「硫化銅」とは?
硫化銅は、二つの物質が合わさってできる物質です。硫化銅の元になる物質と、化学反応式を見ていきましょう。
「硫黄」と「銅」の化合物
硫化銅は、「硫黄(いおう)」と「銅」が合わさってできた物質です。ある物質が硫黄と化合して別のものに変化する現象を「硫化(りゅうか)」といいます。銅が硫黄と化合すると、硫化銅に変化します。
硫化銅は、反応の仕方によって「硫化第一銅」と「硫化第二銅」に分けられます。どちらも自然界に存在する物質で、それぞれ「輝銅鉱(きどうこう)」「銅藍(どうらん)」と呼ばれています。
学校の化学の実験で作るのは「硫化第二銅」です。硫黄に銅を混ぜ、直接加熱して作ります。
「硫化銅」の化学反応式
化合物の化学反応式は、それぞれの物質の元素記号で表します。硫化銅は、銅と硫黄の化合物なので、銅の元素記号「Cu」と硫黄の元素記号「S」を合わせた「CuS」が、硫化銅を表す記号です。
従って硫化銅の化学反応式は「Cu+S→CuS」となります。
知っておきたい化学用語
硫化銅について子どもに説明するためには、化学用語への理解も欠かせません。化学反応にまつわる用語を三つ紹介します。
「化学変化」
化学変化とは、元の物質と異なる性質を持つ物質に変化する現象です。化学変化には「化合」と「分解」があります。
「水」を例にして考えてみましょう。「水」は、分解すると「水素」と「酸素」になります。逆に「水素」と「酸素」を化合させると「水」になります。どちらの場合も、元の物質とはまったく異なる性質を持つ物質に変わっています。
一方、「水」が「氷」や「水蒸気」に変化する現象は「状態変化」といいます。氷も水蒸気も形は変わっているものの、水としての性質は変わっていません。温度が変わって固体や気体になっただけなので、常温に置くだけで液体に戻ります。
「化合」
「化合」は、2種類以上の物質が結び付いて、一つの新しい物質ができる現象です。「水素」と「酸素」が結び付いてできる水は、化合物の一つに含まれます。
「硫化銅」も化合物なので、元の「銅」とは性質が異なります。銅は力を加えると曲げたり伸ばしたりできる、柔らかい金属です。しかし、硫化銅は大変もろく、力を加えると崩れてしまいます。
また、銅は赤褐色ですが、硫化銅は青黒い色をしています。硫黄と化合して、まったく異なる性質のものに変化したのは見た目にも明らかです。
なお「食塩水」のように、2種類以上の物質が混ざっているだけで、それぞれの性質が変わらない場合は化合物ではなく「混合物」といいます。
「分解」
「分解」は化合の逆で、一つの物質が化学反応によって、2種類以上の物質に変わる現象です。分解の代表的な例が「水の電気分解」です。先述の通り、水は分解すると「水素」と「酸素」という異なる物質になります。
分解という言葉は、一般的には組み合わさっているものをバラバラにするときに使いますが、化学では分解後の物質が分解前の物質と違う性質を持っていなければなりません。
そのため「食塩水」を「水」と「食塩」に分けることは、分解ではないので注意しましょう。
硫化銅を作る方法
硫化銅を作る実験は、中学校の理科の授業で登場します。家庭で再現してみたいと考える人もいるかもしれませんが、硫黄は空気中の酸素と反応して、有毒な二酸化硫黄を発生させるため、実験の際は十分に換気する必要があります。
また加熱によって、熱くなった硫化銅が吹き飛ぶおそれもあります。危険性を伴う上に、硫黄や銅の入手も簡単ではないため、家庭での実験は控えてください。
以下では、学校で行われる一般的な実験の手順ですが、あくまで化学知識として解説します。
実験方法
硫化銅を作る具体的な手順は、以下の通りです。
1.試験管に硫黄を入れてガスバーナーで加熱する
2.硫黄の蒸気が発生したら、銅線を入れる
3.火を止めて変化を観察する
あらかじめ、硫黄と銅の粉を混ぜて試験管に入れてから加熱する方法もあります。反応速度は非常に速く、加熱するとあっという間に硫化銅ができあがります。
加熱をやめても反応が続く理由
硫化銅の実験では、バーナーでの加熱を止めても化学反応が続きます。実は、「銅」と「硫黄」が化合するときは熱を放出しており、この熱がまだ反応していない銅と硫黄に伝わっていくため、途中で加熱を止めても反応が続くのです。
すべての反応が終われば熱も発生しなくなり、冷めていきます。
硫化銅は化合物
硫化銅は、銅と硫黄の二つが組み合わさってできる「化合物」です。化学変化には、2種類以上の物質が組み合わさって他の物質に変わる「化合」と、一つの物質から2種類以上の物質が生まれる「分解」があります。
硫化銅は硫黄と銅が化合することで、元の性質とは全く別の物質に変わります。化合や分解についての理解を深め、硫化銅とは何かを子どもに正しく教えてあげられるようになりましょう。
構成・文/HugKum編集部