娘が桜蔭中学から東大、息子は麻布中学に。合格の秘訣は家庭での基礎の徹底!“隂山メソッド”を使った学習法を実践した母が、隂山英男先生と対談

隂山先生の教材を何冊もストックし、いつでも基礎力の確認ができる環境を整えてきたMさん。長女を桜蔭中高から東京大学へ、長男を麻布中高、次女を私立中学へと進学させ、家庭での学びを丁寧にサポートしてきました。今回、長女が桜蔭中学校で隂山メソッドを活用した経験談を中心に、隂山先生と対談していただきました。 

基礎は抜けるもの。できる子は復習を繰り返して底抜けをふせぐ

桜蔭の友人たちも取り組んでいた隂山ドリル

――隂山メソッドは、徹底反復により子どもの記憶力を向上させ、他の科目の学習効果も高める教育法です。桜蔭中学校のようなハイレベルな環境にありながら、一見すると基本的な隂山ドリルを取り入れるのは意外な印象を受けます。

Mさん:娘が中学12年の頃、学校でふと隂山メソッドの話題になり、「私もやってた、懐かしい」と友達同士で盛り上がったそうです。そのうち、みんなやりたくなったんでしょうね(笑)。娘が「休み時間にやる」と、妹用に買い置きしていたドリルを持って行くようになりました。

――Mさんは隂山ドリルを買い置きしていたのですか?

Mさん:はい(笑)。弟や妹も中学受験を控えていたので、長女の時と同じように、苦手克服シリーズなど隂山先生の教材を何冊もストックしていました。

先生の教材はお手頃価格で、コピーするより安い(笑)。時間も省けるので、仕事をしている私にとっては買い置きの方がいいんです。

『陰山英男の徹底反復 百ます計算(陰山英男の徹底反復シリーズ) 』(小学館)だけでも20冊は買ったんじゃないかな。

陰山英男の徹底反復 百ます計算
陰山英男の徹底反復 百ます計算

隂山先生:買い置きは衝撃ですね(笑)。でも、昔、息子さんが東大に合格したお母さんも同じことをされていたんですよ。やっぱり、先を見越して準備するお母さんの行動力ってすごいですよね。

桜蔭に通う長女にとって百ます計算は娯楽

――それにしても、休み時間に勉強って驚きました。

Mさん:勉強というより、数独を楽しむような、娯楽に近い感覚だったのかもしれません。桜蔭の授業は進度が速く、難易度も相当高いので、頭のバランスを取るために、時々基本に戻りたくなるのかなと思いながら様子を見ていました。

ぬまがさんと話す
Mさんと話す隂山先生

隂山先生:伸び続ける子は、必要に応じて、自然に何度でも基本に戻ります。

例えば、百ます計算では、一度伸びたタイムも数ヶ月休むと落ちてしまいますが、短い間隔で取り組めばすぐに元に戻せるように、基礎的な取り組みを定期的に復習すれば、抜けた部分を補い、学力を安定させられるのです。

基礎は気づかないうちに抜けてしまうもの。それをいかに防ぐかが、成長を支える鍵になります。

息子はなくしていた自信を取り戻して麻布中学に合格

――Mさん、基礎の大切さを実感したエピソードはありますか?

Mさん:息子の中学受験を思い出します。最難関の私立中学になると、56年生の問題でも大学入試レベルが出題されます。難しい問題を解ける力がある子でもつまずいたり、ケアレスミスをしたりしてしまうんです。

息子の場合、算数の解法は理解しているのに、答えがなぜか合わず、成績がなかなか上がりませんでした。そこで6年生の夏休みに、難しい問題を脇に置いて、『徹底反復プレ百ます計算』(小学館)で基礎を繰り返し練習したんです。

隂山先生:プレ百ますは幼児や小学校低学年が対象の教材です。それを麻布中学を目指すお子さんが使うなんて、思い切りましたね(笑)

陰山英男の徹底反復 プレ百ます計算
陰山英男の徹底反復 プレ百ます計算

Mさん:夏休みが終わるころには、ケアレスミスがなくなり、すべての答えが合うようになったんです。悲壮感なく楽しんで取り組めたのも、よかったんでしょうね。「毎回100点がとれる、楽しい、またやりたい」。息子はなくしかけていた自信をどんどん取り戻すきっかけになり、麻布中学に合格できました。

