夏休みも中盤に入り、楽しさMAX。でも親子共々、憂うつなあの宿題…、そう「読書感想文」が心の片隅に重しのようにあるのでは? 今回の連載は夏休みSpecial。前編は読書感想文用の「本の選び方」について。前回の本の選び方に続き、後編はいざ!感想文の「書き方編」。
ノンフィクションライターで、自身も小学生男子の母。そしてJPIC読書アドバイザーでもある須藤みかさんが、小学校の先生や司書、宿題をこなした(こなさせた)親子に取材してきました!
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読書感想文、いよいよ書いてみよう! 有効な手順とは?
本選びが終わったら、いよいよ書く! スラスラと書ければいいのだが、読書感想文と聞いただけで、気持ちが重くなるのはどうしてだろう。本を読むのが嫌いな子なら仕方ないかとも思うが、本を読むのも作文も大好きなのに読書感想文だけは苦手という子も意外といる。
どうやら「あらすじと自分の感想をどういうふうに組み合わせて書いていいか分からない」ようだ。
そこで、実際に書く際の、具体な方法を聞いてみた。
その1 伝える相手を決める
現役の公立小学校教師に尋ねてみた。読書活動にも熱心に取り組む中堅どころのI先生だ。
「誰に向けて書いているのかが分からないからでしょう。そこに戸惑ったり、苦痛を感じたりしてしまうのかもしれません。先生でもいいし、同じクラスの子でもいいし、家族でもいい。伝える相手を決めるといいですよ」
その2 手紙風に書く
公立小学校の図書館に非常勤司書として働くNさんに聞いてみた。彼女も自分の子どもたちが読書感想文を書く時には、
「誰かに宛てて書こう(つまり伝える相手を決める)。手紙みたいに書いてもいいんだよ」
と伝えたという。文章を書くことが億劫でない子なら、この方法でいけそうだ。
*どんなあらすじで
*どんなところがおもしろいのか
これを相手に伝えるつもりで書けばいい。
その本を宣伝する人になりきって、おすすめの理由を書いてみるというのもいいだろう。
その3 付箋を貼る
何から手をつけてよいかわからない場合はどうしたら?
前編にも登場した“ほんとも”さんは、
「好きなシーンや心を動かされたシーンに、付箋を貼っていくのもひとつの方法です。自分のベスト3を決めて、どう感じたかを書いていってもいいでしょう」と言う。
ほんともさんは、学校図書館司書の経験があり、「ほんとも!〜学校図書館おたすけサイト〜」を運営する。また、地元の地方自治体で子ども読書活動推進計画委員も務めている。
ただし、
付箋の数は決めたほうがいい。
「おもしろいところに貼っていこう!」などと曖昧な声かけをすると、子どもはどんどん貼っていくので付箋だらけになってしまう。どこにポイントをおけばよいか分からなくなり、あとで苦労する。(これ、筆者が我が子にやってしまった失敗だ)
付箋は5枚だけとか、あらかじめ決めておくとよい。
その4 ワークシートで整理整頓
「最初から原稿用紙に向かうのではなく、ワークシートを書いてみるのもいいですよ。つまり
*主人公は誰で、
*その主人公に何が起きたかなどの時系列でまとめていく
こうすると、あらすじはまとめやすくなります。そして、
*好きな登場人物
*好きなシーン
これをリストアップしながら、感じたことを整理整頓していくのです。ワークシートに書いていくことで、頭の中が整理されていきますよ。」(ほんともさん)
ワークシートと言っても、気負わずに。どんな紙でもいいから、自由に書いていけばいい。
その5 質問しながら切り貼りゲーム
低学年なら、質問をしてあげると、書き進めやすいだろう。連載1回目のサッカー大好きヤマト君が初めて、読書感想文にチャレンジしたのは2年生の時。「起承転結と言ってもまだそのころはわからないので、感じたこと、書きたいことを全部書いちゃいなさいと言いました。
*いちばん心に残った場面はどこだろう?
とか、
*同じようなことを経験したことはなかったかな?
と質問をしていきましたね。」と、母のカズヨさん。やり方は、先のワークシート方式と同じだが、カズヨさんが使ったのは原稿用紙。2行とか3行とかでいいので、思いついたことをどんどん書かせたという。
「そのあと、文章ごとにチョキチョキはさみで切っちゃうんです。そうすると短冊みたいなものが何枚もできます。これはあれと、似ているからけずろう、とか、こっちのとあっちのとを組み合わせてみたらどうだろうとか、一緒にならべかえていくんです。ゲームのような感じですね。並べ替えが終わったら清書です」
切ったり貼ったりは工作のようで楽しそうだ。低学年でも飽きずに取り組めるかも。お母さんやお父さんがかなり頑張らないといけないけれど、2、3回続けると、子どももどう書けばよいかが分かってくるそう。ヤマト君は4年生からはカズヨさんのサポートなしで取り組めるようになっていったという。
その6 お手本を見せる
カズヨさんがもうひとつ、したことがある。お手本を見せることだ。「何もないところで、書いてみなさい、と言っても難しいので、読書感想文コンクールのサイトを見せました。
http://www.dokusyokansoubun.jp/list.html
昨年の入賞作品が載っているので、子どもが読んだことのある本を探して、お手本として見せたんです。基本形を見ることで、感想文ってこういうものかと思ったようです」
その7 自分の話を書けばいい
しかし、お手本を見せてやる気になる子ばかりではないだろう。作文自体が好きでない子だと、「こんなの書けない」と逆にプレッシャーに感じてしまうかもしれない。そんな時はどうする?
冒頭のI先生は、「必死にあらすじを追ってしまう子がいますが、要約的なことは誰でも書けます。
自分の話を書いたらいい
と私は勧めています。本を読んで、自分と関連づければいいのです。思い出してごらん、と声をかけています」と話す。
その8 良い子にさせる必要はない
本の感想に正解はない。感想も人の数だけある。読書感想文という字面のせいか、きちんと書かねばならないという思い込みがないだろうか。「良い子になって書くこと」を知らず知らずのうちに、大人が求めているのかもしれない。感想文だからと構えずに、本をきっかけに子どもたちが自由に作文を書けばいいのだ。
その9 自分と比較しやすい本を!
だからこそ、本選びが大切で、
自分と比較したり関連づけやすい本であったほうがいい。
ほんともさんが、「読書感想文が書けるかどうかは、本選びで8割が決まる」という所以だ。
その10めんどくさい!と親が思わない
「読書感想文は、文章を書く練習の機会をもらったと私は思っています。感想文への批判はあっても『めんどくさいことをさせて…』などと思わないほうがいいだろうな、と。そういう気持ちって、子どもたちに伝わりますから」と、前出の母・カズヨさん。
耳が痛い! 子どもは親の気持ちや態度に敏感だ。
「あらすじしか書いてないじゃない!」
「おもしろかったです、ばっかりじゃない!」
こんなことを言われ続けたら、子どもだってイヤになる。先のI先生も言っていた。「読書感想文で親子の関係性が悪くなることがある」と。
本を嫌いになってほしくないし、書くことも嫌いになってほしくない。
「最近、本屋さんで何度か本選びの際に、怒っているお母さんを見かけました。聞いていると、「なんでそんな本にするの!?」と「早く選びなさい!」が多いのですが、これだと子どもは本嫌いになってしまうなぁ…と聞いていて悲しくなりました。
子どもたちの読みたい!という意欲を尊重しながら本を選ぶのを見守り、助けが必要な時にそっと手を差し伸べてアドバイスをしたいですね」(ほんともさん)
取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。