コロナ禍、家族でポルトガルに移住。迷った末に現地の小学校に息子が通うまで【リアルタイム海外子育て】

オンラインの発達による働き方の変化や、家族・人生の多様性志向から、海外に移住して子育てをする人も増えています。実際に海外で暮らしながらの育児は、どんな問題に直面するのでしょうか。
今年ポルトガルに移住し、9月から現地の小学校にお子さんを入学させることになった小林記者から、リアルタイムレポートをお届けします。

はじめまして。フリーライターの小林悠樹です。私は2022年春、ユーラシア大陸最西端の国「ポルトガル」に妻と当時5歳の息子と、家族3人で移住しました。

今回は私の実体験をもとに、ポルトガルでの「子どもの学校選び」についてご紹介します。

住む場所を決めずにポルトガルへ渡航

ポルトガルへの移住が決まっても「どの街に住むのか」は決めていませんでした。

というのも、実は私も妻も、それまでポルトガルを訪れたことは一度もなかったため、実際に自分たちの目で街の様子を見てから、住む場所や息子が通う学校を決めたかったからです。

また、私はフリーライターとして働いているため、業務はすべてリモートで行っています。そして妻も編集者で基本リモートワークなので、夫婦ともに場所を選ばずに仕事ができます。そんな状況もあり、「息子の学校が決まってから、住む場所を決めよう」と考えていました。

ポルトガルへ渡航したのは20224月。ポルトガルは9月入学のため、5か月後には息子の小学校入学が控えていました。

息子の小学校を選ぶうえで、日本にいるうちに私たちなりにできることはやっていました。たとえば、ネットで雰囲気が良さそうな小学校を調べて、連絡をとり、ビデオ電話でお話を伺ったり、学校訪問の予約をとったりしました。

(ポルトガルと日本は9時間<サマータイム時は8時間>の時差があるので、深夜3時に眠い目をこすりながら、夫婦そろってZoomで話を聞いていました)

入国後に住む街さがし&学校訪問をスタート

ポルトガル到着後は1か月ほどかけていくつかの都市をめぐりながら、各学校を訪問しました。

▲中部地方のアヴェイロは「ポルトガルのヴェネチア」と呼ばれている

事前に連絡をした学校は延べ15校ほど。典型的なインターナショナルスクールから、一般的な私立、シュタイナー系の学校までさまざまです。

連絡した学校のうち、ポルトガル入国後に訪問したのは6校。首都のリスボンをはじめ、リスボン郊外や中部地方のコインブラ、アヴェイロという街に足を運びました。少々大変ではありましたが、学校の様子や街の雰囲気を実際に見ることができたので、大きな収穫を得られたと感じています。

▲シュタイナー学校を見学した時の一枚

悩んだ末に選んだのは、現地の公立校

私立やインターナショナルスクールの選択肢も捨てがたかったのですが、我が家は最終的に現地の公立校に行かせることにしました。現地校にしたのには、いくつかの理由があります。

公立校の環境が私立やインターに劣っていないように思えた

複数の学校を見学した結果、公立校も学習環境としてとても優れていると感じました。たとえば、ポルトガルの公立小学校の1クラス平均人数は20人前後。日本は定員人数35人なので、生徒が少ないぶん、きめ細やかな指導が期待できます。

また、各学校の学力テストの結果がわかるサイトを見ても公立校が上位に複数ランクインしており、総合的に判断した結果「公立でもいいのではないか」と考えました。

地に足をつけて現地語を学んでほしかったから

私たちは駐在員ではないので、滞在期間は特に決まっていません。よほどのことが起きない限り、当面のあいだはこの国で暮らすつもりです。ポルトガルに住むからには、子どもにも国語であるポルトガル語を学んでほしかったのも大きな理由です。

