行正流「使える英語の身につけ方②」
みなさん、こんにちは。
料理研究家の行正り香です。
前回から、「使える英語の身につけ方」というテーマでお話していますが、今回はその2回目。英語教育に関心のある保護者の方は多いと思いますので、さらに中身を掘り下げていきましょう。
今回は、小学校と中学校の英語教育についてです。学校で学ぶ英語教育が今、どんな風に変わってきているのかについてお話したいと思います。
小学3~6年生の英語教育は大きく変わる!
小学校の英語教育は今まで、5〜6年生で必修化されており、外国語活動という形で行われてきました。これは「聞く」「話す」を中心とした英会話ベースの学習で、英語に親しむこと、楽しむことが目的となります。そのため、成績の対象にもなりませんでした。
4技能を学び、必修化され成績として評価される
ところが、今年の4月から実施される学習指導要領では、小学校の英語教育が大きく見直され、3〜4年生で外国語活動が必修化、5〜6年生は教科化といって、成績として評価されるようになります。学ぶ内容も広がり、「聞く」「話す」に加えて、「読む」「書く」が入り4技能を学ぶようになります。今までに比べると、より体系的に英語を勉強するというわけですね。
単語は700語。文法も中2レベルまで
この新しく始まる小学校の英語教育ですが、私の個人的な感想としては、意外に内容がむずかしいなと思っています。小学3年生から6年生の間に、学ぶ単語は700語。そして6年生になると、過去形も出てきて、文法レベルも中1後半〜中2前半で学ぶものとなります。もちろん、今までの教科書とも異なるわけです。
レベルアップの狙いは?
なぜ、こんなに小学校の英語がレベルアップするのか。それは、単に“通じる”というレベルの英語ではなく、コミュニケーションのツールとして使いこなせる英語をめざしているからです。近年は、アジアの英語教育のレベルも上がっていますし、文部科学省が目標に掲げる英語のレベルは、決して高くないと私は思っています。中国なんて、小学1年生から英語を学ぶところも多いです。それくらい、いろいろな国が英語を重要視しているということですね。
小学校の英語で学ぶ内容
では、具体的に小学校の英語教育では、どのような内容を学ぶのでしょうか。
小3〜4で「Let’s Try1・2」の教科書
小学3年生、4年生は「Let’s Try 1」「Let’s Try 2」という英語の教科書を使って英会話が中心の学習を行います。数を数える、挨拶をする、形を覚える、日常の簡単な表現を英語で話す、そんなレベルの英会話を学びます。最初は難しい、と感じる親ごさんも多いとは思いますが、子供が興味ある内容なので、細かく学ぶというより、音声ごとまるっと覚えることを目標にすると楽しい教材です。
小5〜6で、自己紹介や夏休みの出来事を語る
ところが、5~6年生になると自分の自己紹介をしたり、過去形で夏休みの出来事を語ったりというレベルまで進みます。これは、文法の進度でいうと、中学1年の終わりの方です。ただ、小学校の英語教育は中学校とちがって、文法は教えないことになっているので、過去形という形で学ぶわけではありません。では、どうやって学ぶのか。「聞いて、声に出す」というスタイルで過去形の文章を学んでいきます。
実はこのセクションは、教える先生にとって、難しいセクションです。現在形と過去形を比べることなく、またその文法用語を使うことなく、「前にあったことを話すときはね、seeじゃなくてsawって言うんだよ」と伝えるしかありません。これで生徒に情報が定着するかな?と感じています。私の会社でも英語のコンテンツを作っていますが、ここはあえて「過去形、現在形」と文法用語を使ってポイント説明をしています。先生方は苦労しながら教えられるUNITがいくつかあるだろうと思われます。
親は英語学習をこうサポートしよう
小学校でこのような英語教育が行われると知ったうえで、親としてできることは何でしょう。私がおすすめしたいことを紹介します。
3〜6年の予習をして自信を持って発言できるようにする
ひとつは、3~6年生で学ぶ内容を予習した方がいいと思います。先ほど、5〜6年生で英語の成績がつくと申し上げましたが、英語の成績は、国語や算数のようなペーパーテストで学力が測られるわけではありません。まだテストもできていないらしく、手を挙げて大きな声で発言できる、といった学習態度が評価されるといいます。だから、子供たちには予習をさせて、授業中に自信を持って英語で発言できるようになることが望ましいでしょう。
私の監修している4技能英語ラーニングアプリ『カラオケEnglish』では、3、4年生はLet’s tryに沿った、また5、6年生は各教科書でも活用している重要例文や単語に沿ったカリキュラムを、声を出して学ぶ「小学校コース」を用意しています。こちらを活用していただくのもおすすめですし、教材や教室を選ぶのなら、以下のようなポイントに気をつけるといいかな、と思います。
「耳から聞いて声に出す」教材や教室を選ぶ
小学3〜4年生になると、「耳から聞いて声に出す」ことに力を入れている教材や教室を選びましょう。英語はただ聞いていても上手くならず、いかに声に出す機会があるかが重要です。何度も声に出して、英語をスラスラ言えるようになるまで練習できるような環境があることを確認しましょう。
6年生までに 中1の教科書が読めるようになる
5~6年生になると、英作文を書いたり、単語を覚えたりする学習が入ってきます。そのため、6年生までにbe動詞の変化、一般動詞の三人称単数まではやっておきたいものです。理想としては、6年生のときに中1の内容を、なんとなく聞き取れるようになっていることです。これくらいの進度で英語学習を進めておくと、中学校に入ってからの英語がとてもスムーズに進められると思います。
進みの早い中1の英語で挫折させない
というのも、中1の英語はとても早く進むため、挫折する子供たちが多いのです。ABCから始まり、be動詞、三単現のS、そして過去形と、英語の基礎となる部分を中1では学びます。子供たちの脳には、情報として文法が一応インプットされますが、これらの動詞をルールに基づいて、くるくる使い分けるのはむずかしい。これは、大人でも、そうですよね。
中学1年で英語の落ちこぼれになってしまうと、中2、中3の授業では単に座っているだけになりかねません。そのためには、中1で挫折しないように、小学校から中学で学ぶことを意識して英語を学んだ方が、後からお得だと思います。
英語教育の過渡期だからこそ、何を与えるかが大切
このように、学校の英語教育は保護者が学んできた時代と大きく異なっています。とはいえ、小学校の英語教育は過渡期の段階で、体系的な学習として熟しているわけではありません。だからこそ、保護者の関わりが重要になってくると私は思っています。
小さい頃から英語を学ばせる保護者の方は多いと思いますが、いずれ学ぶ小中学校の英語教育を知ったうえで、今、何を与えてあげればいいのかを考えていただけたらと思います。
行正流「使える英語の身につけ方③」では、行正さんも実践した具体的な英語学習の方法をお届けします。お楽しみに!
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行正り香
料理研究家。福岡市出身。高校時代にアメリカに留学後、カリフォルニア大学バークレー校の政治学部を卒業。帰国して大手広告代理店に勤務しながら料理本を出版。退職後は「なるほど!エージェント」を立ち上げ、料理家としても、テレビや雑誌などで幅広く活躍中。現在は英話学習アプリ開発「カラオケEnglish」なども手がける。『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』(ともに講談社)など、著書は50冊以上。また、献立づくりの悩みを解決するアプリ「今夜の献立、どうしよう?」でレシピ提案やコラムや料理のコツを動画で配信している。行正り香さんのInstagramはこちらから。
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撮影/平林直己 取材・文/神谷加代