日本は世界第4位の移民受け入れ国
帰国して約2カ月。日本に帰ってきてまず思ったのは、
「外国の方が増えたなあ!」
ということでした。
コンビニの店員さんもチェーン飲食店の店員さんも、かなりの率で外国人。すれ違う人々の口から聞こえてくる多種多様な言語。
最初は「私自身がつい最近まで外国人(の立場)だったから、目につきやすくなってるのかな?」なんて思っていたら、実は今や日本は世界第4位の移民受け入れ国なんだそうで。ほええ、本当に増えてた!
そんな日本で見かける外国人労働者の方はみなさんは、日本語が上手で、礼儀正しくて、もう尊敬の気持ちしかありません。なにしろこちとら語学ヘタレ移民だったから、そのすごさが身にしみてよくわかるもんで…。
さらに私の場合、駐在赴任の帯同という立場だったので、外国子育ての中ではわりに楽な部類だったとも思うのです。とりあえず金銭的な不安はなかったし、トラブルや役所的手続きは夫の会社の現地採用の日本人社員さんがフォローしてくれたし、私は現地で働いていたわけじゃない(仕事はしてたけど、日本のクライアントが相手だったので)。それでも、初めての海外子育て。やはり大変だなと思うことはいろいろあったっけ…。
そんなバルセロナ生活の中で、私がよく思い出していたのは、あるひとりのママのことでした。
クラスでただひとりのハーフ、カナダ人ママ
スペインにいくまえに通っていた日本の保育園のクラスには、ひとりだけハーフの子がいました。パパが日本人でママがカナダ人。でもその息子さんの送り迎えはかなりママが担当していたようでした。そのママをここでは仮名でキャシーさんとします。
私はキャシーさんとお迎えの時間がよくいっしょになったけど、彼女は日本語は少し喋れたけど堪能というわけでもないし、私が英語がヘタだったから、挨拶程度しかしたことがありませんでした。
その保育園クラスはわりと横つながりがあり、たまに居酒屋で子連れ宴会をしたりもしてたけど、そこでキャシーさんの姿を見たことはなく…。
なので交流はほとんどないままだったのですが、一度だけ、近所の公園で偶然会ったことがありました。週末だったけど、私は夫が仕事だったので息子と2人で遊んでいて、彼女も息子さんと2人で遊びにきてたのです。
聞けば、ダンナさんは飲食関係なので週末は仕事、彼女は普段もお子さんと2人で過ごすことがかなり多いそう。うちも夫がかなり多忙で、完全ワンオペ育児みたいな生活をかなりやっていたから、人ごととは思えませんでした。
だってさ、私なんて生まれ育った日本ですらヒーヒー言ってたのに、外国でワンオペ育児ってさ!!
「気持ちわかります。本当に、ずっと二人って大変ですよね」
みたいな会話を少しして、いっしょに遊んで、別れました。
さて、その後、我が家はバルセロナに引っ越し、息子が日本人学校からインターに転校し、我が家がクラス唯一の日本人となってから、私はキャシーさんのことをしょっちゅう思い出すようになりました。
なぜかといえば、バルセロナはもともと外国人がかなり多いし、街の人も学校の先生もクラスのママパパたちも外国人にかなり慣れている。学校にもよるけど、インターじゃなくても外国人は多い。さらに、通っていたインターは、メールやアプリをものすごく取り入れていたから連絡プリントはゼロだし、PTAも全員がやらないといけないわけじゃないし、各種申し込みや購入はすべてシンプルな学校のWEBフォームからできる。だから語学が堪能じゃなくてもやっていけたわけです(このあたりは以前にこの連載で書いたのでくわしくはそちらを)。
だからこそ、思わずにいられなかったのです。
(…でも、日本の保育園って、そうじゃなかったよね?それなのにワンオペ育児が多い暮らしって、キャシーさん、本当に大変だったろうな…。ああ、あの頃の私はそんなこと全然わかっていなかったよ。ああ、キャシーさんにもっと喋りかけたりフォローしたりすればよかったなあ。どうしているのかなあ…)
そんなふうに何度も思いました。もしかしたら、私がバルセロナでいちばん思い出していた保育園ママは彼女だったかもしれません。全然親しくなかったのに。
そしてその後、日本に一時帰国したときにキャシーさんの噂を聞きました。
彼女と息子さんだけ、カナダに移住帰国したと。
離婚したという噂もあったし、離婚はしてないけど別居して帰国することになったという噂も聞きました。いまだに真相はよくわかりませんが、とにかく、保育園はともかく、小学校になると彼女には大変すぎるから、というのが大きな理由とも聞きました。
その後、キャシーさんには一度も会っていません。
実は少し前、保育園時代ママ友の子連れ宴会があり、そこに日本にちょうど来ているキャシーさんも来るかも、という話もあったのですが、結局は来ませんでした。メンバーの中に英語堪能なママがいて、キャシーさんと元ご近所さんだったから彼女といっしょに来るようなかんじだったのですが、そのママがお子さん都合で来れなくなったので、参加しにくくなってしまったのかも…。
ああ、もし再会してたら、前よりもう少しは英語で会話できたかもしれないのになあ…!
