みなさん、こんにちは。
料理研究家の行正り香です。
新型コロナウイルスの影響で、全国で休園・休校が続いている今、まさに家庭での教育をどうしたらいいのか、みんさんもいろいろと試行錯誤されていると思います。
今回は、コロナで学校や習い事がゼロになった今、家庭で親ができることについてお話したいと思います。
新型コロナ前は「引き算する教育」が大切だった
詰め込みすぎると子どもは爆発する
子どもが生まれると、親は「たくさん学ばせたい」「子どもの可能性を広げよう」と考え、いろいろなお稽古をやらせるようになりますよね。まだ何ができるかわからない子どもにとって、経験や教養として学習や語学、スポーツ、芸術の習い事をやらせてあげることはとても大切なことです。いつか選択する専門分野に進む前に、可能性を広げおくことができるからです。
ところが、盛りだくさんに学ばせたいと思うが故に、子どものスケジュールが大人の飲み会並みに忙しくなっているご家庭も多いのではないでしょうか。暇であることが怖い、という親の気持ちもあるかもしれません。そして、習い事が忙しすぎて、習ったことはそのまま習いっぱなし、というケースも多いといいます。パンパンに詰め込まれるばかりの子ども達は、いつか爆発してしまいます。
何を選ぶべきか、選択を迫られた経験
私も、自分の子どもが小学校高学年の頃、そのような状況に陥った経験があります。
たくさんの習い事をしていたふたりの娘ですが、塾の成績が中の上から中の下に落ちたことが、この問題を真剣に考えるきっかけでした。塾の成績を上げるためには、親のサポートが必要ですが、受験のための塾の問題はとても難しく、親が助けてあげられないこともありました。そういう状況に陥ったとき、塾の問題を解くために家庭教師をつけるのか、それとも塾をやめて娘の得意なことに特化すべきか、という選択に迫られたのです。
絞ってあげることで子どもの覚悟が生まれる
悩んだ結果、娘は塾をやめて英語と絵とピアノを選びました。もちろん塾のための家庭教師をつけることで、塾の問題は理解できるかもしれない。でも小学4・5年生になると、やりたいこと、好きなこと、憧れがはっきりとしてきます。ある時点で絞ってあげないと、子どもも覚悟ができないんですね。
長女はアートが好きで、アートで生きるんだったら英語を頑張らなきゃいけないということを本人も意識できていたので、「好きな絵と、そのための英語を頑張る」という一つの道ができました。
親が残してくれたひとつの種
子どもにどんな種を残してあげるのかという選択も、親の大切な役割です。
私自身を振り返っても、勉強が好きじゃなかった私を見て、両親からは「大学に行かなくていい」と言われたんです。それで、受験勉強はせずに、そのぶん1年間留学をさせてもらえることになりました。
私は、自分の親がぎゅーっと引き算をしてくれたことによって、たったひとつだけしか種を残しませんでした。受験をやめて、留学したことで、土の中に埋まっている種は「英語」という種だけで、他に何の種もない状況になってしまったんです。種はたったひとつになってしまった。でもそうすると、今度はそこに集中してエネルギーを注ぎ込むようになりました。
もちろん、引き算するのは勇気のいることです。みんなと違ってしまうんじゃないか、と怖くもなります。でも、エネルギー一定の法則という考え方は必ずあって、みんな1日は24時間で、みんな同じ時間軸の中で生きています。その時間をどこにインベストメントするか、という観点で考え直していく必要があると思います。
大人が投資で「この株は上がりそうだ」と思って投資をするのと同じように、子どももどこに行けばどの株が上がるかな、という発想を持ってあげるということなのです。
新型コロナの今、「枠組み」づくりが親の役目
ところが、新型コロナの感染拡大により、子どもの生活は一変しました。学校も休校、塾にもいけない、お稽古にもいけない、という生活になっています。今までは引き算することがとっても大切ですよ、という話でしたが、新型コロナの時代というのは、引き算の発想だけでは子どもの将来は拓けないと感じています。
学校に頼るばかりでは、子どもは長い休みが続くだけ
例えば、新型コロナの今、公立で授業を回していける学校はほとんどない状況です。日本人は楽観的ですが、海外からいろんなリソースを得ると、2〜3年は完全に終息しないと言われています。ということは、この先2年間、仕組みがない学校に頼っているだけでは、子どもは何も学ばないまま、長い休みがずっと続いてしまったりする可能性もあるわけです。もうそういう状況はすぐそこに、あるいはすでにそういう世界になっていると感じます。
ある意味ゼロになった現状で、「みんなと同じことをしていればいいんだ」という考え方を親が持ち続けて、何も引き算せずに、何の冒険もしなかったら、子どもの先がなくなってしまうのではないでしょうか。
親がストラクチャー(枠組み)を作ろう
新型コロナで何もなくて家にいる今、子どもの時間をどう配分しようかと悩んでいるお母さんやお父さんはいっぱいいると思います。
大切なのは、親がストラクチャー(枠組み)を作ってあげることです。簡単に言えば、親が子供の1日の時間割表を作ってあげるということ。朝起こして、体を動かして、ご飯を食べて、というのも枠組みに含まれます。
この仕組みを一回作ってしまえば、子どもはストラクチャーの中で動いていくものです。9時になったらアラームを鳴らして、「9時からはこれを見て感想を書いてね」「10時になったらカラオケEnglishだよ」と声をかけます。親がつきっきりでなくてもよいのですが、進行の確認役のリマインダーは親しかできない役割だと思います。お母さんたちは、仕事もしなきゃいけないし忙しいんですけど、リマインドだったらできるはずです。
まだ小さな子どもであれば、集中できるのは1時間に20分くらいです。それなら、20分でできるようなコンテンツを探して、枠組みに入れてあげる工夫が必要になります。
