どちらも小さな子どもから使える、身近な画材!
我が家は一人っ子なので、娘が小学校入学する際に必要な教材を一式購入しました。購入品の中には似たような画材「クレヨン」と「パス」が入っていて、疑問に思いながらも1本ずつ名前をつけて学校へ持たせました。
娘は「クレヨン」と「パス」を学校の図工の時間に使っています。
小学校学習指導要領の図画工作編(図工のカリキュラムの基準を決める、国から提示される書類)に小学校1・2年生には「身近で扱いやすいものを用いる」と示された道具の中に「クレヨン」と「パス」が明記されていることからわかります。また、3・4年生では水彩絵の具と併用する記載があります。
もちろん教科書にも掲載されている画材です。
そうは言っても、やっぱりこの二つは似ていませんか?
「クレヨン」と「パス」の違いは?
結果から言うと「こんなに違う部分があるんだ!」と目から鱗でした。
得意な書き方が違うから先の形が違います!
未使用のクレヨンとパスを見比べてみてください。
- クレヨンの先は鉛筆形
- パスは全体が円柱形
クレヨンは先端が鉛筆のようにとがった形をしているのに対して、パスは先をとがらせない円柱形をしています。この形の違いには意味があって、クレヨンは線を描きやすいように鉛筆のような形、パスは面を塗りやすいように円柱形としているそうです。それぞれの特徴を「クレ線・面パス」と語呂合わせで覚えるとわかりやすいとも教えていただきました。
でも、クレヨンで面を塗ることはできますし、パスで線を書くことはできます。あくまでも「画材が得意とする使い方がそれぞれにある」程度に考えてください!
かたさが違う
先ほどの特徴は原材料の配合によって生み出されます。「クレヨン」と「パス」はどちらも「顔料(色の元になる)+ワックス(棒状に形作る)+オイル(色を定着させる)」で出来ています。
・「クレヨン」はワックスを多く含むため、パスよりややかため
・「パス」はオイルを多く含むため、クレヨンより柔らかめ
になります。
かたさの違いは表現の違いにも現れます。
クレヨンとパスをそれぞれ使い、1色目を塗った上から2色目を塗ってみます。すると、クレヨンは重なり合う(重色)ように表現できるのに対して、パスは色が混ざり合った(混色)新たな色として表現されます。
これは教科書にも掲載されている「ひっかき絵(スクラッチアート)」をすると特徴の違いが一目瞭然です。
黒以外のクレヨン・パスで下地を塗り、その上からクレヨンを塗った方はクレヨンの黒で、パスを塗った方はパスの黒で塗りつぶします。
割り箸や竹串を使って黒をひっかき削ると、クレヨンでは下地の色がはっきりと出てきます。クレヨンは下地の層と黒の層が重なり合っているため、黒を削り取ると下地の色が姿を表すからです。
一方、パスで同様のことをすると、下地の色が全体的にくすんだ状態で姿を表します。これは、黒のパスで塗りつぶしている時に、同時に色が混ざり合う「混色」が行われるからなのです。
この特徴についても優劣をつけるのではなく、お子さんの表現したい方法がどちらなのかで画材を選ぶのが大切です。
パスの混色を楽しむ
なお、パスの「混色」を有効に使った例を見せていただきました。「ぼかし絵」という表現技法です。
パスの似ている色を隣り合わせにするよう色を塗り、境界線を指で擦って描いた作品です。「パス」はこんなに幻想的な作品が描きやすい画材でもあります。
紙以外の素材に描ける?描けない?
クレヨンとパスは、ポリ袋に描くことができるのかに挑戦してみました。
クレヨンでは擦り付けてポリ袋に描けたのに対し、パスでは何度擦っても袋に色が乗らず、描けませんでした。
クレヨンは
・ペットボトル
・牛乳パック
・卵のパック
・色セロファン
・ガラス
・アルミホイル
・ビニール袋
・発泡スチロール
・食品トレイ
といったさまざまな素材に描くことができるので、工作遊びの時、色塗りにも使うことができます。
また、ツルツルした素材(ペットボトル・ガラス・ビニール袋など)に書いた場合は、布やティッシュペーパーで拭いてリセットすることもできます。お子さんの思いや考えが変わった時、または失敗してしまったと思った時に「やり直し・作り直し」ができるので、失敗を怖れがちなお子さんにとっては「やり直せる」ことが安心感へと繋がるのではないでしょうか?
クレヨン・パスの豆知識
「はだいろ」から「ペールオレンジ」へ
親世代が子どもの頃は「はだいろ」と書かれた色がありましたが、ぺんてるでは1999年9月頃の生産よりクレヨンや絵の具などの色名を「ペールオレンジ」という表記に変更しました。メーカーによっては「うすだいだい」と表現している場合もあります。
これは色を塗る時に画一的な見方にとらわれずに自由に表現してほしいという観点からメーカー側で変える取り組みを行ったのだそうです。確かに我が家の娘も保育園でお絵描きをするようになった頃から「ペールオレンジ」と口にしていたので、現代の子どもたちには耳に馴染んだ名前なのですね。
片付ける時に一手間加えて
絵を描こうと塗り始めたその瞬間、別の色も一緒に紙についてしまった経験はありませんか? クレヨンやパスに、重ねて塗った時に他の色が先端についてしまうことがあります。なので、クレヨンやパスを片付ける時には先端を見てみましょう。もし、別の色がついていたら布やティッシュペーパーできれいに拭き取ります。
また、片付ける時には元の部屋(裏ぶたなどに書かれている色の名前の順)に戻すことで、別の色と混ざることを防ぎ、ストレスなく使い続けることができるようになります。
違いがわかるとより楽しめます!
同じように見えて、特徴の異なるクレヨンとパス。得意な表現方法を知ることで創作活動がより楽しくなります。夏休みも近づいてきて、ご自宅でお絵描きをされる機会も多くなります。この記事を参考に親子でクレヨン・パスを楽しく使ってみてくださいね。
お話を聞いたのは…
実際に画材製造のお仕事も担当されていた西條さんに教わりました。
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文・構成/ふじいなおみ