上の子の授乳中でも早く妊娠したい人、まだ妊娠したくない人、どちらにとっても気になるのが授乳中は妊娠するのかどうか。また、実際に妊娠した場合、授乳を続けていいのか、卒乳・断乳した方がいいのかも悩みどころですよね。実際には何が正解なのかを徹底調査。また、授乳中に妊娠した経験のある、1~2歳の子を持つママにアンケートを実施。体験談も合わせてご紹介します。
授乳中に妊娠することはある?
授乳中は妊娠しにくいと考えている人も多いですよね。でも、本当に授乳中は妊娠しないのかどうか、まとめてみました。
排卵していれば授乳中も妊娠する
産後4~6週間たつと、女性の体自体は次の妊娠が可能な状態になります。授乳中に妊娠しにくいというのは、ホルモンバランスの関係で排卵しない場合だけで、人によっては授乳中でも排卵して生理がきますし、産後2~3カ月であっても妊娠する可能性があります。
授乳中は妊娠しにくいって本当?
授乳中に妊娠しにくいのは、出産後にたくさん分泌されるプロラクチンというホルモンが原因です。母乳の出をよくする働きに加え、排卵を抑える働きもあるのです。つまり、授乳をしている間はプロラクチンが分泌されますので、授乳中は排卵が起きにくくなります。排卵されていなければ妊娠しないので、産後は妊娠しにくいと言われるのです。
また、もう妊娠できるかなと多くの人が考える生理の再開時期も人によって差があり、授乳しているママでは産後3~4ヶ月で生理が来ることが多いよう。授乳の方法によって違いがあり、完全母乳の場合は、乳汁分泌を促すプロラクチンが排卵機能を抑制することで、生理の再開が遅めになる傾向が。 逆に完全ミルクの場合はそれより早く、産後2ヶ月ほどで生理が再開することが多いとされています。
産後の生理が再開する前に妊娠しているケースもある
産後は排卵周期がしばらく不安定になるので、排卵しているかどうかが把握しづらいもの。母乳が作られる間はプロラクチンというホルモンが分泌されることにより、排卵は抑えられます。赤ちゃんの母乳を飲む量が徐々に減ってくるとプロラクチンも徐々に減り、代わりに排卵を起こすホルモンが出てくるようになってきます。産後初めての生理が来る前に排卵していて、産後の生理をみないまま妊娠する場合もあります。
授乳中の妊娠を望まないなら避妊をすること
今までにまとめてきた通り、授乳中であっても排卵することはあるので、性交渉すれば妊娠する可能性はあるわけです。授乳中に妊娠したくないのであれば、しっかり避妊をすることが大切ですね。確実な避妊法は、ピルの服用か、子宮内避妊リングの挿入です。ピルは授乳中でも産後6か月からは服用できます。
授乳中の妊娠に兆候はある?
授乳中に妊娠した場合に、授乳中特有の兆候はあるのか気になるところですよね。実際はどうなのかまとめてみました。
妊娠の兆候は人それぞれ
授乳中であっても、初めての妊娠の時と同様に吐き気や頭痛といった妊娠初期症状が出る場合があります。そして、症状も軽かったり重かったり、と個人差があります。
母乳の出方や授乳中などに兆候がある人も
妊娠するとホルモンバランスが変化するので、母乳が出にくくなることがあります。また、そのほかにも、授乳中に乳首や下腹部に痛みを感じたり、つわりが早めに出たりすることもあります。
妊娠検査薬は反応する?
授乳中には妊娠検査薬が使用できるか疑問に思う人もいるかもしれませんが、妊娠検査薬では、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠した場合に放出されるホルモンを判定に使います。このホルモンは授乳とは関係のないホルモンなので、授乳中であっても妊娠検査薬は反応します。
妊娠により母乳が止まることはない?