さらに小さな乳幼児のお子さんでも、規律は大事だと思います。保育園ですごいなと思うのは、お昼寝する時間が決まっていますよね。絵本を読む時間やお昼寝の時間など、時間が決まっている方が子どもは安定します。「テレビをいつでも見ていいよ」という状況では、子どもは安定しません。小さいうちから練習していくつもりで、枠組みを作ってみるといいでしょう。
枠組みに何を入れるか
点で絞る
無になってしまった状況だから、とにかく全ての教科を今まで通りにやらせようとすると、親も大変です。この期間に算数だったら計算、国語だったら漢字、英語はこのコンテンツをやってみるなど、取り組むものを点で絞っていくことが大切です。教育コンテンツもファッションと同じなので、着てみたら合う合わないがやっぱりあるものです。試着自体は親がやらせてあげなくてはいけないのですが、子どもに合うものが見つかれば、それを続けさえる仕組みを考えてあげればよいのです。
コンプリートしたい目標を作って褒める
またコンプリートしたい目標を設定してみるのも、コンテンツ選びに役立ちます。仮に、この休校が6ヶ月続くとして、6ヶ月の間、学校から送られてきた宿題プリントをこなすだけの6ヶ月にするのか、それとも『カラオケEnglish』みたいな簡単にコンプリートできる目標を設定して、挑戦してみるのか。コンプリートを目指すのであれば、ゴールから逆算して6ヶ月だと1日3つ、と取り組む量を明確にします。そして、やったら褒める、やったら〇〇していいよ、という条件を決めると、子どもは続けやすくなるのでおすすめです。
続けるコツは、枠組みをノートに書くこと
枠組みが決まったら、表やノートに書くことが続けるためには大切です。毎日ノートにやることを書いて、子どもにそれをコンプリートさせていくようにしてあげることです。「やりなさい」と声をかけているだけだと、子どもはやらないものです。
親が経営者、子どもは社員という発想
枠組みを作って取り組むという意味では、親が経営者で、子どもは社員という意識を持つとわかりやすいと思います。「適当に仕事しておいて」と言ってきちんとできる人なんて、大人でもなかなかいないし、相当優秀ですよね。子どもにも、取り組む内容を提示して、締め切りを設けること。この課題と締め切りを繰り返すことは、将来の仕事をするうえでの練習にもなります。確認して褒める、もしくはご褒美や条件を決める、ということも忘れずに行うと、より継続につながると思います。
枠組みを続けていくうえで、「課題を与える→確認する→褒める」のサイクルができれば、親も子どもも快適に過ごせると思います。
新型コロナ後の時代、どんな力が問われる?
私の娘たちはインターナショナルスクールで学んでいるので、休校になってからは、学校のオンライン授業が行われています。
朝早く、私が散歩に連れ出し、5000歩くらい外を歩きます。歩くことで血流が良くなって、1日が動き出して気持ちよく進んでいくために、これは私が娘たちに決めたストラクチャーのひとつです。
そして、8時半にgooglemeetsで学校の点呼があり、9時過ぎからオンライン授業がスタートします。リセスという休みを挟んで、授業が終わるのは15時半です。
さらに宿題の課題が出て、〆切までに提出する必要があります。今までは、笑顔で授業に参加しているだけで評価してもらえていましたが、今は違います。自分が作ったもので常に成果を出して、課題をファイルで提出しなくてはいけません。これは子どもだけではなくテレワークの大人にも言えることですが、作ったものを見せないと評価にならないのです。
生き残るために必要な3つの力
子どもたちの学びの状況や世界の今を見て、新型コロナ後の世界で、私が本当に重要だと感じたものが3つあります。
それは英語、ITリテラシー、そして専門職になれるような何かを子どもに持たせてあげることです。
自分が情報の配信者にならないと仕事ができない時代になっていることは、皆さんも感じているかもしれません。この新型コロナウィルスも一回で終わるものではないと言われています。こういう時に、どういう分野の仕事でも、自分が世界から情報を収集し、自ら情報を配信できる力が必要になります。それは具体的に言うと、文章を書いて、映像をつけて、編集して配信できるということです。
世界から情報を収集するには、英語が必要です。そしてこの機会に、子どものITリテラシーを深めるなら、情報を受け取るだけのダブレットよりも、パソコンがあった方がよりクリエイティブな力が身につくと思います。
そして、この先は、ひとつの特質したものがないと、仕事をもらえない状況になるんじゃないか、ということを親が思ってあげなきゃいけないと感じます。この子はどの専門性で仕事をしたら伸びるのか、という考え方で、この休校期間、子どもの家庭での枠組みを考えてみてはいかがでしょうか。
◆次回の第9回は、これからの社会に必要な子どものサバイバル能力についてお届けします。お楽しみに!
◆行正さんが監修している『カラオケEnglish』は全国の小学校でも取り入れられている4技能英語ラーニングアプリです。デモ体験もできるので、ぜひチェックしてみてください。
行正り香
料理研究家。福岡市出身。高校時代にアメリカに留学後、カリフォルニア大学バークレー校の政治学部を卒業。帰国して大手広告代理店に勤務しながら料理本を出版。退職後は「なるほど!エージェント」を立ち上げ、料理家としても、テレビや雑誌などで幅広く活躍中。現在は英話学習アプリ開発「カラオケEnglish」なども手がける。『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』(ともに講談社)など、著書は50冊以上。また、献立づくりの悩みを解決するアプリ「今夜の献立、どうしよう?」でレシピ提案やコラムや料理のコツを動画で配信している。行正り香さんのInstagramはこちらから。
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撮影/平林直己 取材・文/HugKum編集部