それでもほしがったときは、「今日は〇〇の約 束だったね」と確認し、買わない!(笑) 泣いたり騒いだりして自分の思い通りにしようとすることに対しては、毅然とした姿勢を示し、絶対にダメなときもある、とメリハリをつけることも大切です。
そうはいってもたまには、あえて少しだけ譲ってみることがあってもよいでしょう。「買ってもらえないだろうなぁ」という子どもの予想に反して、「今日は特別! 50円で買えるものならいいよ」というように対応することがあってもいいんです。人とかかわる場面では、すべてがルール通りに進むとは限りません。同じことでも、いいときもあれば、ダメなときもある……。こうしたあいまいさを知ることも、臨機応変に状況を判断する力を伸ばすためには必要なのです。
記事監修
井桁容子先生
(乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。)
『めばえ』2019年9月号 イラスト/小泉直子 構成/野口久美子
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。