赤ちゃんの言葉というと「クーイング」や「喃語(なんご)」が浮かぶでしょう。では、クーイングと喃語の違いをご存じでしょうか。この二つは、発声方法も発声する時期も違います。クーイングについて学び、赤ちゃんとのコミュニケーションを楽しみましょう。
目次
赤ちゃんの「クーイング」とは?意味はある?
「クーイング」は、限られた時期にだけ赤ちゃんが発声するものです。赤ちゃんは、一体何のためにクーイングしているのでしょうか。
舌や唇を使わず発する言葉
クーイングは、舌や唇を使わなくても出せる母音1音だけを使った赤ちゃんの声のことです。初めは意識して出しているのではなく、息と一緒に音が出たという感じでしょう。
生まれて間もない赤ちゃんは、舌や唇をうまく使えません。そのため、赤ちゃんが発声できるのは「母音のみ」になります。
クーイングの語源は、英語の「coo(クー)」です。cooには「ハトの鳴き声」や「やさしくささやく」といった意味があります。
会話ではなく、音を出すことを楽しんでいる
クーイングは、会話として何かを伝えようとしているのではなく、「自分の口から音が出ることを発見した赤ちゃんが遊んでいる」と思ってよいでしょう。
クーイングは別名「プレジャーサイン」とも呼ばれます。英語のpleasure(プレジャー)の意味は「楽しみ」や「喜び」です。赤ちゃんがクーイングを始めたら、「ご機嫌なんだな」とほほ笑ましい姿を楽しみましょう。
クーイングはいつ始まって、いつまで続く?
発達段階の一つであるため、クーイングを聞けるのは限られたわずかな期間だけです。気になるクーイングの時期について詳しく見ていきましょう。
生後1カ月ごろから、喃語(なんご)が始まるまで
赤ちゃんの成長スピードはそれぞれ異なるので、クーイングはいつ始まってもおかしくありません。目安として「生後2~3カ月」とされていますが、生後1カ月でクーイングを始める赤ちゃんもいます。
生まれたばかりの赤ちゃんは舌や唇をうまく動かせないだけではなく、発声するための器官が十分に発達していません。そのため、生まれたばかりの赤ちゃんが声を出すのは泣くときだけです。
しかし、ふとしたときに自分の喉から音が出ることを知ります。初めはかすかな音かもしれませんが、意思を持って出し始めるとはっきりした音になってくるでしょう。
喃語(なんご)が出始めたら、「そろそろクーイングしなくなる」というサインです。
似ているようで違う「喃語」どこが違う?
「クーイング」と「喃語」は非常に似ている赤ちゃん特有の言葉です。混同してしまうことも多いですが、この二つにはちゃんと違いがあります。では、一体何が違うのでしょうか。
母音のみはクーイング、多音節は喃語
クーイングが「あー」「うー」など母音1音だけなのに対し、喃語は「多音節」で発声された音のことをいいます。
クーイングに慣れてくると一つの音だけではなく、「うあー」といった多音節の声を出すようになるでしょう。この母音を連続して発したものが喃語です。
舌が使えるようになると「だーだー」という母音以外の音や、「あだー」のように母音と子音が混ざった音を出すようになります。
唇が使えるようになると濁音や半濁音が増えて、「あぶぶ」「まんまん」といった複雑な声を出すようになるでしょう。
喃語の時期は5カ月から10カ月ごろまで
早ければ3カ月ごろから喃語が始まる子もいますが、一般的な目安は「生後5カ月ごろ」です。クーイングから喃語に移る時期も個人差があるので、焦る必要はありません。
母音だけの喃語から始まって、濁音・半濁音が混じり、やがて「ママ」や「まんま」といった言葉を話し始めることが多いといわれています。
発語の目安は「生後10カ月ごろ」です。明確な意味を持つ言葉を話し始めたら、クーイングと同じように喃語もだんだんと消えていくでしょう。
クーイングをしたときの上手な対応方法
クーイングが出たら、赤ちゃんがリラックスして遊び始めたということです。コミュニケーションを図る絶好のチャンスなので、積極的に話しかけましょう。
同じ言葉を使って会話する
赤ちゃんがクーイングをしたら「オウム返し」してみましょう。赤ちゃんが「あー」と言ったら、こちらも「あー」と返してあげるのです。
きょとんとしたり、こちらが返事をしていることに気づかなかったりする赤ちゃんもいるかもしれません。しかし、同じことを繰り返すうちに「自分が声を出すと、この人も声を出す」と気づいてくれるでしょう。
ただのオウム返しであっても、コミュニケーションの練習につながります。周囲の反応が楽しくて、活発にクーイングするようになるでしょう。
この頃は、まだ目がはっきり見えていない時期でもあるので、顔を近づけて笑顔で返してあげるとよいでしょう。
いっぱい褒めてあげる
赤ちゃんのクーイングを褒めてあげるのもよい対応です。同じ音を繰り返すばかりでも、何度でも「おしゃべりが上手だね」「かわいい声だね」と褒めてあげましょう。
