SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」といいます。
2030年までに持続可能なよりよい世界を実現するために、2015年の国連サミットで17個の国際目標が設定されたのです。SDGs目標15が目指すものと課題を見ていきましょう。
生物多様性の保全を目指す
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」は、生物多様性の保全を目指して掲げられました。生物多様性とは、多種多様な生物による命のつながりを表す言葉です。
地球上にはさまざまな個性を持つ生物が存在しますが、どの生物も単体では生きられません。他のたくさんの生物と関わって、はじめて生きていけるのです。
現在地上では人間の活動がもたらす影響によって、生物多様性が失われつつあります。これ以上命のつながりが絶たれないように、今度は人間が主体となって、生物を大切に守っていかなくてはならないのです。
12のターゲットを設定
目標15には、12のターゲット(課題や具体的対策)が設定されています。
ターゲットの内容は、「森林破壊や砂漠化など土地の劣化に対応するもの」と「生物多様性の損失を阻止するもの」の二つに大きく分けられます。
生物多様性を保全するためには、まずは生物が住めなくなった土地を住めるように回復する必要があるでしょう。同時に、外来種や密猟者の脅威から野生生物を保護する対策も欠かせません。
また、生活のために木を伐採したり野生生物を捕ったりせざるを得ない人たちに対して、適切な支援を行うことも対策に盛り込まれています。
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目標達成に立ちはだかる問題点
広い地球上で「陸の豊かさ」を守るためには、早急に解決しなければならない課題があります。SDGs目標15の達成に立ちはだかっている、主な問題点を見ていきましょう。
開発による森林破壊
世界の陸地面積の約31%を占める森林は、多くの生物の住みかとなる他、温室効果ガス(CO2)を吸収する役割を担っています。
しかし現在、熱帯地域を中心に森林面積が大幅に減少しています。減少の主な理由は、以下の通りです。
・パルプや燃料として使うための過剰伐採
・非伝統的な焼畑農業の拡大
・農地やレジャー施設への転用
・森林火災
焼畑農業自体は、伝統的で森林への影響が少ない農法です。ところが近年は伝統を無視した手法の焼畑農業が拡大し、森林破壊の一因となっています。
農地やレジャー施設への転用も、世界の人口増加に伴い規模が拡大しているのが現状です。
絶滅危惧種の増加
人間の開発行動が活発になって以降、絶滅する生物の数は急激に増えました。地球上に存在する生物のうち、1975~2000年の25年間で、年平均4万種もの生物が絶滅したといわれています。
今後絶滅が予測される「絶滅危惧種」も、年々増え続けています。
IUCN(国際自然保護連合)の発表によると、2019年7月~12月の5カ月間だけで、絶滅危惧種の数が1840種も増えました。絶滅生物がさらに増加すれば、生物多様性の保全はますます難しくなるでしょう。
過剰な土地利用による砂漠化
「砂漠化」とは、植物がよく育っていた土地が何らかの原因で育ちにくい土地に変わることです。
極端な少雨が続くなど気候が原因で起こることもありますが、現在問題視されている砂漠化のほとんどは、人間の活動に起因しています。
植物の成長が間に合わないほどに家畜が草を食べつくしたり、人間が木を切り過ぎたりすると地表を守るものがなくなり、風や水に浸食されて土地が荒れてしまうのです。
砂漠化した土地が増えると食糧を生産できなくなるだけでなく、CO2の吸収量が減って地球温暖化を促進します。温暖化がもたらす気候変動により、さらに砂漠化が進む悪循環に陥る可能性も指摘されています。
日本政府による取り組み例
SDGsは、世界各国が達成に向けて努力する共通目標です。目標15達成のために、日本政府はどのような行動を起こしているのでしょうか。
「グリーン購入法」「クリーンウッド法」
「グリーン購入法」は2000年に制定された法律で、正式名称を「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」といいます。
国の機関や独立行政法人などの団体が、物品やサービスを購入する際の基準を定めた法律です。
・購入前に本当に必要か、修理はできないかを十分に検討する
・環境負荷が小さい製品やサービスを選ぶ
・環境負荷の軽減に貢献度の高い業者から購入する
・購入後、不要となった場合は適切に処分する
