近年、新聞やテレビなどで「SDGs」という言葉を目にするようになってきました。では、SDGsとはどのような意味なのでしょうか?世界的に取り組まれているSDGsの基本的な内容と、国や企業が取り組むことのメリットについて解説します。
目次
SDGsとは何か
「SDGs(エスディージーズ)」という言葉を目にすることはあっても、具体的にどのようなことを指すのか理解していない人は多いかも知れません。
しかし、世間で当たり前のように使われている言葉については、なかなか人に聞きづらいというケースもあるのではないでしょうか? SDGsについて理解するために、まずは概要から見ていきましょう。
2030年までに達成する世界共通目標
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、2030年までに達成する世界共通の「持続可能な開発目標」のことです。
2000年に定められたミレニアム開発目標「MDGs(エムディージーズ)」の後継として、2015年の国連サミットで採択されました。
MDGsは開発途上国における問題解決を目指すものでしたが、SDGsは先進国と開発途上国が一丸となって達成する普遍的な目標が掲げられています。
SDGs は17のゴール・169のターゲットから構成され、世界中の誰一人取り残さない社会の実現を目標としています。
参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
SDGsとESGとの違い
SDGsに関連するキーワードとして「ESG」があります。では、ESGはどのような内容なのでしょうか? ESGの概要と、SDGsとの違いについて見ていきましょう。
ESGとは
「ESG」とは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」のそれぞれの略で、企業が長期的な事業活動を行うために必要な要素とされています。
企業が持続するためには、利益を追求することが重要です。しかし、利益だけを求めていては、周囲に悪影響を与えることもあり、結果的に損害が出るケースもあります。
ESGを意識し、環境問題や人権問題に対応したり、内部統制を強化したりすることで、企業の持続的な成長につながる可能性があるのです。
二つは何が違うの?
「SDGs」も「ESG」も、よりよい社会を目指すための理念であるという点では共通しています。
違いを挙げるとすれば、「SDGsは目標やゴールを指すもの」であり、「ESGはそれを実現するための手段の一つ」といえるでしょう。
ESGは、あくまでも企業や経済界を中心とした取り組みについて示したものです。一方SDGsは、世界中のあらゆる人がターゲットとなっています。
つまり企業がESGを意識した事業活動を行うことで、SDGsの達成に一歩近づくことになるのです。
17の目標は「5つのP」に分けられる
SDGsでは達成すべき17の目標が定められています。この17の目標は大きく5つに分類され、「5つのP」というキーワードで考えると、内容をより理解しやすくなります。
それぞれの「P」を見ていきましょう。
人間「People」
「人間(People)」は、全ての人が健康に社会生活を送れるよう六つの目標が掲げられています。
世界中の人々が貧困や飢餓に苦しむことなく、安全な水とトイレを使えることは、人間的な生活において重要なポイントです。しかし、開発途上国では実現できていない国が多く、先進国であっても格差によって問題となるケースがあります。
また、ジェンダー平等や質の高い教育、医療問題、福祉政策などは先進国においても、まだまだ多くの課題が残っている状況です。
豊かさ「Prosperity」
「豊かさ(Prosperity)」は、全ての人が豊かな生活を送れることを目指し、その社会基盤を作るための六つの目標です。
クリーンエネルギーや再生可能エネルギーなどを活用しながら、全世界の人々が使用できる安全で安価なエネルギーの創出を目指しています。
また、産業や技術を発展させるためのインフラ整備を行うことも、豊かな生活を実現する上での重要なポイントです。失業をなくし、やりがいのある仕事を与え、経済を発展させて、国や人における格差を無くすこともうたわれています。
災害への対策や交通アクセスの改善などを講じ、長く住み続けられるまちづくりも必要です。
地球「Planet」
「地球(Planet)」は、全ての人が長く安心して生活するために、地球を劣化から守ることを求めています。