妊娠するとホルモンバランスが変化するので、母乳が出にくくなることがあり、完全に出なくなることもあります。また、つわりであまり食べられなくなる妊婦さんは、おっぱいの分泌量が減ることも。
卒入や断乳はした?【先輩ママの体験談】
授乳中に下の子を妊娠した場合に、授乳を続けていいのか、卒乳・断乳しなければいけないのかは、多くのママが気になるところですよね。まずは、経験者のママたちに聞いてみました。
断乳したママの体験談
妊娠が分かった際に、産婦人科の先生に辞めるように言われたという人も多いよう。自然に卒乳を待つのではなく、断乳をしたというママもいました。
卒乳したママの体験談
産婦人科でアドバイスされて、卒乳に向けて準備を始め、早めの段階で卒乳したという人も。
授乳を継続したママの体験談
断乳・卒乳した人が多い中、出産まで授乳を継続したというママもいるようです。
授乳中に妊娠が判明したら授乳を続けてもいい?
ママたちが一番気になる、妊娠中に授乳中を続けても良いのかどうか。一概には言えず、さまざまなパターンがあるようです。自己判断せず、医師に相談しましょう。
妊娠中に授乳を続けても問題はないことも
産後の女性の体は、授乳や乳頭刺激によりオキシトシンというホルモンが分泌され、子宮が収縮するのは明らかなよう。授乳による子宮の収縮というのは、産後の緩んだ子宮を速やかに回復させ、出血を止めるために備わっている機能です。
ただ、授乳中でも正常な妊娠であれば、しばらくの間は子宮収縮させるオキシトシンが、子宮に働かきかけない仕組みが備わっているため、授乳した程度では流産しないことはないとみられています。
それでも、この機能が妊娠している子宮及び胎児に対して、どのような影響を与えているかは未だに確実には言えないので、妊娠の状態をしっかり診てもらいながら判断する必要があります。
授乳を控えなければいけないケース
上の子の時に、流産・早産の既往があった場合や、何らかの原因で切迫流産や早産の兆候がある場合には、授乳を控えるのがベター。医師や助産師さんに相談しながら、断乳・卒乳の準備をしましょう。
卒乳や断乳は上の子の年齢やママの体調で検討を
妊娠初期でつわりの症状が強い場合や、体調が優れず睡眠不足になっている時など、授乳が大きな負担になることもありますよね。また、お腹の張りや痛みなどの子宮の収縮痛を感じるようなら、断乳・卒乳の検討を。
上の子の年齢も考慮して、混合授乳でミルクでも栄養が摂れているか、離乳食がどの程度進んでいるかによっても授乳の必要性は変わってきます。また授乳によって赤ちゃんが安心感を得ている場合には、無理に断乳すると精神状態が心配になることも。お腹の子だけでなく、上の子の栄養状態・精神状態もしっかり考えてあげることが大切です。
妊娠中の授乳で痛みがあるときの対処法
妊娠によって、おっぱいを吸われると乳頭痛が起きたりすることもあります。また、出にくくなったおっぱいを強く吸われることで痛みが出る場合も。乳頭をケアするクリームを塗ったり、1回の授乳を短時間にし、細かい間隔であげるなど、工夫をしましょう。
授乳中の妊娠は人それぞれの対応が必要
妊娠や授乳に大きく関わっているホルモンは、母体の神秘ですよね。授乳をしてもしなくても流産、早産の差はないといういう文献もありますが、まだまだわかっていないことも多く、一概にみんな同じにはならないのが難しいところです。新しい命を授かると、ついついママはそちらに気持ちが移りやすくなり、上のお子さんに我慢を強いてしまいがちです。ママが大好きなのは、みんな同じです。卒乳するにしても、上のお子さんの月齢や振る舞いをみながら、ゆっくりしていくといいですね。あなたのことが大好きよ!というメッセージを送りながら、ママも赤ちゃんも、これから生まれてくる新しい命も、皆がハッピーになるように、医師や助産師に相談してみてください。
記事監修
金子 法子
1989年川崎医科大学卒業後、同年山口大学産婦人科学教室入局。同大学病院、関連病院勤務を経て、1998年より実家である針間産婦人科副院長。2001年より現職。2016年第五回西予市おイネ賞全国奨励賞受賞。2017年山口県医師会功労賞受賞。日本産婦人科学会専門医。日本性感染症学会認定医。日本産婦人科学会女性のヘルスケアアドバイザー。敷居の低い産婦人科をモットーに、地域のかかりつけ医として、悩める全女性の良き相談相手となるべく、性教育や女性の健康教育の講演活動も精力的に行っている。二男一女の母でもある。
針間産婦人科
文・構成/HugKum編集部