エシカル消費が未来を築く。わたしたちには何ができる?

環境問題や社会問題を考える上で、注目を集めているのが「エシカル消費」です。欧米を中心に広がりを見せていますが、日本ではここ最近になって聞かれるようになりました。エシカル消費の概要と注目される理由、取り組みの実例について紹介します。

エシカル消費とは

「エシカル」という言葉自体を聞き慣れない人は多いかもしれません。しかし、言葉の意味や考え方を知れば、普段の行動も変わっていくはずです。

まずはエシカル消費がどんなことを指すのかを見ていきましょう。

地球環境・人・社会に配慮した消費行動

エシカル消費」とは、地球環境や人、社会などに配慮した消費行動のことを指します。「エシカル(ethical)」は「倫理的な」という意味で、法律で定められていなくとも「人として守るべき秩序」のことです。

自分のことだけを考えるのではなく、人や社会を思いやる気持ちを持つことで、倫理的な行動ができるようになります。

自分が欲しいから、食べたいから、といった利己的な感情だけを優先するのは倫理的とはいえません。消費することによって、社会や周囲にどんな影響を与えるのかを考えた上で行動することが、エシカル消費とされています。

エシカル消費が注目される理由

エシカル消費とは、環境・人・社会に配慮した買い物のことをいいますが、そもそも注目されるようになったのは、どのような理由があるのでしょうか?  主な二つのポイントをあげて解説します。

環境や社会問題の深刻化

エシカル消費が注目される理由の一つが「環境問題や社会問題の深刻化」です。地球環境は人類のさまざまな活動により、大きな影響を受けています。

特に、地球温暖化や森林破壊、水資源の不足などは、人類が経済発展のために行ってきた消費行動の結果ともいえるでしょう。

また、物を製造する過程においては、開発途上国における労働搾取や児童労働などの問題も潜んでいます。これらの問題を解決するためには、消費する側がエシカルを意識することが大切だと考えられているのです。

SDGsの目標12を達成するため

国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」では、17の目標が掲げられています。その中の目標12は「つくる責任つかう責任」で、持続可能な生産消費形態の確保を掲げている項目です。

具体的には、リサイクルやリユースを活用して廃棄物を減らしたり、フードロスを減らしたりすることなどがあげられます。

また資源を有効活用し、少ない資源で効率よくものを作り出す生産技術を開発することも、この目的を達成するために必要です。

エシカル消費を実施することで、この目標12の達成に近づくことができます。

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エシカル消費の取り組みと実例

エシカル消費に取り組むには、どのような方法があるのでしょうか?  目的別に、実例を紹介します。

人・社会への配慮

エシカル消費の取り組みの一つが「人・社会への配慮」です。

商品が手元に届くまでには、原料の生産・加工・流通・販売などさまざまな工程を得る必要があり、そこには多くの人が関わっています。

その過程の中では、健全な労働環境ばかりではなく、児童労働や労働搾取が行われているかもしれません。

このような生産物の背景に思いを巡らせ、社会的な悪が関わる製品を購入しない選択をすることが、人・社会への配慮となります。

適正価格で取引されているフェアトレード製品を購入したり、障がい者支援などにつながるものを選んだりすることが、エシカル消費につながるでしょう。

地域への配慮

買い物をする際、「地域の手助けになる商品を選ぶ」ことも、エシカル消費の手段の一つです。流通とインターネットの普及により、今はどこにいても安価で物が手に入ります。

しかし、このような消費行動ばかりをしていると、地域の生産者や小売店を苦しめるかもしれません。

地産地消を心がけたり、国産の商品を選択したりすることで、地域の活性化や食料自給率の上昇につながります。また、輸送エネルギーの減少にも貢献できて、一石二鳥です。

地元以外の商品を購入する際は、被災地のものを選ぶこともエシカル消費といえるでしょう。

環境への配慮

物の製造過程における活動は、環境に少なからず影響を与えるものです。しかし、その影響をなるべく減らすように工夫することで「自然環境の保護」につながります。

例えば、商品を選ぶときには、製造過程のエネルギー消費や、廃棄物の排出量などに目を向けることがポイントです。商品の製造過程においてCO2 削減の工夫をしている企業や、リサイクルを推進している企業の商品を選ぶように意識してみましょう。

