不登校経験のある教授が語る。GW前から注意しておきたい「不登校」の対策と心構え

緊張の糸が切れる5月の連休前後は、タイミング的にも子どもが不登校になる可能性が高いと言われています。そこで、わが子の不登校に対する親の備えを、立命館大学大学院教職研究科・伊田勝憲教授に取材しました。

不登校の生徒は100人に4人くらい

そもそも今、不登校の子どもたちはどの程度いるのでしょうか。

伊田勝憲教授によれば、小学校の高学年から中学生にかけて、数が多い傾向にあるとの話でした。

文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より

 

また、小・中学生1,000人当たりに何人程度の不登校生徒がいるかをまとめた文部科学省の資料を見ても、小学生より中学生の不登校の生徒数が多いと分かります。

文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より

 

不登校の生徒数の推移を見ると2016年(平成28年)あたりから一気に増えていて、2020年(令和2年)の段階で、中学生1,000人の中で不登校の生徒は40人くらい、100人に4人が不登校児といった感じです。小学生は、1,000人当たりで10人くらい、100人に1人程度です。

中学生のほうが多いようですが、小学生の子どもを持つ親も人ごとではないですよね。

いじめ、ストレス…不登校の発生要因は複雑に

不登校は、どうして起きるのでしょう。

素人考えで言えば、いじめが学校であって、そのいじめが原因で子どもが学校へ行かなくなる印象があります。

もちろん、いじめも原因の1つです。文部科学省が行った『不登校児童生徒の実態調査』によると、「いじめが学校を休むきっかけのひとつになった」と考える不登校の児童・生徒が全体の25.2%、4分の1も存在しています。

しかし一方で、発生要因が実際には複雑、いじめとの関連も必ずしも明確ではないとの考え方もあるようです。

立命館大学の運営するウェブメディア『shiRUto』にも書かれた伊田教授の言葉によれば「最後のわら一本」という例えがあるそう。さまざまな苦しさやストレスが複合的に重なり、ほんのわずかなきっかけが最後のきっかけになって、不登校に至るケースが一般的に考えられるとのこと。

親としての心構えは?

では、この不登校の問題に対して、親としてはどうすればいいのでしょうか。伊田教授によれば、

  1. 弱音を吐ける環境づくり
  2. 動じない親の姿勢

が大事だと言います。

「しんどい」「宿題をやりたくない」「クラスメイトとうまくいかない」といったネガティブな感情を子どもが吐き出した時、その言葉を親が受け止められるか、弱音を吐ける環境が家庭内にあるかが重要みたいです。「そんな弱気なことを言うな」などと親が否定してかかる、弱音を吐かせない環境は、ちょっと心配だとの話ですね。

また、わが子に不登校の気配が見えると、多くの親が動揺すると思います。伊田教授も言うように「うちの子がなぜ?」とパニックに陥りがちですよね。しかし、子どもが学校に行きたくないとサインを出した時こそ、動じない、弱音を吐かせてあげる家庭環境が、結果として不登校を予防してくれるケースもあるみたいです。

不登校は「メタ認知能力」の成長の証

とはいえ、なんだかんだで「動じてしまう」親の本音はどうすればいいのでしょうか。この点については、不登校に対するネガティブな印象を、親本人が根本からあらためるといいのかもしれません。

伊田教授によれば、不登校は成長の証しだと言います。

小学生でも高学年、さらに中学生になると、自分の考え・記憶・判断を客観的に認知する力(メタ認知能力)が伸びてきます。

他人・社会に対して批判的な考えができるようになると、その批判の矛先は自分自身にも向かうので、自己肯定感が下がるケースも少なくないのだとか。この自己肯定感の低下が、不登校の原因の1つになる場合もあるのですね。

しかし、このメタ認知能力の伸びこそ成長の証しだと伊田教授は言います。むしろ、このメタ認知能力こそが、不登校を克服する原動力になってくれるケースもあるのだとか。

わが子には特異な才能があるのかも

さらに、伊田教授によると、特異な才能の備わった子どもの場合、その能力に由来する生きづらさを感じて学校に通えなくなるケースもあるとのこと。確かに、芸能などの世界で活躍する人の多くが、子ども時代を振り返って、学校が嫌いだったと発言するケースも思い当たりますよね。

いじめ+不登校による重大な事態も確実にある一方で、不登校は時に、成長・発達の証し、子どもが持っている特性や特徴に気付くチャンスにもなってくれると伊田教授は言います。

その意味で、子どもが不登校になった(なりそうだ)からと言って、反射的にパニックに陥る必要はないのですね。

学校・家庭とも異なる第三の居場所が必要

それでは、実際にわが子が不登校になってしまった場合、どうすればいいのでしょうか。

もちろん、不登校は発生要因が複雑と言われています。機械的に何かをすれば即解決といった簡単な話ではありません。

ただ、ご自身も不登校の経験がある伊田教授の場合、鉄道写真を一緒に撮りに行く趣味の仲間たち、言い換えると、学校とも家庭とも異なる第三の居場所の存在が、立ち直るきっかけになったと言います。

必ずしも一般化はできない問題ですが、子どもにとってそんな第三の居場所を大切にしてあげるといった工夫も、親としては日ごろから心掛けてあげるといいのかもしれませんね。

協力

伊田勝憲 先生|立命館大学大学院教職研究科

1976年、北海道札幌市生まれ。小学5年から中学1年にかけて約2年間、自身も不登校・ひきこもりを経験。北海道教育委員会スーパーサイエンスハイスクール運営指導委員(札幌啓成高校)。学校心理士。

あなたにはこちらもおすすめ

子どもにも五月病ってあるの?新学期は子どもの心の不調に気づく8つのサインに注意を【専門家監修】
子どもに五月病? 新年度は注意が必要! 五月病とは5月ごろに見られる一過性の心の病気で、発症年齢は18歳ごろからです。 「新しい環境...
「朝、起きられない」や「立ちくらみ」は子どものSOSかも!不登校にもつながりやすい「起立性調節障害」とは
女の子に多い起立性調節障害。10~16歳ごろに発症することが多いです 起立性調節障害は、自律神経の調節の乱れによって起こる病気です。約半数...

参考:
 【不登校の原因は?】① 不登校経験者の教授が教える「予兆の捉え方」 – shiRUto
 【不登校の原因は?】② いじめと不登校の関連データに見る落とし穴 – shiRUto
令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について – 文部科学省
 不登校・子どもの自殺、GW明け注意「緊張の糸切れる」 – 朝日新聞

文/坂本正敬 写真/繁延あづさ

編集部おすすめ

関連記事