もちろん、この時期の赤ちゃんは何を言われているかは理解していません。しかし、雰囲気で何か気持ちのよいことだとは感じているものです。
赤ちゃんを応援する気持ちでたくさん褒めてあげれば、発語の練習にますます精を出してくれるかもしれません。
赤ちゃんの気持ちを言葉にしてあげる
赤ちゃんの「気持ちを想像して言葉にする」のも、楽しいコミュニケーションになります。
クーイングしているときの赤ちゃんはご機嫌で遊んでいるので、例えば「そうなの、楽しいんだね」や「声が出るね、面白いね」と代弁してあげましょう。
「うんうん、ママとお話がしたいのね」や「そうか、そろそろお腹が空く時間だね」と会話してもよいでしょう。話しかけることが多いほど、赤ちゃんに多くの感情や言葉がインプットされていきます。
喃語を出す時期は、声を出して笑い出すころです。偶然こちらの声かけと赤ちゃんの反応が会話のようになることもあるので、とても楽しい時間が過ごせるでしょう。
話しかけるときは少し高めのトーンで
クーイングに応じるときは「いつもより少し高めのトーン」で話しかけましょう。また、ゆっくりと抑揚をつけることもポイントです。
ゆっくりとした高いトーンの声は、赤ちゃんにとって聞き取りやすく、安心させる効果があるといわれています。これは「マザリーズ」(母親語)と呼ばれる世界共通の語りかけの方法です。
女性は、本能でマザリーズを使っているといわれています。
クーイングを始めた時期の注意点
クーイングを始めるころは、赤ちゃんがどんどん成長している時期でもあります。そのため、周囲の大人は自分の言動に気をつけることが大切です。
乱暴な言葉や汚い言葉を使わない
赤ちゃんに話しかけるときだけではなく、常に「やさしい言葉遣い」を心掛けましょう。意味は分からなくても、聞いた音は赤ちゃんの脳に記憶されていきます。
例えば、幼児期の子どもに「まったくもう」「困ったな」といった口癖をそっくりそのまままねされて驚くことがあります。しかも、それを言う状況もちゃんと合っているのです。
子どもは周囲の大人が話している様子を見て言葉の意味や使い方を学んでいくため、話せるようになると同じような言葉遣いをします。
言葉のインプットはクーイングの時期から始まっていると考え、赤ちゃんのそばでは悪い言葉を使わないよう気をつけましょう。
無理に言わせようとしない
クーイングする様子はとてもかわいいので、ほかの人にもその様子を見せてあげたくなります。
しかし、「クーイングの無理強い」は止めましょう。大人でも気分が乗らないときがあるように、赤ちゃんにもクーイングしたくない日があるのです。
慣れない人がそばにいるとき、緊張してしまうデリケートな赤ちゃんもいます。そのようなときにクーイングを求められると、赤ちゃんは混乱してしまいます。
赤ちゃんの気分に任せ、したいタイミングでクーイングさせてあげましょう。
クーイングをしない・減ったは問題なの?
周囲の赤ちゃんがクーイングを始めると、「なぜうちの子はしないのだろう?」と不安になる人も少なくありません。クーイングをしない場合、どのような問題が考えられるのか確認しておきましょう。
個人差があるので心配なし
結論からいうと、クーイングは発達段階で必ず見られるものではありません。するかしないかは赤ちゃんによります。クーイングをしないまま、いきなり喃語を発する子もいるのです。
また、一度クーイングしたのにしなくなったり、クーイングする回数が少なくなったりしても、ほかに変わった様子がなければ問題ありません。
成長した後におしゃべりな子とそうでない子がいるように、クーイング好きな赤ちゃんもいれば無口な赤ちゃんもいます。
普段と変わらずご機嫌な時間があり、体調に変化がないようであれば大丈夫です。ゆったりとした気持ちで赤ちゃんの発達を見守ってあげましょう。
気になるなら小児科や乳児検診で相談して
クーイングと同じ時期には、赤ちゃんは動く物を目で追う「追視(ついし)」や、声がする方に顔を向けるなどの「応答性」が確認できるようになります。
こうした周りからの働きかけに反応する様子が見られるのであれば、何の問題もないことがほとんどです。
しかし、気になるようであれば小児科や乳児検診で相談するとよいでしょう。専門機関では赤ちゃんの発達を総合的に見て判断してくれます。
短いクーイングの期間を楽しもう
クーイングは喃語が始まるまでのほんのわずかな時期にだけ見られる、赤ちゃん特有の発声です。ご機嫌で遊んでいる時間なので、赤ちゃんがクーイングをしたら積極的にコミュニケーションを楽しみましょう。
一生に一度だけ、期間限定の姿なので、動画に撮っておくとよい記念になるかもしれません。
ほかの発達と同じように、クーイングの有無や時期には個人差があります。クーイングをしなくても、リラックスしている時間には絵本を読んであげたり話しかけてあげたりするとよいでしょう。
記事監修
南 真実子 院長
構成/Hugkum編集部