また、購入する商品のことだけでなく、買い物の際にマイバッグやマイボトルを使用するのも、環境保護のためには重要な消費行動です。

生物多様性への配慮

生物多様性とは、地球上にさまざまな生物が存在していることを言います。多様な生物が存在するには地球環境が大きく影響しており、また多様な生物の存在も地球環境を安定させることに関与しています。

生物多様性を保全すること」は、人類が安心して生活していくためにも重要です。

そのためには、森林資源や水産資源の保全に配慮した商品を選ぶ、といった方法があります。また動物実験を行っていない化粧品を使うなど、動物福祉についても目を向けるとよいでしょう。

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エシカルに関連する認証マーク

エシカル消費を行う上で、認証マークは一つの指標となります。認証マークがある商品を優先的に選ぶことで、環境や社会により貢献できるでしょう。

覚えておきたい認証マークを四つ紹介します。

エコマーク

エコマーク」とは、公益財団法人日本環境協会が実施している認証マークです。資源採取から廃棄までのライフサイクルにおいて、環境負荷が少なく環境保全に貢献していると認証された商品に付けられます。

「環境(Environment)」および「地球(Earth)」の頭文字である「e」を人の腕に見立て、地球を優しく包み込むようなデザインが特徴的です。

文房具や制服などの商品のほか、スーパーマーケットやホテルなどのサービスも、エコマーク認証の対象となっています。

公益財団法人 日本環境協会エコマーク事務局

MSC「海のエコラベル」

海のエコラベル」は、厳格な規格に適合した水産物にのみ与えられる認証マークです。海洋管理協議会が定めており、このマークが付けられている水産物は「持続可能な漁業によって捕られたもの」と認定されたことになります。

持続可能な漁業とは、将来にわたって水産物を捕り続けられるよう、水産資源の状況や時期、周辺の海洋環境などに配慮して行われる方法のことです。

水産資源は無限ではないからこそ、このような方法で捕られた水産物を購入し、応援する必要があるといえるでしょう。

ホーム | Marine Stewardship Council

FSC「森のエコラベル」

森のエコラベル」は、森林管理協議会が実施する認証マークです。適切な管理が行われている森林の木材を使った製品であることを示しています。

法律や国際ルールを守ること、豊かな森林の自然環境を守ることなど、環境・社会・経済に配慮した10個の原則に対して、森林が適切に管理されているかどうかを審査しています。

森林だけでなく、製造・流通・加工の過程についても審査があり、総合的な判断で受けられる認証です。

木材の加工製品のほか、ティッシュやトイレットペーパー、紙パックなどの紙製品に対して付けられています。

Homepage (fsc.org)

国際フェアトレード認証

国際フェアトレード認証」は、世界的にも認知度が高く、エシカル消費の参考として覚えておきたい認証マークです。

原材料の生産から、完成品になるまでの過程において、国際フェアトレードラベル機構が定めた厳格な基準を守っている証明になります。

この認証で設けられている基準は、生産者に対して適正な価格で長期的に取引することや、生産者の労働環境と労働条件を守ることなどの五つの項目です。

認証マークが付いた商品を購入することで、小規模生産者や、労働者の保護につながります。

コーヒーや果物、オイルシードなどの食品のほか、コットンや花、木材など、さまざまな生産物が対象です。

フェアトレードジャパン|fairtrade japan|公式サイト

エシカル消費で世界の未来を変えよう

自分だけが満足すればよいという気持ちではなく、社会や環境のことも考えた消費行動が「エシカル消費」です。一人の行動は決して大きなものではありませんが、それが他の人にも広がれば、世界の未来を変えることにつながります。

全ての消費行動について、エシカルを意識するのは難しいかもしれません。商品の生産過程に目を向けたり、認証マークの商品を優先的に選んだりすることで、少しずつエシカル消費を取り入れていきましょう。

文・構成/HugKum編集部

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 12 つくる責任つかう責任

SDGsとは?

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