「食品ロス」対策で無駄を減らそう。日本の現状や問題点、対策、「フードロス」との違いも

日本は豊かな食生活を実現している一方で、食品ロスの問題も抱えています。「嫌いなものは残す」「少し傷んだら捨てる」などの行為をしている場合は、少し意識を変えてみましょう。食品ロス削減の重要性や日本の現状、問題点や対策を解説します。

食品ロスの現状

環境問題・貧困問題が取り上げられる昨今、「食品ロス」の問題も無関係ではありません。食べ物の大切さを学ぶため、親子で食品ロスの現状について考えてみましょう。

食品ロスの意味や、日本の食糧事情について紹介します。

食品ロスとは

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことです。

日本では、生産過程・消費過程で捨てられるあらゆる食べ物を指すのが一般的で、「事業系食品ロス」「家庭系食品ロス」に分類されます。

近年は、メディアで「フードロス(Food Loss)」と紹介されることも増え、「食品ロス=フードロス」という概念が広く一般に浸透してきました。

しかし、厳密には「食品ロス=フードロス」ではありません。

「フードロス」の本来の意味は、消費者に渡る前に廃棄される食べ物のことです。海外では消費者が廃棄する食べ物は「Food Waste」と呼ばれ、厳密に区別されています。

参考:食品ロスの現状を知る:農林水産省

日本は食料自給率が低く食品ロスが多い

2021年の農林水産省「食品ロス量(平成30年度推計値)の公表」によると、2018年の日本の食品ロス量は600万tでした。これは国民1人当たり1日約130g、年間で約47kgもの食品を廃棄している計算になります。

食品ロス量だけを見ると日本は食料が余っているように見えますが、現実はそうではありません。日本の食料自給率は諸外国と比較して低く、2020年の食料自給率はカロリーベースで37%、生産額ベースで67%です。

カロリーベースでは約60%が輸入品に頼っている状態で、食料が不足しているのに廃棄しているという矛盾が生じていることが分かります。

参考:
食品ロス量(平成30年度推計値)の公表:農林水産省
日本の食料自給率:農林水産省

食品ロスはなぜ起こる?

2018年の日本の食品ロスの内訳は「事業系食品ロス」が54%、家庭系食品ロスが46%とほぼ半々の状態です。

それぞれどのような理由から食品が廃棄されているのでしょうか?  食品ロスが起こる原因を紹介します。

事業系食品ロスの原因

事業系食品ロスの主な原因としては、以下のものが挙げられます。

・仕込み過ぎ
・売れ残り
・食べ残し
・納品期限切れ(1/3ルール)
・破損・規格外品

一般に、日本人は食品に見栄え・質の高さを求めがちです。形が悪い・破損したなどの理由で簡単に捨てられる商品が多く、食品ロスにつながっています。

また、日本ならではの「1/3ルール」という商慣習も原因の一つです。これは消費期限の1/3以内に小売店に納品しなければならないとするルールで、納品されなかった食品は消費期限前でも廃棄されます。

国は事業系食品ロスの削減を目指して、「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を立ち上げました。納品期限の緩和など、商慣習見直しの取り組みが広く推進されています。

参考:食品ロス削減に向けた商慣習見直しに取り組む事業者の公表:農林水産省

家庭系食品ロスの原因

家庭系食品ロスの主な原因としては、以下のものが挙げられます。

・食べ残し
・買い過ぎ
・不適切な保存による腐敗
・過剰除去

家庭では、消費期限内に使い切れない量の食材を購入したり、料理を作り過ぎたりすることが食べ残しや直接廃棄の原因となります。

健康志向や調理技術の不足、味へのこだわりから、本来食べられる部分まで捨ててしまうことも食品ロスの原因です。

現代社会では食料が簡単に入手でき、捨てるのはもったいないという感覚が薄れてきました。食品を捨てない工夫を考えるよりも廃棄を選択する人が増えており、食品ロスが減りにくい状態です。

