「雷雨喘息」とは? 発症しやすい気象条件、子どもの発症リスクと予防法を解説【医師監修】

突然の雷雨のあと、子どもが咳き込んだり「息が苦しい」と言ったりすることはありませんか? それはもしかすると、「雷雨喘息(らいうぜんそく)」かもしれません。特にアレルギー体質や喘息の既往があるお子さんは注意が必要です。
この記事では、雷雨と喘息の関係性や発症しやすい人、家庭でできる予防や受診のタイミングなどを、保護者の目線でやさしくご紹介します。

雷雨喘息とは?

雷雨喘息(らいうぜんそく)は、雷雨の前後に大気中の粒子が細かくなり、呼吸器に入りやすくなることで、咳や喘鳴(ぜんめい)など喘息に似た症状が出る現象です。日本でも観測例が増えており、育児中のご家庭で知っておきたい気象と健康の関係のひとつとなっています。

雷雨喘息の基本的な仕組み

雷雨が近づくと、大気中の花粉やカビ胞子が雷や急激な湿度変化で壊れ、非常に小さな粒子(直径約3~4 µm程度)となります。その微粒子を吸い込むことで気道が刺激され、ぜんそく様の症状が引き起こされるのです。

なぜ「雷雨」のときに起きやすいのか?

雷雨前後は気温・湿度・気圧が急激に変わり、大気中の異物が舞い上がりやすくなります。さらに、気圧の低下で呼吸が浅くなり、アレルゲンを吸い込みやすくなることも関係しているようです

どんな人がなりやすいの?

花粉症やアレルギー性鼻炎、喘息の既往があるお子さんは特に注意が必要です。また、もともと気道が敏感なアトピー型喘息の子どもはリスクが高まります。

子どもは特に注意が必要

子どもの気管は大人よりも細く、ほんの小さな刺激でも呼吸が乱れがちです。さらに、自分で「苦しい」と言いにくいこともあるため、家族が普段から呼吸状態を見守ることが大切です。

雷雨喘息が起きやすい季節や気象条件

雷雨喘息は一年中起こり得ますが、花粉飛散時期や気圧・気温の変化が大きい時期には特に注意が必要です。

特に注意すべきシーズン

春から初夏、秋にかけては、花粉の飛散や気候変動が激しい季節です。そのタイミングで雷雨が重なると、雷雨喘息が起きやすくなります

花粉の多い季節

スギやイネ科の花粉が飛ぶ時期に雷雨が重なると、微小粒子が大量に発生しやすくなり、喘息症状が出やすいタイミングとなります。

前日までとの気温差にも注意

気温が5℃以上変化すると気道が敏感になりやすく、『喘息予防・管理ガイドライン』でも気温・気圧・雷雨による悪化が指摘されています

雷雨喘息の症状と見分け方

風邪や通常の喘息と症状が似ていることもありますが、「雷雨との関連性」を確認することで早めの判断が可能になります。

代表的な症状

典型的には「ヒューヒュー・ゼーゼー」と聞こえる喘鳴、しつこい咳、息苦しさが主要症状です。熱が伴わず、雷雨の後に発症するのが大きな特徴です。

子どもが見せるサイン

呼吸が速くなる、胸や肩で呼吸する、発作的な咳をする、就寝中に咳で何度も目を覚ますといった変化に気づいたら、注意が必要です。

風邪や他の病気との見分け方

風邪などの他の病気と雷雨喘息の見分け方は、おおむね風邪は咳や鼻水、のどの痛み、発熱が出るのに対し、雷雨喘息は咳・喘鳴がメインで、熱がない場合が多いのが特徴です。

家庭でできる予防と対策

雷雨喘息への備えとして、家庭でできる対策を日常に取り入れることが、症状の出にくい環境づくりにつながります。

気象予報を活用しよう

雷注意報・花粉情報・PM2.5などの大気環境情報に加え、気温・湿度の変化を毎日チェックすることで、リスクを予測できます。スマホアプリや気象庁のサイトなどを活用しましょう。

外出時・帰宅時の工夫

雷雨や気象変化が予想される日は外出を控え、帰宅後はすぐに衣服を替え、手や顔、のどを洗って異物を落とす習慣をつけましょう。

室内での環境管理

除湿・換気・空気清浄機の活用や、エアコンフィルターのこまめな掃除で室内のアレルゲンを減らします。また、適切な湿度を保つことも大切です。

既往歴がある子は医師と連携を

喘息やアレルギーの既往があるお子さんは、主治医に相談し、必要なら予備の吸入薬を処方してもらいましょう。家庭での対応計画を作成しておくと安心です。

雷雨喘息は正しい知識と対策で予防・対応が可能

雷雨喘息は、雷雨によってアレルゲンが微粒子化しやすくなることで起こる現象ですが、正しい知識と対策で予防・対応も可能です。季節の変化や気象情報をチェックしながら、帰宅後の習慣や室内環境を整えておくことで、お子さんの呼吸を守る一歩になります。

気象と症状に変化があった場合は、遠慮なく小児科や呼吸器専門医に相談してください。

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竹綱庸仁 医師

たけつな小児科クリニック 院長。2004年、愛知医科大学医学部卒業。同大学で臨床研修終了後、小児科に入局。2013年、奈良県内の病院で小児科の立ち上げに従事。2017年、たけつな小児科クリニックを奈良県生駒市に開設。「すべては子どもたちのために」をモットーに、一般的な疾患から、てんかんなどの神経疾患、食物アレルギーやぜんそく、日本でも数少ない小児頭痛を専門とするなど幅広い診療を行う。さらに、令和7年7月から日曜の診察を開始し、文字通り「365日、24時間」子どもの健康をサポートする体制を整えている。現在は病児保育室バンビを運営する他、言語発達遅延の子どもに言語訓練を行う児童発達支援施設「のびいく」を運営している。2023年5月に初の著書「行列のできる子ども健康相談室」を発刊。現在も「たけつな先生」として不定期でTikTokライブを通じて子どもたちの医療相談を行っている。

参考:厚生労働省「成人喘息の疫学、診断、治療と保険指導、患者教育」
『喘息予防・管理ガイドライン 2021』日本アレルギー学会・厚生労働省
豪州メルボルンでの大規模発作事例の報告(JST・京大等)
日本小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023(日本小児アレルギー学会)

文・構成/HugKum編集部

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