子育ての「放任主義」をどう考える? 放任主義のメリット・デメリット、上手に実践するポイントとは

子どもの行動にできるだけ干渉せず、その意志を尊重する「放任主義」での子育て。「子どもの自主性を育てる」というねらいがある一方で「ほったらかしとはどう違うの?」という疑問も抱かれがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。今回は、そんな「放任主義」での子育て事情をお伝えします。

子育ての『放任主義』とは? ママ・パパはどう考えてる?

明確な定義が存在するわけではありませんが、放任主義とは一般的に「干渉せずに成り行きに任せる考え方・方針」を指します。子育てにおいては、「過干渉・過保護」とは対極の考え方で、「子どもの行動にできるだけ干渉しないこと」そして「子どもの意志を尊重すること」がその特徴といえます。

ねらいは「子どもに考えさせ、自主性を育む」こと

子どもの行動を親が決めたり、強制したりすることには、「子どもが考えるのをやめてしまう」ことが懸念されます。放任主義では逆説的に、子どものやることなすことに親は干渉せず、子ども自身に考えさせ、自らの意志に基づき行動させます。そうして少しずつ、子どもの「自主性」を育くむことがねらいです。

Hugkum編集部では、子育てにおける放任主義についてのママやパパたちの意見をアンケート調査。以下では、その結果をご紹介の上、放任主義育児に想定されるメリットやデメリット、さらに、放任主義をうまく実践するポイントをお伝えします。

Q.子育ての「放任主義」についてどう思いますか?

さっそく、放任主義についてママ・パパたちからアンケートに寄せられた意見をご紹介します。「賛成」「どちらともいえない」「反対」の三択からお選びいただきました。

『賛成』のご意見

「賛成」は全体の8.1%と少なめの結果になりました。「賛成」派のママ・パパたちからは「自らの意志で行動を決定し、時には困ることで、学び、成長する」ことへの期待の声が寄せられています。

「自分にあった方法を身につけてほしいから」 (40代・千葉県・子ども2人)
「困って考えて学んで成長する」(40代・京都府・子ども2人)
「自分で自分のことをする、決める力を養うため」(30代・福岡県・子ども1人)

『どちらともいえない』のご意見

「どちらともいえない」は62.6%と多くの票を集めました。お子さんの年齢やタイプによっては放任主義でも構わないという意見や、放任主義には良い面と悪い面のどちらもが想定されるという意見が上がっています。

「いろいろ言いすぎてもダメだと思うし、かと言って放ってばかりも良くないと思う。」(30代・東京都・子ども4人)
「放任で伸びる子もいれば、そうでない子もいると思うので」(40代・埼玉県・子ども1人)
「何でもかんでも放任すればいいとは思わない。人に迷惑かけないなど、教えないといけない事は多いと思う。」(40代・兵庫県・子ども1人)
「高学年くらいになれば少し放任くらいがいいように思う。低学年のうちはまだ少し手をかけないといけないと思うので中間にしました。」(30代・長野県・子ども2人)

『反対』のご意見

「反対」意見は、29.3%と全体の3割程度を占める結果に。「子どもに対する責任を放棄しているのでは?」「ほったらかしとおなじなのでは?」といった疑問の声が目立ちました。

「子供に対する責任の放棄と思える」(40代・兵庫県・子ども3人)
「自主的な意見を尊重しつつ、正しい道へ修正するべきだと思うから」(50代・東京都・子ども1人)
「子供は勝手に育つものではないから。」(40代・栃木県・子ども3人)
「放任と自主性を重んじる育児はまったく別だと思うから。」(50代・兵庫県・子ども1人)

放任主義はほったらかしとは違うの?

放任主義に関してよく投げかけられるのが、「ほったらかし」「放置」とはなにが違うの? という疑問。ここで取り上げる放任主義は、あくまでも子どもが社会で生きていく上で、自分で考え、自らの意志で行動できるような自主性を育むことを目的にしています。親が子どもに無関心で、ルール違反や他人への迷惑をも許してしまうようないわゆる「ほったらかし」とは異なり、ママやパパの子どもに対する責任感と関心が大前提。行動を任せるからこそ、子どもに社会の規範を把握させておくことも必要になります。

ポジティブ&のびのび育つ? 放任主義での子育てのメリット

そんな放任主義での子育てですが、どのようなメリットがその先に期待されるのでしょうか? ここでは、想定されるメリットをご紹介します。

自主性が身につく

ここまでも何度か述べてきたように、放任主義での子育てに期待される大きなメリットは、子どもに「自主性」が身につくこと。子どものうちから自分がすべきことをつねに主体的に考えるくせをつけることで、誰かに言われなくても自ら判断し行動できるようになります。