参考:食品ロスを減らすために、私たちにできること|環境省

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食品ロスが引き起こす主な問題

日本だけではなく、世界のさまざまな国が食品ロスを深刻な問題としてとらえ、対策に乗り出しています。食品ロスが発生すると、社会にどのような影響を与えるのでしょうか。

環境問題の悪化

大量の食品ロスを処分することは、地球温暖化につながるといわれます。

食品ロスの廃棄方法は、主に「焼却」と「埋め立て」です。日本は主に焼却で、食品ロスの処分によって二酸化炭素を余分に排出しています。

一方、多くの国々で行われているのは埋め立てです。これにより二酸化炭素よりも温室効果の高いメタンガスが発生するといわれており、地球の環境を著しく悪化させています。

現在、食品ロスの処分による温室効果ガスの総量は、二酸化炭素換算で約36億tに達するといわれます。世界の温室効果ガスのうち約8%は食品ロスから出ている計算で、食品ロスが地球環境に大きな悪影響を及ぼしているのは間違いありません。

食の不均衡が生まれる

食品ロスによる食の不均衡も、世界で取り組んでいくべき問題です。世界で生産される食料の総量は約40億tあり、全人口を十分にまかなえるといわれます。

しかし実際には、世界人口の約9人に1人が飢餓で苦しんでいる状態です。この傾向は、主に発展途上国で深刻な問題となっています。

発展途上国の食糧不足の原因は、異常気象や戦争などがありますが、先進諸国の食の搾取による影響も少なくありません。貧しい国から食料を仕入れつつ廃棄している国々は、この矛盾を是正する必要があります。

先進諸国内でも、経済格差の問題が食の不均衡を生み出しています。高級な食材を購入・廃棄する家庭がある一方で、その日の食事にも困窮する家庭があるのです。

参考:国連WFPの世界食料デーキャンペーン2018 | 国連WFPブログ

経済的損失の発生

食品ロスは、家庭・自治体・企業に経済的な損失を与えます。

食品を廃棄したり食べ残したりすることは、家計の無駄につながります。1回のコストはわずかでも、積もり積もれば大きな損失となるでしょう。

また、自治体が一般廃棄物の処理に使うコストは、年間2兆円にも上ります。このうちの約半分が食品ロスに関係するといわれ、その分の税金が無駄に使用されているのです。

経済的損失は、特に食品を販売する企業にとって顕著です。製品の生産・流通には多くのコストや人件費がかかります。廃棄すれば廃棄コストもかかり、製品を作る分だけ損失が生まれてしまうでしょう。

参考:食品ロス削減関係参考資料|消費者庁

食品ロス削減の取り組みや対策

食の不均衡や地球温暖化などを生み出す食品ロスについて、世界中が対策を始めています。

日本でも国・企業・学校等が一丸となって、食品ロス削減に取り組んでいる状態です。どのような取り組みや対策が行われているのでしょうか。

日本政府の取り組み

日本政府の取り組みとしては、以下が挙げられます。

・食品リサイクル法に基づく「発生抑制の目標値」の設定
・食品ロス削減推進法の施行
・啓蒙活動

2021年時点では、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)に基づき、31業種について「発生抑制値」が設定されています。

発生抑制値とは、生産・流通過程に発生する食品廃棄物等の単位当たりの目標値です。食品関連事業者は、製造・流通過程に発生する食品ロスを目標値以下に抑えるよう努めなければなりません。

2019年には、食品ロスの削減の推進に関する法律「食品ロス削減推進法」が施行されました。これにより、食品関連事業者の取り組み・フードバンク活動への支援など、食品ロス削減に向けてのさまざまな基本施策が実施されています。

この他、食品ロス削減の普及・啓蒙のため、必要な情報を詳しくまとめたポータルサイトも立ち上げられました。

参考:
食品廃棄物等の発生抑制の取組:農林水産省
食品ロスとは:農林水産省

企業・スーパーでの対策

企業やスーパーでの取り組みには、以下が挙げられます。

・賞味期限の年月表示
・在庫コントロール
・納品期限の延長

食品生産企業の一部は、品質劣化の遅い商品の賞味期限を年月日表示から年月表示に切り替えています。食品が店舗に陳列される期間が長くなれば、食品ロスの削減に有益です。

また外食産業は、在庫余りや仕入れ過多によって多くの食品ロスが発生します。これを防ぐため、在庫の管理を徹底したり厳密な予測によって仕入れ量を決定したりする企業が出てきました。

