こんにちは!ロンドンでふたりの息子の子育てをしているYukoです。このコラムではイギリスの教育や子育てをしながら、日本との違いを感じる部分をレポートしていきますね。
今回は、親子で楽しんだロンドンの美術館での体験についてレポートします!
広くて子連れでも楽しめるテートモダン美術館
テートモダンでの幻想的な鑑賞体験
それはまだ、ロンドンに来たばかりの頃でした。テートモダン美術館を訪れた時のことです。
7階までが吹き抜けになっている広大なホールの壁に、巨大な太陽が出現しました。霧が立ち込め、オレンジに染まるその空間で、多くの人と「夕日」を眺める。私がその時に体験したこのアート作品は、とてもパワフルで幻想的なものでした。観客たちが当たり前のように床に寝転がり、太陽を見つめると、今度は天井一面に貼った鏡に映る自分たちと対峙し、一瞬、空間の感覚を失います。それは作品の一部に飲み込まれていくと言う不思議な体験でした。
「オラファー・エリアソン」の圧倒的作品を体験
その作品を作ったオラファー • エリアソンが、同じテートモダン美術館で、彼の27年間の作品を振り返るエキシビジョン「In Real Life」を開催中です。
デンマークで生まれアイスランドで育った彼の作品は、光や水、霧などの自然現象をベースに、幾何学的な実験を含んだものが多く、その大きな展示空間に一旦身を置くと、新しい感覚が生み出されワクワクしてきます。
作品には、環境や社会への深いメッセージが散りばめられているのですが、難しい事はさておき、まずは子供達とこの空間にどっぷりと浸かってきました。
テートモダンはテムズ河を挟んでセントポール寺院の向かいにあり、廃墟となった旧火力発電所をリフォームしたもので、とにかくスペーシャスです。エリアソンの作品展示、そして元気すぎる息子たちを連れて行くのにぴったりの美術館です。
体験型アートが楽しいエリアソンの作品
子供達が特に楽しんだ作品「Beauty」
暗闇に降り注ぐミストと一つのスポットライト。そこに生まれる虹に触れたり、違う角度から見たり、作品の一部になったり。一人一人に見える虹の景色はそれぞれです。ミストの中に居過ぎた息子たちは、ずぶ濡れになりましたが、美術館ではなかなかできない体験に大はしゃぎでした。
刻一刻と変化する壁アート「Your uncertain shadow」
カラフルな数色の光の箱の前に立ち、その影の大きさや、形、濃さの面白さを楽しみます。そのとき偶然に居合わせる他の鑑賞者とのバランスもあったりと、刻一刻と変わる壁一面のアート作品。日常で見るものとは違う自分の影の面白さに飽きることなくポーズをとる子供達。なんら複雑ではないこの仕組みに、こんなに夢中にさせられてしまうとは。
一寸先は霧…「Your blind passenger」
入り口に注意書きがあったように、一度中に入ると1メートル先は全く見えない霧の中に入ります。子供達は「なにこれ!」と飛び出したので、あっという間に霧の中に隠れてしまいました。彼らは視覚に頼れないこの空間で、声を頼りに私たちを探した後、今度は感覚を頼りに39メートルを抜け、出口に進みました。たった数分の体験でしたが、私にとっては生き方を考えさせられる深い内容となりました。
すぐに作ってみよう「The expanded studio」
エキシビジョンの最後に設置されたこのエリアは、「今すぐ何かをつくりたい」と言う、様々なエリアソンワールドを体験して研ぎ澄まされた、新しい視点と感覚の欲求を満たしてくれました。子供より大人が黙々と机から離れず作品を作っていたのが印象的でした。
鑑賞後のカフェでの時間も至福のひととき
エキシビジョンを見た後は、ロンドンらしい景色を一望しながら美術館のカフェで大好きなスコーンとコーヒーを。至福の時です。
今日の体験に興奮が冷めやらない私たちは、どの作品が一番好きだったかを発表し合って盛り上がりました。5歳と8歳そして40代の親たちがそれぞれのアート体験を共有できた、とても満足な1日になりました。子供連れに敷居が低いロンドンのアートシーン。この冬、もっともっと今日のような直感的な体験を増やしていきたいと思います。
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氏家祐子