日本の小学校の外国籍ファミリー
ところで、いま息子が通っているのは近所の公立小学校。
夏休みに息子といっしょにその小学校に挨拶に行ったとき、学校の先生から大量のプリントをドカッと渡されました。
「おおう、来たね!噂どおりだね!!」と思いつつ、その形式もバラバラで、決して読みやすいとはいえないプリントの山を目の前にして、
(こりゃ、キャシーさんが帰国するわけだよ…。日本人でも読解に時間かかりそうなこのプリントの山に、どうやって外国人がワンオペ育児で対処するのさ…)
と、また彼女のことを思い出してしまいました。
でも聞けば、この小学校にもクラスに数人のレベルで外国籍のお子さんがいるとのこと。
すると対応してくれた先生が、
「両親のどちらかが日本人だったり、日本語が上手な家庭はいいんですけどねえ…。日本語が苦手なご両親だと、こっちは大変ですよ」
と軽めのグチっぽく、そう言われたのです。
(えーと、先生、私、最近までまさにその立場の外国人だったんですよ…?)
と思ってしまったし、ついそのまま口に出してしまいました。普通に流されたけど。
もちろん、日本の先生は業務が多くて大変だとよく聞くし、それで外国ファミリーのフォローまでは手がまわらないんだろうし、いろんな言語への対応って実際にハードルは高すぎるよなあ…とは思うのです。なので、これはその先生を批判したくて書いているわけではありません。
それでも、通っていたインターでは、私が言葉につまったり理解できなかったりして「えっ〜と…すいません英語がヘタで」みたいなことを言っても、いつも「ノープロブレム!!」とニッコニコの笑顔で対応してくれた学校の先生やスタッフの方をつい思い出してしまい、なんだかせつない気持ちになったのでした。
うん、本当に、ただただ、せつない気持ちになってしまったんだよ…。
こうやって考えていくと、ひとことで「海外で子育て」といっても、外国人に慣れた土地に住むのか、慣れている学校に学校に通うのか、そうじゃないのかって雲泥の差があるのだろうな。うん。
さて、最初に戻って、今や日本は世界的な移民受け入れ国という話。
だからこれからも、学校にはどんどん外国籍のお子さんが増えていくと思うのです。もちろん、日本でもインターや外国人ファミリーが多い私立にいけばそういう対応に慣れているところもあります。ただ、これだけ移民が増えているなかで、すべての外国人がそういうところに行くって、かなり厳しい。だったらせめて、もっとネット利用を導入して、言葉が多少不自由でも子どものフォローがしやすい、先生との連絡がとりやすい基本システムになっていけばいいなあ、と強く思ったのです(そのほうが日本人ママパパだって絶対に助かるしね!!)。
そして、キャシーさんとはもう会うことはないかもしれないけど、せめてそのかわりに、今後の日本の生活で外国籍のファミリーがいたら自分のできる範囲で助けていきたいなあとも思ったり…。
というわけで、これを読んでいるみなさんへ。
子どもの学校のクラスなどでいっしょになる外国人ママパパは、もしかしたら外国人対応に慣れていない街で、学校で、不安な気持ちで子育てしているかもしれないのです。だから、たまにひとこと声をかけるだけも違うかもしれません。私自身、
今回はこれを伝えたくて書いてみました。
あ、ちなみにいま息子が通ってる小学校、いい部分の発見ももちろんあったんだよ!だからこそ、そんな学校を楽しむためには、基本のシステムって本当に大事だよね、とあらためて思ったという話であります。
さて次回は、またバルセロナ生活の話に戻りまーす!
ハラユキ
イラストレーター&コミックエッセイスト。夫の駐在赴任により、2017年6月より〜2019年7月までスペイン・バルセロナ在住。雑誌やWEBなどでイラストやマンガを描いたり、コミックエッセイ書籍を出版。「東京くらし防災」(東京都)のイラストも担当。「世界の家族の家事育児分担事情から知る、つかれない家族を作るヒント」や現地ごはん情報なども発信中。おいしいごはんと宴会と祭りとお風呂屋さんが大好き。7歳男児の母。家族をテーマにしたオンラインサロン「バル・ハラユキ」も主宰中。Twitterでは日々の生活や考えたこと、instagramでは主に食いしん坊メモを発信中。
■第1回目・ハラユキファミリーのバルセロナ暮らしの概要はこちら
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