人間は地球上のさまざまな資源を使用していますが、これらは無限に利用できるわけではありません。廃棄物を減らしたり、消費する際の無駄をなくしたりすることで、限りある資源を有効に活用していくことが大切です。
エネルギー資源の有効活用だけでなく、海洋資源や森林の保護管理についても同じことがいえるでしょう。
また、世界中で発生する気候変動に対して、影響を軽減させたり適応力を強化したりするために、具体的な対策を立てることが必要です。
平和「Peace」
「平和(Peace)」は、全ての人にとって平和と言える社会をつくる、SDGsの目標の一つです。
「戦争を起こさないこと」を思い浮かべるかもしれませんが、戦争だけではなく、世界中からあらゆる暴力をなくすことを意味しています。
子どもに対する虐待や人身売買の撲滅、汚職・わいろなどの不正な行為を減らすことも、平和な社会を実現するために重要なファクターです。
それぞれの国で公正な法律に基づき、暴力におびえることなく、安心して生活を送れることを目指します。
パートナーシップ「Partnership」
「パートナーシップ(Partnership)」は、これらの目標を達成するために最も重要で、世界中の国々が協力することの大切さを指しています。特に、開発途上国に対しては、経済面・技術面を含め、多角的な支援を進めていく必要があります。
このような支援を一時的ではなく持続的に、かつ効果的に行うためには、各国が足並みをそろえなければなりません。
もちろん国同士という大きな単位だけでなく、企業などの経済界・学術界・地域・市民などが一丸となって取り組むことが重要なのです。
日本政府の取り組みと達成状況
日本では関係省庁や関係機関がSDGsの実現に向けて、さまざまな取り組みを行っています。これまでの主な取り組みと、達成状況について紹介します。
これまでの主な取り組み
日本でのSDGsに対する主な取り組みとしては、「実施体制の構築」「ジャパンSDGsアワードの創設」「SDGs未来都市の選定」が挙げられます。
日本では、2016年に「SDGs推進本部」が設置され、実施方針が策定されました。その実施方針に基づき、毎年「SDGsアクションプラン」を策定し、その年の重点項目を決めて取り組んでいる状況です。
2017年には「ジャパンSDGsアワード」が創設され、達成に向けて優れた取り組みを行った団体を毎年表彰しています。
また、自治体による取り組みを公募し、優れたプランを実施する自治体は「SDGs未来都市」として支援しています。
2020年の日本の達成度は17位
SDGsの取り組みに関しては、達成度・進捗状況などが毎年レポートとして公開され、各国の達成度合いをランキング形式で公表しています。このランキングにおいて、2020年の日本は17位でした。
SDGs達成の度合いを示すスコアは79.17となっており、全体に対して約79%が達成できたといえます。日本は2016年が18位、その後11位、15位、15位、17位とおおむね20位以内で推移している状況です。
上位はスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国が多く、日本以外の主要国ではフランスが4位、イギリスは13位、アメリカは31位、中国は48位となっています。
参考:Sustainable Development Report 2020
目標別の評価もチェック
全体としてのスコアは79.17ですが、それぞれの目標の達成度も重要です。
日本では「質の高い教育をみんなに」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「平和と公正をすべての人に」の三つは達成できていますが、それ以外は達成に至っていません。
特に、重要な課題が残っているのは「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」の四つです。
未達成の目標をチェックすることで、日本では男女格差や地球環境に対する取り組みが遅れていることが明らかになってきます。
参考:Sustainable Development Report 2020
企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsの目標を見ていくと、社会貢献的な意味合いが強いと感じる人も多いでしょう。しかし、企業としてもSDGsにポジティブな姿勢を打ち出すことは、多くのメリットを得られます。
企業がSDGsに取り組むとどんなメリットがあるのかを見ていきましょう。
