平成が終わり、令和という新しい時代になりました。平成といえば、世界各国で戦争が勃発していても、日本は参戦することはなく、私たちの日常は当たり前のように守られてきました。でも、近年、アジア情勢含めて、なんだかきな臭い雰囲気が漂い始めた気がします。そんな中、ぜひ子どもたちの未来を見据えるママやパパたちに観ていただきたい映画が、本日5月24日より公開となった『空母いぶき』です。
劇中で描かれるのは、突然、他国に攻め入られ、まさに一触即発状態の危機にさらされた日本。原作は「沈黙の艦隊」や「ジパング」で知られる、かわぐちかいじの同名コミックで、絵空事ではなくなったクライシスを描く超大作となっています。
主演を務めるのは、自身も子どもを持つ親である西島秀俊。『ダンボ』の父親役や、『名探偵ピカチュウ』のピカチュウ役で、日本語吹替版の声優を務めるなど、ファミリー映画でもひっぱりだこですし、連ドラ「きのう何食べた?」でも好評を博しています。そんな絶好調男・西島さんが、『空母いぶき』のような社会派ドラマに出演されたことは、とても意義深いなと感じています。
西島秀俊と佐々木蔵之介が伝える、平和への思い
20XX年、国籍不明の漁船20隻が日本の国領海域に侵入。漁民を装った武装勢力により、海保隊員が拘束されてしまいます。そんな異常事態の中、政府は自衛隊初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とする護衛隊群を現場に向かわせます。
西島さんが演じるのは、航空自衛隊出身で「いぶき」の艦長・秋津竜太役で、クルーたちと共に、命懸けの任務に当たります。常に沈着冷静な秋津は、いかなる時も表情を崩しません。
また、秋津の同期で、副長の新波歳也役を演じたのが、佐々木蔵之介です。彼は、部下からの人望も厚い熱血漢です。「白い巨塔」でいえば、秋津が出世頭の財前五郎、新波が正義感溢れる里見脩二的なポジションでしょうか。
「戦わなければ守れないものがある」と言う秋津と、「我々は戦争する力を持っている。しかし絶対にやらない」と言い切る新波。時には意見が対立することもありますが、実はお互いに認め合い、誰よりも信頼し合っているようです。
任務中の2人は、上司と部下という関係性ですが、廊下で2人きりになると、気のおけない“同期”に戻ります。常にクールな秋津ですが、新波に2人目の子どもが生まれたことについて話す時には、思わず表情がほころびます。秋津は独身ですが、ちゃんと新波の胸の内を推し量れる懐の深さがあることが、このやりとりからも伝わってきます。そして、2人とも「平和を守る」という最大のミッションを常に共有しているんです。
西島秀俊最大の決断は「家庭をもったこと」
ちなみに、本作の完成披露試写会で、映画の内容にちなみ「人生でした最大の決断」について聞かれた西島さんは、「家庭をもって子どもが生まれたという事は僕にとって大きな出来事です。次の世代に何を残せるか、今の平和を残せるかということをより一層強く感じるようになりました」と答えていたのがとても感慨深かったです。
メガホンをとったのは、『沈まぬ太陽』の若松節朗監督ですが、映画は琴線と涙腺をダブルで揺さぶられる感動作に仕上がりました。
西島さんは、なぜこの映画が泣けるのか?という理由を改めて考えたとか。「それはきっと、この映画に関わったスタッフ、キャスト、協力してくださった自衛隊の方々、それから登場人物、全員が平和のために戦っていたということかなと。そこは、誰もブレることがなかったことが、この映画の一番泣けるところなんじゃないかなと思っています」
確かに、スクリーンからは、西島さんたちの気迫とスピリットが伝わってきます。そして、映画というエンターテイメントを通すからこそ、平和の大切さを物語るメッセージが、かなりダイレクトに刺さる気がします。
パパやママに観てほしい映画としてプッシュしましたが、小学校以上のお子さんであれば、娯楽大作として、親子でも十分楽しめる映画ではないかとも思っています。令和という時代も、ずっと平和であり続けてほしい。そんな願いも込めて、多くの方々に観ていただきたい最高の1作です。
原作:かわぐちかいじ「空母いぶき」(小学館「ビッグコミック」連載中・協力:惠谷治)
監督:若松節朗
出演:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、佐藤浩市…ほか
公式HP: kuboibuki.jp
文/山崎伸子