乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「トイレトレーニング の心構え」についてお話を伺いました。
おむつを卒業できない3歳の息子。同じ年の友だちはみんなトイレに行けるので、少しあせってしまいます。
トイレトレーニングは子どものペースで
子どもがトイレで排泄できるように なる時期には、個人差があります。めばえっ子世代なら、おしっこはトイレ でできるけれどウンチはできない…… という段階の子もいるでしょう。「~歳になったからおむつは卒業」などと 大人の考えを押しつけるのではなく、 子どものペースでトイレトレーニング を進めることが大切です。
体と心、両面の準備が整うことが必要
おむつがえの必要がなくなるのは親 にとってうれしいこと。でもトイレトレーニングは、親のためにするものではありません。子どもは成長とともに活発になります。体を使って遊ぶときは、おむつより、体にフィットするパンツのほうが動きやすいもの。
でも パンツで過ごすためには、自分でトイレに行けるようにならなければいけません。トイレトレーニングは、子ども自身の生活をより楽しく快適にするために行うものなのです。
トイレで排泄できるようになるためには、体と心の準備が整う必要があります。体の準備とは、「おしっこがしたい」などと自覚できるようになること。
めばえっ子世代であれば、体の準備はできていることがほとんどです。 もじもじする、急に走り出すなど「トイレのサイン」が見えたら、さりげなくトイレに誘ってみましょう。きっかけさえ上手に作ることができれば、その1回でトイレトレーニング完了! ということも珍しくありません。
心の準備とは、トイレに行くことを身構えずに自然にうけいれられること。体の準備ができていても、トイレをこわいところだと感じていたり、おもらしするとしかられるのではと思っていたりする場合は、心の成長はあと一歩!ということになります。
失敗をしかるとかえって遠回りに
心の準備を進めるためには、楽しい トイレ環境をつくることに加え、トイレに行く行為のイメージアップ(笑) も必要です。
たとえば親がトイレに行く際、「さっぱりしてきまーす」などと口に出してみてください。「トイレ=気分よくなれる場所」というイメージをつくることは、自分の体の感覚の予習になります。
同時にパンツの魅力 もアピールを! 機会を見つけて、「パンツだとおしりすっきりだよ」「パンツってかっこいいね」など、パンツ への憧れをそそるような言葉かけをしてみてください。
トイレトレーニング中は、しからな いことも大切です。失敗してしかられると、子どもはトイレに行きたいと言 い出せなくなったり、排泄そのものが こわくなったりすることがあるからです。
失敗したときは、「だんだんでき るようになるよ」などとポジティブな声かけを。失敗しても大丈夫、という 安心感があることで、子どもは「またトイレに挑戦してみよう」という気持ちになれるのです。
また、いったんおむつを卒業したら、後戻りはしないのが原則です。外出時など、親にとっては「今日はおむつにしておきたい」ということもあるでしょう。でもそこは、子どものプライドを尊重するべきです。
どうしてもというときは事前に事情を説明し、本人が納得したら特別におむつを使ってもよいでしょう。でも子どもがいやがった場合は、おむつはあきらめて。外出先のトイレを確認しておく、早めの声か けをするなど、おもらし対策を万全にして、パンツで外出しましょう。
記事監修
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
2020年4月号『めばえ』 イラスト/原あいみ(京田クリエーション) 構成/野口久美