子どもの気質には5つのタイプがある
「気質とは、持って生まれた個性のようなもので、成長しても本質的に大きく変わることはないもの。個性と受け止めて、育児に取り入れてほしいですね」と話す竹内先生。
竹内先生によると、気質はおもに5つのタイプに分けられるといいます。気質によしあしはありませんが、ときに気質が育てにくさとして現れ、困りごとや心配のタネとなるのです。
お子さんがどのタイプに属するか、また、「気質タイプ別子育て」について詳しくは、この記事の最後をご覧ください。
1. エンジェルタイプ……愛嬌たっぷりで人気者だけど、のんびり屋
2. テキストタイプ……知的で優等生だけど、ませていて理屈っぽい
3. アクティブタイプ……好奇心旺盛で行動派だけど、落ち着きがない
4. デリケートタイプ……感受性豊かでやさしいけれど、引っ込み思案
5. ネガティブタイプ……粘り強く努力家だけど、こだわりが強い
不安を感じやすい「ネガティブタイプ」はどんな子?
ネガティブタイプ チェックリスト
あてはまる項目が多いほどネガティブタイプの気質あり!
□ 不満を訴えるようにのけぞって泣く
□ 人見知りが激しく、パパやママに抱っこされるのすら嫌がることがある
□ いったん泣き出すと、1時間でも泣き続ける
□ 何をしても「イヤ、イヤ!」ばかり言って手がつけられない
□ 不快感ばかり主張して、あまり笑顔を見せない
□ こだわりが強く、気に入った玩具やタオルを手放さない
ネガティブタイプの特徴
新しいことに不安を感じやすいタイプで、経験のないことや気に入らないことを避ける気質があります。
こだわりが強く、主張を曲げない、頑固な面も目立ちます。しかし1つのことに集中すると粘り強く、才能を発揮することもあります。
相談 不安で喜怒哀楽が激しく、思い通りにいかないと泣き叫んで暴れます
【ネガティブタイプ・7歳女の子】ママのお悩み
7歳の娘についての相談です。
ネガティブタイプだなと思うのですが、気が強いのに繊細。喜怒哀楽の差が激しい、やさしい気持ちも持ち合わせているのに、負けず嫌いな面があります。
絵が思うように描けない、ピアノで何度も間違えてしまう、など歯がゆいことがあると泣き叫んで暴れ、ひとりで怒っています。また、学校も不安があると行きづらそうにしたり、弱音を吐いたり泣いたりします。
寝るときも、母親である私のお腹か、父親の耳たぶをさわりながらでないと眠れません。
学校の授業は普通に受けており、成績も理解力も普通です。しかし、何か予期せぬ出来事が起こったときに臨機応変に対応する力がなく、起きるかもしれないトラブルを勝手に想像しては常に不安がっています。
この子の気質だと思い、地道に対応していくのか悩んでいるところです。
ネガティブタイプのお子さんは、気が強く見えるけど実は繊細
竹内先生
「すごく繊細で、いろいろなことを気にするのですが、一方で感情表現が激しいのがネガティブタイプの主な特徴です。
ドキドキして不安なときは『イヤだー!』などと強い言葉で主張するので気が強く見えます。しかし元々は感覚過敏で繊細で喜怒哀楽の差が激しいといえます。
もちろん、やさしい気持ちも持ち合わせています。負けず嫌いでこだわりが強いので、一度思ったことは頑なに曲げません」
泣き叫んだりするのは向上心が強いから
竹内先生
「泣き叫ぶのはなぜかというと、向上心が強いからです。これはデリケートタイプのお子さんにも言えるのですが、感情のコントロールの仕方を教えてあげることが必要です。
相談例では、ピアノを間違えて悔しくてたまらなかったのでしょう。こんなときは『間違えちゃって悔しかったのね』と親が言葉にして教えてあげ、子どもの気持ちが落ち着くまで体をやさしくトントントンして、気がしずまった後、解決策を一緒に考えてあげることが大切です」
子どもが自分の思いを言葉にしやすいように
竹内先生
「家庭で親子の会話が少ないと、コミュニケーションが不足してしまいます。
親子の日常会話が『やめなさい』『やだ、やりたい!』などと断片的になりがちです。
『こんなことをやりたいのね。お友だちがやっていたからやりたくなったのね? でも今は時間がないね、いつやろうか?』などと、意識して親子の会話を増やしていくと、子どもも自分の思いを言葉にしやすくなると思います」
子どもの話を聞き、寄り添ってあげる
竹内先生
「さて、ピアノの課題を間違ってしまうということは課題が難しすぎるのではないでしょうか。課題設定を下げて、間違わずにクリアできるレベルのものにするといいのでは?
