「版籍奉還」は、どのような政策だった? 関連人物や目的、影響を知ろう【親子で歴史を学ぶ】

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「版籍奉還」は、明治政府が日本の近代化を目指して進めた改革の一つです。版籍奉還の流れを押さえることで、その後の廃藩置県や大名の運命についても、一層理解が深まるでしょう。版籍奉還の目的や時代背景、世の中に与えた影響について紹介します。

版籍奉還とは?

版籍奉還(はんせきほうかん)」は、1869(明治2)年に明治政府が実施した政策です。政策の具体的な内容と、主導した人物を見ていきましょう。

大名の土地と人民を返還する政策

版籍奉還は、大名が持っている土地と人民の支配権を、天皇に返上させる政策です。

版籍奉還の「版」は「版図(はんと)」、「籍」は「戸籍」のことです。版図は領土や勢力範囲を意味する言葉で、大名が治める土地を表します。

「大政(たいせい)奉還」によって、政権が徳川家から朝廷に返された後も、藩の体制はそのままで、土地や人民の支配権は大名にありました。このままでは、政治の実権を握れないと考えた明治政府は、版籍を本来の持ち主である天皇に返上するよう、各大名に働きかけたのです。

元離宮 二条城・二の丸御殿(京都市中京区)。1603(慶長8)年、初代将軍・徳川家康が、天皇が住まわれる京都御所の守護と、将軍上洛の折の宿泊施設として築城した。そして時は巡り、1867(慶応3)年、15代将軍・慶喜が、この二の丸御殿(国宝)の大広間で「大政奉還」を表明したことはよく知られている。1994(平成6)年、世界遺産登録。

関わりの深い人物

版籍奉還には、明治政府の主要な人物が複数関わっています。

長州藩出身の木戸孝允(きどたかよし)伊藤博文(いとうひろぶみ)は、早くから藩を廃止するべきと主張していました。薩摩藩出身の西郷隆盛(さいごうたかもり)大久保利通(おおくぼとしみち)も同じ考えでしたが、いきなり藩の支配権を大名から奪ってしまえば、大きな反発が予想されます。

そこで、彼らは「廃藩置県(はいはんちけん)」の前段階として「版籍奉還」を企画します。

長州と薩摩の出身者が、それぞれの藩主を説得した後に、大久保利通・広沢真臣(ひろさわさねおみ)・板垣退助(いたがきたいすけ)の3人が話し合い、肥前藩と土佐藩の合意も取り付けました。

四つの大藩が、率先して土地と人民を天皇に返上するのを見て、他の藩も続くようになり、版籍奉還は順調に進んだのです。

板垣退助の銅像(高知市)。写真後方に見える高知城の登城口にある。「自由民権運動」の主導者として知られる板垣退助は、1869年1月14日、京都円山端寮で、薩摩藩の吉井友実(よしいともざね)が持参した草稿を基に、版籍奉還について大久保利通らと会合を行い、合意に達した。
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版籍奉還が行われた時代背景

藩の支配者だった大名は、なぜ、明治政府の政策に従って、土地や人民を返上したのでしょうか。当時の時代背景から探ってみましょう。

戊辰戦争で徳川幕府が崩壊

「戊辰(ぼしん)戦争」は、1868~69年に起こった、新政府軍と旧幕府軍との内戦です。この戦争によって徳川幕府は完全に崩壊し、明治政府による新しい時代が始まりました。

江戸時代には、将軍が大名に領地を与える形で支配権を認めていました。しかし幕府が崩壊したため、支配権を認めてくれる将軍もいなくなってしまいます。

さらに戊辰戦争は、平和に慣れきった藩主たちの指導力不足を露呈するきっかけにもなりました。大名の権威は落ち、ほとんどの藩は、農民一揆や財政難に悩まされます。

領地の所有権があいまいなうえに、自分たちの権威も守れない大名にとって、版籍奉還は窮地を救ってくれる政策として受け入れられたのです。

各藩を幕府が統治する地方分権の見直し

江戸時代の日本は、各藩を幕府が統治する「地方分権国家」でした。藩といっても、小さな国のようなもので、税の徴収も内政もすべて藩の支配者である大名が、独自に行っていたのです。