現地校でも英語を学べる

ポルトガルはEUのなかでも英語力の高い国として知られています。リスボンでは半数以上の人が英語をしゃべる印象で、地方都市でもそれなりに英語が通じます。

特に英語ができる人は若い人に多く、近年は国を挙げて英語力向上に力を入れていることがわかります。そのため、あえてインターに入れなくても現地校でしっかりとポルトガル語を学び、その後小学校3年生から始まる英語の授業で「第二外国語として英語を学ぶのでも遅くないのでは」と考えました。

学費が安い

「教育費」は、子どもを育てるすべての親に共通する悩みです。公立小学校だと学費がかからない点も理由のひとつでした。

やはり無料というのは大きいです。そのぶんサッカーやスケボーなどの習い事をしており、息子も楽しそうにレッスンに通っています。

▲人工芝という贅沢な環境でサッカーができるのもポルトガルならでは!?

ちなみに、ポルトガルのインターや私立の小学校の学費は以下のような感じ。日本よりも少し安いか同等の水準でしょうか。

ポルトガルの学校の月額学費(登録料、給食費などは別途)

リスボンにあるイギリス系インター 約500ユーロ
ポルトにあるフランス系インター 約400ユーロ
リスボンにあるシュタイナー学校 約455ユーロ
リスボンにあるモンテッソーリ学校 約550ユーロ

ポルトガルの公立学校はオンラインで申し込む

ポルトガルの義務教育は18歳までです。

日本の教育課程は小学校・中学校・高校の「6年・3年・3年」。一方、ポルトガルは1ºciclo2ºciclo3ºcicloSegundárioの「3年・3年・3年・3年」の区分けになっています。

最初の9年間は基礎教育に位置付けられ、最後の3年が日本でいうところの高校に該当します。

▲ポルトガルの公立学校は登録ポータルサイトから申し込みができる

公立小学校に入学するには登録が必要なのですが、これはウェブ上のポータルサイトから入学申し込みができます(学校窓口でも可)。申込時に希望する学校を5つ提出することができ、そのなかで実際に通うことになる学校が割り振られる仕組みです。

日本だと学区がありますが、こちらは基本的に親が車で送り迎えをするため、家からの距離に関係なく、わりと自由に学校を選べます。

また、公立は教科書も学費同様に無料です。通う学校が決まったあとに、メールでバウチャーが届き、それを本屋に持っていくと教科書を注文できる流れになっています。

なお、学校が始まっても教科書が届かないというケースも多いようで(我が家も学校開始4日後に教科書が手に入りました)、そのあたりは外国ならではかもしれません。

1か月、公立小学校に通ってみた感想

現地の小学校に息子が通うようになってからまだ日は浅いですが、授業のサポートをしながら親子で日々奮闘しています。

入学2週間ぐらいまでは「学校に行きたくない…」と口にしていましたが、最近では徐々に息子も学校生活に慣れ、楽しむ余裕が出てきているようです。

▲学校から帰ってきたらポルトガル語の宿題をやるのが息子の日課

インターでは、先生が英語を話せるのはあたりまえです。私立も、ほとんどの先生が英語を話せるでしょう。しかし、現地校だと英語が話せない先生が少なくありません。

息子のクラスの担任はポルトガル語のみを話すため、やりとりはすべてポルトガル語です。

私も妻もポルトガル語は勉強中のため、連絡事項は先生に直接メールをしたり、子どもに手紙を持たせたりするなど、工夫してコミュニケーションをとっています。

大変なことも多いですが、現地校を選んだ結果、息子だけでなく親も海外でのサバイブ能力が磨かれているような気がしています。

記事執筆

小林悠樹(こばやしゆうき)| フリーランスライター・編集者 
神奈川県藤沢市生まれ。2016年に家族3人で宮古島へ移住し、2022年4月にポルトガルへ渡航。著書に『移住にまつわる30の質問「地方、田舎に住みたい」そんなあなたの疑問解消します。(Kindle版) 」がある。http://yuki-kobayashi.com/profile/

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