企業イメージが向上する
SDGsに取り組むことで、企業イメージの向上が期待できます。ビジネスを進める上で利益を得ることは大切ですが、社会貢献にも取り組んでいるということは、企業のブランディング戦略としても重要です。
消費者が商品を選ぶとき、もちろん価格や品質に注目しますが、企業イメージも大きな影響を与えます。同じような商品があったとき、社会貢献している企業はイメージがよく、選ばれる可能性が高くなるのです。
また企業イメージがアップすれば採用の際にも有利で、よりよい人材を確保しやすくなります。
新たなビジネスチャンスが生まれる
SDGsに取り組むと、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が高くなります。SDGsで目標となっているのは、全世界においてニーズがある内容です。
特にその中で未達成となっている目標があれば、それは新規のビジネスとして需要があると判断できます。その分野に進出し、課題を解決する取り組みを行うことで、新たなビジネス展開が望めるのです。
また、同じ目標を目指す関係省庁や政府機関、他の企業とのつながりも生まれ、今後の事業展開の強みにもなります。
⽣存競争で優位に立てる
SDGsに取り組むかどうかは、個々の企業で決定できます。しかし、取引先の選択において、SDGsに前向きな企業とそうでない企業を比較したときには、前者が有利になる可能性があるのです。
企業としてSDGsに取り組むことは、取引先や投資家に対してプラスのイメージを与える要因で、すでに投資家の中では投資先選択の指標にしているケースもあります。
将来的に取引や企画の採用条件として、SDGsへの取り組みが必須となる可能性も否めません。事業活動を継続する中で、さまざまな面で優位に立てるというメリットを得るには、SDGsへの参画が重要なのです。
シーン別!SDGs達成のために個人ができること
SDGsは国や企業だけに関係するものではありません。個人の意識を少し変えるだけでも、SDGsの達成に貢献できます。
SDGs達成のために、私たちはどのようなことができるのでしょうか?
身近なこと
まずは身近なことから、SDGsを意識した行動を始めてみましょう。まず、家にいてもできることは、電気・ガス・水道などの節約です。
不要な電気を消したり使う水の量を減らしたりすることが、SDGsの達成につながります。ゴミの分別をしっかり行いリサイクル率を上げることも、地球環境への貢献となる行動です。
また、インターネットでSDGsに関する有用な情報を見つけたら、SNSでシェアすることで周囲の人のSDGsに対する意識を高めることができます。
「#globalgoals」というハッシュタグで、SDGs達成のための取り組みが全世界から発信されています。そのハッシュタグで他の人の取り組みを確認し、自分も発信してみましょう。
外出先で意識したいこと
外出先でもSDGsの達成に貢献できることがあります。特に買い物の際は、意識したいポイントが多数あります。
例えば、マイバッグを持参してプラスチックの使用を削減したり、売れ残ってしまった訳アリ品を選ぶことでフードロスを減らしたりができるでしょう。
コーヒーショップではマイボトルを使用すれば、ゴミの削減につながる上に、値引きをしてもらえる場合もあるので一石二鳥です。
また、食品以外の洋服や家具・家電などは、リサイクルを上手に活用して欲しい物を手に入れましょう。
職場でできること
職場に通勤する際は、なるべくマイカーの利用は避け、自転車や公共交通機関を利用しましょう。また会社規模で紙の削減や省エネ、リサイクル活動に取り組むと、効果が大きいためおすすめです。
このような行動を進めていくことで、資源の節約や有効活用にもつながります。
もし社内で男女格差などがある場合、その改善を訴えていくことはジェンダー平等の観点からも大切です。差別やいじめなどがあったら、社内の関連部署に報告して、対応してもらうようにお願いしましょう。
SDGsについて真剣に考えよう
SDGsや世界開発目標などと表現すると、自分とは関係のない遠い世界の話と感じてしまう人もいるでしょう。しかし、SDGsは決して別世界の話ではなく、よりよい社会を築くという意味で、自分にも深く関わりがあるのです。
SDGsについて一人一人が真剣に考え、日々どのように生活すればよくなるのかを意識して、達成に貢献しましょう。
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文・構成/HugKum編集部