グリーン購入とは、以上のような行動を指します。国などが率先して環境に配慮した購入行動を取ることで、環境負荷の小さい製品やサービスの市場を活性化し、循環型社会の形成を促すのが目的です。
2017年には「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)」が施行され、違法伐採された木材の流通や利用の抑制にも取り組んでいます。
参考:
グリーン購入法:環境省
グリーン購入の調達者の手引き:環境省
クリーンウッド法の概要:林野庁
「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」
2014年に環境省で策定されたもので、国内の絶滅危惧種を守るために、国としてなすべきことをまとめた基本戦略です。
具体的には、以下の2点を2020年までに実施すると掲げています。
・「絶滅危惧種保全カルテ」を作成し、保全の基礎情報とする
・「国内希少野生動植物種」に、新たに300種を追加する
国内希少野生動植物種は、絶滅のおそれがあるとして捕獲や譲渡が禁止される動植物のことです。2022年1月現在、427種が登録されています。
参考:
環境省_「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略」の策定について
環境省_国内希少野生動植物種一覧
「生物多様性国家戦略」
「生物多様性国家戦略」とは、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する、国の基本的な計画です。1992年の地球サミットで採択された「生物多様性条約」に基づくもので、日本では1995年に最初の戦略を策定しました。
以降、時代の状況に合わせて4度にわたり見直され、現在に至っています。最新版は、2012年に策定された「生物多様性国家戦略2012-2020」です。ここでは約700の具体的な施策と、50の数値目標が示されています。
数値目標の例には、「生物多様性」という言葉の認知度を2009年の36%から75%以上に高めることや、ラムサール条約湿地を新たに10カ所程度増やすこと、47都道府県全てが生物多様性戦略に着手することなどがあります。
参考:生物多様性国家戦略 | 生物多様性 -Biodiversity
私たちが「SDGs目標15」のためにできること
SDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」は、地上で暮らす私たちにとってはたいへん身近なテーマでしょう。目標達成に向けて、個人ができることを紹介します。
自然と触れ合う機会を設ける
目標達成のためには「陸の豊かさ」とは何かを実感する必要があります。実際に川や山などに出かけ、自然と触れ合うことで、生物多様性の大切さや損失の重大さを実感できるはずです。
自然の中で過ごす体験は、子どもの情操教育にも役立ちます。それほど遠くまで行かなくても、自然と触れ合う機会はたくさんあります。
公園で虫や花を観察したり、庭で野菜を育てたりするだけでも十分です。無理のない範囲で、子どもと一緒に楽しみながら生物多様性について考えてみましょう。
環境に優しい製品を選ぶ
近年は、さまざまな分野で環境に配慮した製品が登場しています。中には業界や団体によって認証マークが付けられた製品もあり、その製品を購入すればSDGsに貢献する企業を支援したことになるので、間接的に目標達成に寄与できるでしょう。
目標15に関係するマークには、「FSC認証マーク」や「リーピングバニーマーク」などがあります。
FSC認証マークは、森林保全に貢献する業者の製品に認められたマークです。違法伐採や製造過程でのCO2大量排出がない、環境に配慮した製品の証です。
リーピングバニーマークは、動物実験を一切していない化粧品等に使われます。化粧品の実験動物として、ウサギがよく利用されることが名称の由来です。
参考:
FSC認証について | Forest Stewardship Council
Go cruelty free with the Leaping Bunny | Cruelty Free International
SDGsの目標15を理解し、自然に優しい行動を
SDGs目標15は、陸上での生物多様性保全にフォーカスした目標です。人間も他の生物によって生かされている存在である以上、壊してしまった自然を修復し、絶滅の危機に瀕している生物を救う責任があります。
一人一人が身近にある自然を大切に思うことが、生物多様性の保全につながります。自然破壊の現状を認識して、動植物に優しい行動を考え、できることから取り組んでみましょう。
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構成・文/HugKum編集部