小学4年生では「何倍か」を考える問題が重要
計算が複雑になる4年生
さて、4年生の算数を見てみましょう。4年生では2桁の割り算や小数の計算かけ算・割り算も入ってきます。この時期は
「計算が複雑になってミスをするようになった」
「考え合っているいるのに計算ミスをする」
そんな声が聞かれるようになる頃ですね。計算ミスは「子ども自身がどの計算でミスをしてしまうのか」を知ることが大切です。とはいえ「どこを間違えたのか、自分で探しなさい!」では算数が嫌いになってしまいます。子どもはそもそもどこをミスしているのかわからないと思います。だから、できたら親の方で間違えやすいミスを見つけてあげたいもの…。とはいえ、忙しい毎日の中でどうやって子どものミスを見つければよいのでしょうか。
計算ミスは大人が見つけて知らせる方が早い
私のおすすめは、子どもの計算に「間違えやすい計算があるかどうか」を見てみることです。計算問題であれば間違っている問題を見て、どこの部分で計算ミスをしたかをたり、文章題であればテストの端にクチャっとしたひっ算を見てみる。私は生徒の丸付けをするときに、ひとりひとりの小さな計算メモをいつも見ていたのですが、そこには生徒のミスのクセが出ているんです。
それが分かれば「この繰り下がり苦手?」と気づかせてあげることで、子どもの注意力を上げる作戦をしています。もし「-9」が苦手なら、「-9」がある計算カードを作って渡すとか、九九の7の段が苦手なら「7の段を書いた九九カード」を渡すなど。忙しいなかで子どもの計算ミスをフォローするのは大変かもしれませんが、苦手を意識させることが一番の近道だなと、長年の経験から感じています。
「倍」を考える取り組みでいっそう「割合」に近づいていく
4年生の割り算では、いよいよ割合に近づくテクニック――「何倍かを問う」問題が出てきます(倍の見方)。
例えばこんな問題です。
もう一つ問題を見てみましょう。
このふたつの問題、割り算のやり方を習っていれば計算はできると思いますが、「答が分かった」と安心して終わりにせずに気に留めておきたい問題です。実はこの問題、電柱の高さをもとにしたときに何倍かを考える、つまり割合の考え方が入っています。問題文を読んで「もとになる数はどれなのか」を子どもは答えられるでしょうか。
「何倍か」を求める問題が割合につながるということを、子どもが知っておく必要はありませんが、「どの数をもとにしているの?」「何が何の何倍なの?」と聞いて、答えられるかどうかを確認しておくことはとても重要です。すっと答えられれば、割り算の式の意味が分かっていることになるし、5年生の割合で「もとになる数」が出てきたときに「ああ、4年生のときに『もとになる数』がでてきてたっけ」と算数の知識がつながります。
割合はとても多様な単元で「百分率」「速さ」「濃度」も全部割合。文章題につまずく子どものほとんどが割合ができていないと言っても過言ではありません。でも「もとになる数」「比べる数」というキーワードで解くという意味では同じ種類の問題なので、5年生になる前の春休みにしつこいくらい「もとになる数」を意識しておいて損はないと思います。
四角形の性質は表を使って頭の整理を
性質の決め手となる「垂直」「平行」「対角線」の意味をつかんでおこう
もう一つ、4年生の図形で出てくる「四角形の性質」では、形だけでなく「垂直」や「平行」や「対角線」を使って特徴を表すため、混乱してしまう子どもが多くいます。この「垂直」「平行」はその先の平面図形や立体図形でずっと使っていく性質なので、ここでしっかり覚えているかを確認したいですね。まずは言葉の意味から確認しておきましょう。
四角形の仲間は性質を使って覚えるため、上の特徴があやふやになることがあります。三角形のときと同じように、親子で四角形を描いてクイズを出し合ってどんどん口で言ってみるよう促してみてください。
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4つの辺と頂点を持つ四角形
- クイズの問題にしてほしいのは下の「性質」と「形」の関係です。三角形のように「性質」を問題にして「形」を答えてもいいですし、「形」を問題にして「性質」を答えてもいいですね。
- ●一組の辺が平行……「台形」
- ●二組の辺が平行……「平行四辺形」
- ●二組の辺が並行で角がすべて90度……「長方形」
- ●二組の辺が並行で4つの辺の長さが同じ……「ひし形」
- ●二組の辺が平行で4つの辺の長さが同じで角がすべて90度……「正方形」
また、以下のような声かけも有効です。
「台形ってどんな形か教えて」
「平行四辺形って長方形とどう違うんだっけ」
「対角線の長さが同じ四角形って何だろう」
また、こんな表を使って丸をつけていくと頭が整理されるのでおすすめです。表の当てはまるものに〇をつけてみてください。
答えは下のようになります。丸のついた表をじっと見るだけでも特徴が頭に入ってきますよ。
対角線を書くことは補助線を引く準備になる
ところで、四角形の性質をしっかり思い出しておくためにはいろいろな四角形を書くのがいちばんですが、特に対角線を描くことは、のちの図形で補助線を引く技術につながることをご存じでしたか?
補助線とは、問題を解くために自分で図形に描き込んだ線のこと。中学受験の図形問題でよく出てきますが、これが非常に難しい。補助線をどこに引くのかさっぱりわからないことも少なくありません。実は、対角線を引くのは多角形をいくつかの三角形という基本図形に分ける作業、つまり補助線を引くのと同じことなのです。四角形の対角線は補助線の始まりというくらい大切な作業なので、対角線の特徴を覚えておくことや対角線を描く経験を積むといい、ということを頭の隅に覚えておいてほしいですね。
いかがでしたでしょうか。小学校算数の中で大事な分岐点となる4年生の算数。高学年になると、割り算の考え方を使っていよいよ「割合」「速さ」「比」などの難しい単元が増えてきます。割り算の問題が2種類あることを意識しながら文章題を解けるようになると、高学年での割合の敷居が下がるのでぜひ頑張ってください。