パパのテレワークや、子どもの休校・休園での巣ごもりライフで、気がつけば食費がかさんでいたこの春。緊急事態宣言が解除されても油断は禁物で、引き続きスーパーに行く回数を減らす分、買いだめをしすぎる傾向があるし、ゴミの量が増えるのも、いたしかたないこと。
でも、世界的にフードロスが叫ばれる昨今、少しだけ普段の調理法や食生活を見直してみると、食費も浮くし、ゴミも減る、そして地球にも優しいと、一石二鳥、いや三鳥です。
今回ご紹介するのは、オーストリア人のダーヴィド・グロス監督が撮ったドキュメンタリー映画『もったいないキッチン』(8月より劇場公開予定。~5月31日(日)までオンライン先行公開中)です。
合言葉は、日本語の“もったいない”。実は、元々仏教思想に由来する言葉だそうですが、無駄をなくし、命あるものへの畏敬の念が込められた美しい言葉です。でも、本作を観ると、日本の悲惨な現状に驚嘆してしまいそう。もちろんそのあとで、創意工夫された技ありの料理法から、賢く食材を使い切るコツのヒントももらえます。
1年で廃棄される食料は約643万トン=東京都民が1年間食べる量
“食材救出人”の異名をもつダーヴィド監督は、2015年に、廃油で走るキッチンカーでヨーロッパ5カ国を周り、廃棄予定の食材だけを料理して食べるというロードムービー『0円キッチン』を手掛け、数々のドキュメンタリー映画賞を受賞しました。そんなダーヴィド監督が、今回は日本を巡り、フードロス問題に対して果敢に切り込んでいきます。
古くから、“もったいない精神”が根付いている日本ですが、実は日本の食品ロスは世界トップクラスで、なんと年間廃棄される食料は約643万トン!これは東京都民が1年間食べる量に値するとか。
全国で換算すれば、1人当たり毎日おにぎり1個分、日本の人口でいくと、1億2600個に相当します。数字を見ると、思わずヒエ~!とのけぞりますよね。
「食べ物を捨てることは命を殺すこと」という言葉がずっしりと胸に刺さります。ダーヴィド監督は、旅のパートナーで通訳のニキさんと共に、まずは毎日たくさんの食べ物が廃棄されてしまうコンビニエンスストアを直撃。
なるほど、コンビニの店長さんや本部の人々の話を聞くと、私たちが便利さを求める分、そのニーズに応えようとしてくれるがゆえに、ロスの現状があるということも納得。やはり、私たちも、少し頭を切り替えないと、問題解決には至らないんだと、実感させられます。
余談ですが、ダーヴィド監督の取材に対して、ちゃんと誠実に対応してくれた大手コンビニチェーンさんの心意気もすばらしいと思いました。
目からウロコ!廃棄予定の食材がおいしい料理に大変身
一般家庭も突撃し、冷蔵庫から使いそうにない食材を救出していく監督たち。たとえば余った餃子の皮とか、使うと思って使わなかった調味料とか。“いつか使うと思っていたのに使わない食材あるある”が満載で、大いに共感&反省すべき点がありました(苦笑)。
見ていて目からウロコだったのが、もったいない精神を大切にする日本のシェフや生産者たちが編みだす料理の数々です。みなさんがふるまってくれるのは、食材のポテンシャルを最大限に引き出した、滋養のある料理ばかり。
たとえば、台東区の湯島山緑泉寺住職による、野菜くずまですべて使い切る精進料理をはじめ、福島県のフレンチシェフによるネギ坊主を丸ごと使った料理や、82歳で医者いらずという京都のおばあちゃんが作る野草を揚げた天ぷら、熊本県の温泉宿の女将さんが地熱を使った “地獄”料理など、どれもこれも、見ていて感嘆させられます。
もちろん土地の利を活用した料理も多いけど、彼らの知恵から学ぶこともたくさんありました。そして、やはり生きていくうえで、食は大事だなと、しみじみ思ったしだいです。
だから無理のない範囲で、毎日の料理をちょっとひと工夫するだけで、体にも家計にも優しい料理のレパートリーを増やせればいいのかなと。何よりも観終わったあと、なんだかハッピーな気分になれる映画でもあるので、ママたちにぜひ観ていただきたいです。この週末までオンラインで先行上映もされていますし、気になった方は、ぜひご覧ください。
5月25日(月)0:00~5月31日(日)24:0
監督・脚本:ダーヴィド・グロス 出演:ダーヴィド・グロス、塚本ニキ、井出留美…ほか
プロデューサー:関根健次
公式サイト:http://www.mottainai-kitchen.net/
オンライン先行公開の詳細:https://www.mottainai-kitchen.net/2020pre/
文/山崎伸子