このため、徴収できる税のほとんどが大名の元に集まり、新時代になったといっても、明治政府の税収は非常に少ない状態でした。軍隊の整備や交通網の拡充、教育制度の改革も、藩がある限りうまく進められません。

政府の税収を増やし、内政を充実させるためにも、版籍奉還は避けて通れない政策でした。政府関係者を多く出していた大藩が版籍奉還に応じたのも、日本の現状がよく分かっていたからといえるでしょう。

版籍奉還の目的や影響

「版籍奉還」の直後に、「廃藩置県」が実施され、日本は一つにまとまりました。版籍奉還の本来の目的や、社会的な影響についてまとめます。

中央集権を目指すため

徳川幕府が築いた太平の世は、相次ぐ外国船の来航によって終わりを迎えます。明治政府の当面の課題は、日本をヨーロッパ諸国の植民地政策から守ることでした。

そのためには、藩を廃止し、明治政府の指令の下で、国として経済力や軍事力を高めていく必要がありました。しかし、300年近く続いた幕藩体制を、幕府がなくなったからと簡単に変えられるものでもありません。

強引に藩を廃止すれば、大名の反発を買って、再び内乱が起こるかもしれません。明治政府は、大名が反乱を起こさないように、慎重に策を練りました。薩摩や長州などの有力な藩が見本になるように仕向けた版籍奉還も、こうした戦略の一つです。

2年後に「廃藩置県」を実施

版籍奉還の後、大名は「知藩事(ちはんじ)」に任命され、そのまま元の領地を統治することが許されました。

このため、大きな反発もなかった代わりに、以前と同じような地方分権状態が続き、明治政府の目指す中央集権体制にはほど遠い状況でした。

版籍奉還から2年後、明治政府はついに廃藩置県を断行します(1871)。藩は「府」または「県」になり、知藩事は解任されて、明治政府から派遣された知事が治めることになりました。

廃藩置県を実行すれば、大名の反発を招くことは必至だったため、明治政府は大名に公家と同格の「華族(かぞく)」の称号を与え、東京に住居を用意して生活を保障しました。

薩摩のような大藩を除いて、多くの藩は財政難にあえいでいたため、廃藩置県によって救われた大名も多かったといわれています。

彦根城天守(国宝、滋賀県彦根市)。廃藩置県により、各藩の城は無用の長物となり、その多くが廃城となった。井伊家の彦根城は、廃城令での解体を免れた唯一の保存例である。1878(明治11)年の明治天皇彦根行幸の際に、参議・大隈重信(おおくましげのぶ)が天皇に働きかけて保存されている。

「版籍奉還」と「廃藩置県」の違い

版籍奉還は、あくまでも「土地と人民」を天皇に返上させるための政策であり、藩がなくなったわけではありません。一方の廃藩置県では、藩は完全に廃止され、大名と呼ばれる身分も世の中からなくなりました

明治政府は、最初から廃藩置県を目指していましたが、大名の反発や国民の混乱を抑えるために、まずは版籍奉還を実行したのです。版籍奉還は、廃藩置県を成功させるための布石だったといえるでしょう。

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版籍奉還と廃藩置県は、日本を一つにまとめる大事業でした。当時の日本人にとって、「藩」は独立国であり、隣の藩は外国のようなものだったのです。

それが、いきなり日本という国の一地方になるといわれても、なかなか理解できなかったでしょう。多くの困難を乗り越え、中央集権体制を確立させた、明治政府の苦労がしのばれます。

版籍奉還について、当時の様子を想像しながら学んでみると、新たな発見があるかもしれません。

この時代をもっと深く知るために

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全15巻の新・日本史学習まんがシリーズ。この12巻では、江戸幕府を倒した明治政府が、近代化を目指してどのような改革をなしとげていったかを中心に描きます。この記事でも登場した大久保利、板垣退助、西郷隆盛といった面々が果たした役割や歴史的な意味を学ぶことができます。

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構成・文/HugKum編集部

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