隂山先生:素晴らしいですね。息子さんは好循環を生む良い例です。

成功体験は子どもの学力を飛躍させる

隂山先生:基礎を丁寧に復習し、成功体験を積み重ねれば、自己肯定感が高まり、勉強が楽しくなる。そうすると、子どもは見違えるほど伸びるもの。

日本の教育には、ハードルを上げてそれを努力でクリアすることをよしとする風潮がありますが、これは逆効果です。問題がわかりにくくなり、できなかったときに「自分はダメだ」と感じてしまう。結果、苦手意識がこびりついて、学びの意欲が失われてしまう悪循環に陥ってしまいますから。

子どもへの1番のプレゼントは“漢字”

3人とも小学3年で6年生までの漢字を覚えた

――3人のお子さんそれぞれ、隂山ドリルを使って勉強されていたと伺いました。中でも力を入れて取り組んだことはありますか?

Mさん:漢字学習ですね。3人とも就学前から『陰山メソッド 徹底反復 漢字プリント小学校16年』(現:新版 陰山メソッド 徹底反復 漢字プリント小学校16年)をやり始めました。

新版 陰山メソッド 徹底反復 漢字プリント小学校1~6年
新版 陰山メソッド 徹底反復 漢字プリント小学校1~6年

隂山先生:そのドリルは、僕が初めて作った漢字ドリルなんです。当時、1年分の漢字を見開き2ページで覚える発想はなかったんです。それまでの「1文字を10回書いて覚える」学習法の常識を打ち壊したかった。Mさんはどのように使っていましたか?

Mさん:見開き1ページにその学年で習う漢字がすべて入った例文がありますよね。それをまず、子どもと一緒に読む。

次に1人で読ませるんです。読めるようになった漢字は自然と書けるようにもなっていましたね。

それを続けて、3人とも小学3年生で小学校6年生修了レベルの漢字検定5級に合格しました。

子どもは1回で覚える タイミングを逃さないで

隂山先生:子どもは1回で覚えるでしょう? 実は、子どもが一番漢字を覚えやすいタイミングは、新しい漢字を最初に書くときです。そのタイミングを逃さなかったんですね。

Mさん:そうですね。そして漢字の読み書きは、勉強だけでなく、日常生活でも新しい扉を開いてくれる鍵になると思います。漢字学習を早期から始め、漢字力をつけられたのは、私から子どもへの一番のプレゼント。感謝してほしいですね(笑)

Mさん:息子は恐竜が好きなので、小学校低学年の頃から『ニュートン』のような難しい雑誌を読んでいました。もちろんすべてを理解していたわけではありませんが、漢字に苦手意識がなかったおかげで、難しい文章にも抵抗なく触れられたのでしょう。興味、関心に自由にアクセスできる力があったからこそ、幅広い知識を吸収し、自分の世界を広げていけた。

娘の場合は、それが最終的に、東大合格という大きな成果につながったのだと思います。

隂山先生:Mさんは自由自在に、その時々に必要な教材を適切に選んでいく。お子さんをよく見ているのでしょう。

そして、Mさんも楽しんでいらっしゃる。この「楽」という感覚はとても大切なんです。僕の教材を使って良かったと言ってくださる方は、必ず「楽だった」「楽しい」と感じてもらえているはず。だからこそ、学びを楽しいものに変える工夫が、子どもたちの成長につながっていくのだと思います。

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陰山英男|教育者

1958年兵庫県生まれ。1980年、岡山大学法学部卒業後、教職の道へ。百ます計算をはじめ、「読み書き計算」の徹底した反復学習と生活習慣の改善に取り組み、子ども達の学力を驚異的に向上させた。その指導法である「陰山メソッド」は、教育者、保護者から注目を集め、「陰山メソッド」を教材かした『徹底反復シリーズ』は、総計770万部の大ベストセラーとなっている。現在、YouTube『陰山英男公式チャンネル』で授業や講演を公開して注目を集めている。

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取材・文/黒澤真紀

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