ニュースなどで「食品ロス」について、一度は聞いたことがあるでしょう。世界の中で、日本の食品ロスの発生量は多いのでしょうか?
食品ロスを減らすために国や企業で行っている対策や、個人で取り組める対策について紹介します。
食品ロスとは?
食品を買ったものの消費期限を切らしてしまうのも、食品ロスの一つです。私たちは気付かないうちに食品をむだにしているかもしれません。食品ロスについて詳しく解説します。
まだ食べられる食品を捨てること
食品ロスとは、本来食べられるはずの食品をむだに捨ててしまうことです。外食産業や食品加工業などの「事業系食品ロス」と、家庭から出る「家庭系食品ロス」があります。
事業系食品ロスは、店舗の売れ残りや飲食店の仕込みすぎ、過剰なオーダーによる食べ残しなどが挙げられます。家庭系食品ロスは、消費期限を過ぎてしまった食品だけではありません。野菜・果物の皮を過剰に除去したり、作りすぎや好き嫌いによる食べ残しも該当するのです。
世界では食糧難の国も多く、世界人口の約9人に1人が栄養不足で苦しんでいるにもかかわらず、食品ロスとして大量の食品が廃棄されています。食品ロスを焼却や埋め立てによって廃棄すれば、環境にも悪影響です。廃棄のために資源やコストが膨大にかかり、経済問題にもなっています。
参考:
食品ロスとは:農林水産省
国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン
食品ロスの世界ランキング
食品ロスは日本だけの問題ではありません。食品ロスの世界ランキング上位の主要国と日本の順位について見ていきましょう。
ランキング上位の主要国
食品ロスの発生量を主要国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、韓国、中国)で比較してみます。
国別で比較すると、中国が103Mtと最も多くの食品ロスを出しており、2位はアメリカ56.4Mt、3位が日本17Mtです。最も少ないオランダは2.52~3.73Mtでした。
しかし1人当たりで見ると、オランダが149.9~222.9kgと最多で、2位がフランス148.7~200.5kg、3位はイギリス187kgとなります。最も少ないのは中国の75.74kgです。主要国の1人当たりの発生量は、いずれも決して少なくありません。
日本はアジアでワースト
日本の1人当たりの食品ロス発生量は133.6kgです。中国の75.74kgや韓国の114kgよりも多く、アジアでワーストとなっています。
日本が多い原因の一つが「賞味期限」です。賞味期限とは、未開封で表示方法とおり保存した場合に「おいしく食べられる期限」で、期限を過ぎても食べらないわけではありません。しかし賞味期限が近いものや切れた商品は廃棄されているのが現状です。
どのような食品ロス対策をしている?
ヨーロッパなどでは食品ロスを削減するために、食品廃棄物をビジネスにする国も出てきました。世界や日本ではどのような対策をしているのでしょうか?
世界が取り組む「SDGs 目標12 つくる責任つかう責任」
世界では2015年9月の国連サミット加盟国によって決められた「持続可能な開発目標(SDGs)」に取り組んでいます。SDGsは、30年までによりよい世界を目指すための国際目標で、17のゴールと169のターゲットで構成されています。
その中の「目標12 つくる責任つかう責任」では、持続可能な生産消費形態を確保することが目標です。私たちは地球の資源やエネルギーを大量消費していますが、資源には限りがあることを忘れてはいけません。人口は50年には100億人にまで増加するといわれますが、地球上の資源だけではまかないきれなくなっています。
国や企業は地球の資源やエネルギーなどの環境が持続可能な生産体制づくりを、消費者はむだな消費をしないことが求められています。
参考:12.つくる責任、つかう責任 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
日本政府は二つの法律を制定
日本政府は「食品ロス削減推進法」と「食品リサイクル法」の二つの法律を制定しました。
食品ロス削減推進法の正式名称は「食品ロスの削減の推進に関する法律」です。国・地方公共団体・企業・消費者などが一体となって食品ロス削減に取り組むため、19年10月1日に施行されました。事業系食品ロス量を30年度までに2000年度よりも半減させることが目的です。
食品リサイクル法は、売れ残り・食べ残し・製造過程で発生する食品ロスを抑制してロス量を減少させるとともに、肥料などへ再利用など食品循環資源の再利用を促進するために01年5月1日に施行されました。
参照:
消費者庁 食品ロスの削減の推進に関する法
食品リサイクル法:農林水産省
自治体や事業者も積極的に行動
全国の地方自治体では「おいしい食べ物を適量で残さず食べきる運動」を趣旨としたネットワーク「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」を設立しています。全国的な規模で食べきり運動などを促進し、食品ロスを削減することが目的です。
食品関連事業者では、鮮度をより長く保持できるよう容器を工夫したり、食べ残しを防ぐための小分け包装をしたりしています。飲食店でもアプリ開発事業者と連携し、売れ残りなどで廃棄されてしまう、まだ食べられる食事を食べてもらう「フードシェアリングサービス」を展開するなど、積極的な活動を行っているのです。
その他、地方公共団体と地域の飲食店が連携して食べ残しを減らす取り組みも行われています。
個人単位でできる食品ロス対策
食品ロスの半分近くが家庭系食品ロスです。私たち個人の行動が大きく影響するため、個人単位でできる対策について紹介します。
家庭でできること
家庭で食品を廃棄する理由には、買いすぎや作りすぎが挙げられます。買い物の前に冷蔵庫をチェックして、リストを作ってから出かけましょう。リストのものだけを購入すれば、買いすぎ防止になります。
また店頭では賞味期限が早いものが手前に配置されているはずです。利用予定と照らし合わせ、なるべく手前から商品を取るようにしましょう。
購入した食材は、適切な方法で保存しないと劣化してしまうので注意が必要です。古い食材から使い、人数に合わせた適量の料理を心掛けます。万が一料理が余っても捨てるのではなく、リメイクなどで最後まで食べきりましょう。
外食時にできること
外食をする際には、小盛りや小分けメニューなど量を選べる店選びが大切です。自分が食べる量を考えて注文し、食べ放題の場合でも欲張らず、自分が食べられる量だけ取るようにしましょう。
大人数の食事では会話に集中して食べ残しが発生しやすいので、「3010運動」と呼ばれる食べ残しを防ぐ運動もあります。乾杯からの30分と最後の10分は食事を楽しむという運動です。
食べ切れずに残ってしまったら、飲食店側の説明をよく聞き食中毒などのリスクを理解して自己責任で持ち帰るのも一つの方法です。
参照:環境省|外食時の「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンの実施について
食品ロスは世界共通の問題
食品ロスが大量に発生している一方で、食糧難で苦しんでいる国も多く、食の不均衡が問題となっています。食品ロスは経済面や環境面に悪影響を起こします。
国や企業だけでなく、個人単位でもできる食品ロス対策はたくさんあります。一人ひとりが気を付けるだけでも、食品ロスの発生量は大きく削減できるはずです。世界共通の問題として、食費ロス削減に向けての努力が必要でしょう。
構成・文/HugKum編集部