一部のスーパーは、飲料や菓子等の納品期限を1/2に延長し、食品ロスの原因となる「1/3ルール」の改善に努めています。

学校での対策

学校での食品ロス削減対策には、以下が挙げられます。

・給食支援員の配置
・食育指導
・生ごみ処理機の設置

給食支援員は、給食の食べ残しを調査して傾向を分析したり、子どもが好む調理の工夫をしたりする職員です。食べやすい給食を提供することで、食べ残しゼロを目指します。

給食の意義や目的・重要性を教える学校も少なくありません。教師や栄養士から食育指導を受けることで、子どもは「残さないこと」の重要性を理解します。

その他一部の学校では、学校内に生ごみ処理機を設置して、給食の残りを堆肥化する取り組みも行っています。

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家庭でできる食品ロス対策

食品ロスを削減していくためには、一人一人が「無駄を作らない」意識を持つことが大切です。子どもと一緒に食品ロスについて考え、できることから始めてみましょう。

家庭でできる食品ロス対策について紹介します。

食品は陳列棚の前から取る

スーパーなどの陳列棚は、基本的に消費・賞味期限の短いものが手前に置かれています。食品を購入するときは、手前のものから取るようにしましょう。

少しでも賞味・消費期限の長いものをと、奥の食品に手を延ばす人は少なくありません。これでは手前の食品が売れ残り、食品ロスが増えてしまいます。

「すぐに使ったり食べたりするものは手前から取る」を徹底することが、食品ロス削減につながるのです。

リメイクレシピで食材を使い切る

食材で廃棄されやすいのは、傷みやすい野菜が多いと考えられます。

しかし、丸ごと廃棄しなくても傷んだ部分を取り除けば使えるケースが多々あるのです。使える野菜はなるべく活用して、廃棄量を減らしましょう。

また、近年は簡単なレシピやリメイクレシピを紹介する料理サイトがたくさんあります。これらを活用すれば、食材を余すことなく利用できたり、余った料理をおいしく再生したりできるはずです。

食材や料理を廃棄する前に、リメイクできないかどうかを考える習慣を付けましょう。

まとめ買いした食品は冷凍保存する

まとめ買いした食品は、冷凍保存すると消費期限を延ばせます。使い切れない肉や野菜も、安易に廃棄せずに済むでしょう。

食品を冷凍する際にカットしたり下味を付けたりしておけば、調理の手間も省けます。忙しい家庭にとっては、時短にもなり一石二鳥です。

冷凍保存できる食材はさまざまあります。冷凍によって食感や風味が変わるものもありますが、違いを楽しみながら調理してみてはいかがでしょうか。

アプリを活用する

店舗の食品ロス削減を「食べて応援」するなら、食品ロス削減アプリを活用しましょう。おすすめは、廃棄される前の食品を数割引で購入できるフードシェアリングアプリです。

例えば「TABETE」では、閉店前や商品入れ替え前に廃棄される食品を探せます。アプリに掲載される店舗に行けば、数割引で食品を購入可能です。

「No Food Loss」は、コンビニの「ポプラ」「生活採家」と提携するアプリです。特定の店舗でアプリに掲載された割引クーポンを見せれば、消費期限間近のコンビニ商品を安く購入できます。

居住地によって利用できるアプリ・できないアプリがありますが、利用できる場合はお得です。気軽にインストールして、食品ロス削減に取り組みましょう。

・アプリ名:TABETE
・価格:無料
・App Store:ダウンロードページ
・Google Play:ダウンロードページ

・アプリ名:No Food Loss
・価格:無料
・App Store:ダウンロードページ
・Google Play:ダウンロードページ

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一人一人の努力が食品ロスを減らす

「無駄な食品を購入しない」「食べ残しをしない」「安易に捨てない」などの努力が、食品ロス削減につながります。家庭で食品ロスによる地球温暖化や食の不均衡について話し合い、子どもにも「食べ物を粗末にしないこと」の重要性を理解してもらいましょう。

食品ロスの問題は、国・事業者・消費者が一丸とならなければ解決できません。買い物の仕方や調理の仕方から意識を変えて、食品ロスを出さないようにすることが大切です。

 

構成・文/HugKum編集部

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 2 飢餓をゼロに
  • 12 つくる責任つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を

SDGsとは?

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