『ポケットモンスター』シリーズの誕生から20年余り。子どもの頃、『ポケットモンスター 赤・緑』で遊んでいたパパやママも多いのではないでしょうか? 創作絵本『ポケモンのしま』の作者、今大注目の絵本作家ユニット”ザ・キャビンカンパニー”のお二人も『ポケモン 赤・緑』世代。絵本では、そのポケモン愛が丁寧に描かれています。これまでのポケモンの絵本とは違った、新しい表現の『ポケモンのしま』。その魅力をご紹介します。
目次
ポケモンが初めての子も、ポケモン大好きっ子も楽しめる!
ある日、ゆめたくんがポケモンのしまを訪れたことから、ポケモン達とのたのしい日々が始まります。しま中を駆け回って遊ぶストーリーは、ポケモンを知らないお子様も楽しめる内容。
だからと言って、ポケモンファンが物足りないなんてことはありません。細部までこだわって描かれた絵には様々な工夫が隠れており、ポケモンが大好きな筆者の息子たち(小学一年生と4歳児)は、「わー!スターミ-がギャラドスに水かけてるー!」「こんなところにラプラスが隠れてたんだー」と、大盛り上がりしながら読んでいます。
ザ・キャビンカンパニーってどんな人たち?
ザ・キャビンカンパニーは、阿部健太朗さん・吉岡紗希さんによる、二人組の絵本作家ユニット。大分県で廃校となった小学校を制作拠点として活動しており、さまざまな表現技法を使って絵本や立体造形、アニメーションなどを生み出しています。彼らの作品の魅力は独特の世界観。二人のフィルターを通して表現されたポケモンは、愛嬌があり、色使いがキレイでとんでもなくおしゃれ! 今、大注目の若手絵本作家ユニットです。
細かく描かれたイラストはまさにアート作品!
この本の素晴らしいところは、何と言っても丁寧に描き込まれたイラスト。ポケモンだけでなく、空や海の表現や、木や草花の色使いは、読む手をとめてしばらく眺めていたい美しさです。
一方子ども達も、ストーリーとは関係のない場所に隠れているポケモンを探したり、さりげなくポケモンが進化していることに気が付いたりと、ページを戻ったり、止まったりしながら親子で時間をかけて読んでいます。
『ポケモンのしま』特設ページ内にある、“ポケモン151匹 ザ・キャビンカンパニー流の描き方”動画では、この写真のページが描かれるまでを見られます。いくつもの工程を経て描かれる様子は圧巻! この絵本がどれだけ時間をかけて作られたかが伝わってきます。
ポケモン好きにはたまらないポイントが満載!
筆者が感動したポイントがもう一つ。文章が短いフレーズをうたう様に読めて、読み聞かせがしやすいんです。聞いている子どもも心地よさを感じるのか「1日1回は読んで欲しい」と言われます(笑)
また各シーンの文章中に、そらをとぶ、ひのこ、あなをほるなどポケモンの技の名前が入っているのを発見! さらに、島が海に鏡写しになっている場面では、モンスターボールがイメージされていたり…。ポケモン好きにはたまらない、小さなこだわりがたくさんちりばめらている点も魅力!
読者対象は子どもと、ポケモンで遊んだ思い出を持つ“元・子ども”!
この本の読者対象は「子どもとその父母、そしてポケモンで遊んだ思い出を持つすべての元・子ども」。かつて子どもだったパパやママにも向けて描かれているのですね。
ザ・キャビンカンパニーのお二人は、ポケモンを見ると子どもの頃見ていた景色や友達の声、草むらのにおいがよみがえってくると言います。この本を開けば、ポケモンの世界に入り込んでいたあの頃の気持ちを思い出すかも!? 是非お子さんと一緒に、懐かしいポケモンの世界を感じてみてください。
ポケモンで遊んだすべての人と、これからポケモンと友だちになるすべての人へ心を込めて贈ります。
ザ・キャビンカンパニーならではの、独創的な描写で描かれた、新感覚のポケモン絵本です。
文・構成/寒河江尚子