学校に行きづらそうとのことですが、弱音が吐けているということですね。子どもが『学校がイヤだ』『行きたくない』などと言うと親は動揺してしまいますが、そういうことをちゃんと親に言えているのは良いことだと思います。
ただ、泣いて学校に行けないようだと心配ですが、泣くことによって感情がスッキリしているのだったら問題ないと思います。
ですから、どんなときもまず子どもの話を聞き、問題があれば『どう解決しようか。ママやパパにできることある?』『先生に言ってみようか』『手伝ってあげようか』などと寄り添い、解決策を一緒に考えてあげるといいですね」
スキンシップは多めでも問題ありません
竹内先生
「親の耳たぶをさわったりするのはまったく問題ないことです。ネガティブやテキストタイプのお子さんは耳たぶや髪の毛をさわることがよくありますし、アクテイブタイプやエンジェルタイプは『背中を掻いて』などと、さわってもらうことを好みます。
『大きくなっても止められなかったらどうしよう?』と不安かもしれませんが、無理にやめさせなくてもいずれ離れていきますから(笑)。
感覚欲求といいい、物をさわっていると心が安定するという心理の表れなのです。ただ親が不快になるほどである場合は、ぬいぐるみやタオル、音の出るボールなどの代替品を与えるのも良いかと思います。
お子さんは学校にきちんと行けて成績も問題ないとのことで、社会生活は問題なく送れていますからご心配なく。しばらく寄り添ってあげるようにすれば大丈夫だと思いますよ」
「気質タイプ別子育て」で子育てをラクに!
子育てするうえでのお悩みは尽きないものですが、ネガティブタイプのお子さんの多くは、敏感なだけに人の気持ちがわかってやさしいという長所があるといいます。
子どもの気質に合った育て方をして、その伸ばし方を知ることで、育児はもっと楽になるはず。
そもそも、竹内先生が「気質タイプ別子育て」の研究を始めたのも、あまりにも多くの親御さんが、子育ての悩みを「自分のせい」だと思い込み、悩んでいるのを知ったことからでした。
「子どもが泣いたり、わがままを言ったりするのは親のせいではないし、困ったことの裏返しは才能でもあるので、正しい接し方を知ってほしい。子どもの気質を理解して子どもの良いところを見ることができれば、自分自身や周りの大人のことも理解できるようになる」と竹内先生はいいます。
また、「困った」事態に備えることができるので、親のイライラや不安も軽減されます。
お子さんの気質タイプや、竹内先生の「気質タイプ別子育て」については、HugKumの他記事もどうぞ参考にしてみてください。
参考書籍/『0歳から6歳までは 生まれながらの「気質タイプ別育て方」でラクになる!』 (KADOKAWA)
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記事監修
竹内エリカ先生
お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。20 年にわたって子どもの心理、教育、育成について研究し、これまで約 20,000 人、子どもから大学生までを指導してきた。あそび学を専門とし保育・幼児教育関係者への講演活動や執筆、ラジオパーソナリティーなども務める。
イラスト/よしだゆう 文・構成/村重真紀