多様な考え方を尊重できるようになる

また、幼いうちから自分自身の意志を尊重されることで、「そんな考え方もあるんだ」「そんなやり方もあるんだ」と、自分とは異なった考え方や行動に対しても寛容になっていくことが期待されます。他人を尊重できるようになれば、人間関係も幅広く良好に築いていけるはず。

ポジティブ&自己肯定感の高い子になる

自分で考え、行動し、なにかを達成した経験は確固たる自信を生み、自己肯定感をも培います。自己肯定感が高い子は、自らの個性をポジティブに捉えることができるので、他人と自分を比較せずに何事にもつねにプラス思考で向き合えます。

のびのびと育つ

子どもが示した意志を頭ごなしに「だめ」とは否定しないのが放任主義での子育て。そのため、自分の感情や考えを臆さずに表現できる「のびのびとした子」に育つことも、想定されるメリットとして挙げられます。
「のびのび子育て」については、下記の記事でも詳しくご紹介しています!

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加減を間違えることも…… 放任主義での子育てのデメリット

さまざまなメリットが期待される一方で、放任主義での子育てには、時にはデメリットを伴うことも。ここでは、想定されるデメリットをまとめてみました。

ほったらかしと勘違いされがち

放任主義のデメリットのひとつとして挙げられるのが、「ほったらかし」「放置」と勘違いされがちなところ。あくまでもお子さんの意志を尊重することが目的であり、お子さんが社会の規範に反することを許したり、親としてのお子さんへの責任を放棄するものではないのですが、理解されないこともあるようです。

加減を間違え、ほったらかしに……

また、実際に親が放任の加減を間違えてしまい、「ほったらかし」と変わらない状態になってしまうことも。子どものすることに干渉しないようにしてはいても、危険をおかしそうな場合や、他人に迷惑を及ぼし得る場合など、必要なときは適切に叱る必要があります。常に親としての責任感や子どもへの関心を抱きながら向き合いましょう。

子どもが社会の規範をストレスに感じることも

家庭では自らの行動が強制されずに育つと、時には学校や社会でのルール・マナーにストレスを感じることも。とはいえ、社会で生きていく上では、規範を理解し守ることも必要なこと。お子さんが窮屈そうにしていたら、納得できるまでじっくりと話し合ってみましょう。

のびのび子育ては「放任」と紙一重?ルールやマナーを守れる子に育てるには【平山許江先生の子育て相談】
真剣に子育てをする親だからこそ、失敗はしてほしくない、危険な目に合ってほしくないと思う気持ちが強まり、口から出る言葉は「ダメ!」「やめなさい...

放任主義での子育てを上手に実践するポイント4選

ここまで述べてきたように、メリットもデメリットも想定される放任主義での子育て。より効果的に実践するために心がけておきたいポイントをご紹介します。

社会には制約があることもしっかりと教える

子どもの行動を自らの意志に任せるには、子ども自身が社会のルールやマナーを理解していることが前提。ここまでも何度かお伝えしてきたとおり、放任する前に、社会における規範について「なぜだめなのか」「なぜこれをしないといけないのか」をしっかり説明し、納得させることが必要です。

適切に、叱るときは叱る

社会のルールやマナーに反した際や、危険をおかしそうな際など、必要なシーンでは適切に叱ることも大切。ただし、頭ごなしには叱らず、「〜をすると●●くんはどんな気持ちになると思う?」「〜をすると怪我をしないかな?」といったように、しっかりと納得できるように子どもに考えさせながら諭すことがポイントです。

信頼関係の構築が大切

親がやることなすことに干渉しないことで、子どもが「放置されている」と感じないよう、きちんと愛情表現をし、日頃からコミュニケーションをしっかりととりましょう。放任されていることを「ほったらかされている」ではなく「自分の考えが尊重されている」と捉えることができるように、親子の信頼関係を構築しておくことが重要です。

助言は惜しまずに、相談されたら一緒に考えてあげる

また、子どもが困っていたり、悩んでいたりしたら一緒にじっくりと考えてあげましょう。時には助言もしてあげることで、視野が広がり、思考もさらに深まるかもしれません。上記で述べた「親子の信頼関係の構築」にもつながるはず。

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親から子への責任感と関心があるからこそ成り立つもの

ここまで放任主義での育児について述べてきましたが、いかがでしたか? 育児における放任主義は、子に対する親の責任感と関心があるからこそ成り立つもの。放任だからこそ、ママやパパはつねに子どもがやることにアンテナを向けている必要があります。子どもの意志を大切にしながら、ときには叱り、助言もし、失敗したときにはなぐさめ、成功したときにはたくさん褒めてあげましょう。

構成・文/羽吹理美

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