子どもが生まれると、早い段階から何らかの学びをさせたいと、多くの親が思うはずです。この学びの1つが幼児教育ですが、幼児教育を行う上では、どういった点に注意すればいいのでしょうか?
目次
幼児教育とは?
そもそも幼児教育とは、文部科学省のホームページに、次のように書かれています。
<幼児教育は,目先の結果のみを期待しているのではなく,生涯にわたる学習の基礎をつくること,「後伸びする力」を培うこと>(文部科学省のホームページより引用)
いわゆる「お受験」対策の早期教育とは違っていて、知識を頭に入れる勉強よりも、むしろ学びの土台、好奇心や探究心を伸ばす教育を、幼児教育では大切にするのですね。
幼児教育は必要? 見込める効果やメリット
幼児教育が、子どもの学びたい意欲を育てると紹介しました。では、「お受験」のための早期教育や、文字や数・外国語取得などが目的ではない幼児教育を行うと、子どもにどういった効果がもたらされるのでしょうか。
非認知能力が高まる
幼児教育で育まれる能力の1つは、非認知能力だと言われています。非認知(的)能力とは、簡単に言えば前向きに生きるための心の装置とされています。言い換えると
・後までやり抜こうとする忍耐力
・人と上手にコミュニケーションする社会性
・気持ち、感情をうまくコントロールする力
になります。
教育という言葉を聞くと、どうしても文字や数、英語など、テストで能力を計れる教育に関心が向いてしまいがち。親もその手の勉強は目に見えて効果が分かるので、安心できますよね。
しかし、文字や算数、英語など、テストで点数が出る力(認知能力)はこれからの時代、どんどん自慢できなくなると言われています。テストで点数が取れる=優れた人という評価は、なくなっていくのですね。
逆に失敗から学ぶ、人と協力できる、自分で考えられる、違う価値観を柔軟に受け止められる、新しい発想ができるといった、非認知能力が高い人は世の中に必要とされるようになります。
幼児教育はまさに、この非認知能力の育ちにおいて絶大な効果があるのですね。
幼児教育にも種類はたくさん! 失敗しない選び方は
今までは、「賢い子に育てる」=「認知能力を伸ばす」の時代でした。そのままの考えを引きずって、幼児期に算数や読み書きを早く学ばせたとしても(認知能力を伸ばしたとしても)、結局は小学校からスタートした子に、後で追いつかれます。
文字や数の学び(認知能力の向上)を熱心に早くからさせるのではなく、学びの土台である幼児教育を優先すべきだと、多くの専門家も口をそろえて指摘します。
では、実際に幼児教育を始めようと思ったら、どのような点に注意すればいいのでしょうか。そもそも、日本や世界にはどのような幼児教育があって、身近な場所でわが子に何を与えられるのでしょうか。
日本発、世界発の幼児教育はこれだけある
子どもの学びの土台、学びたいという気持ちを育てる幼児教育は、例えば国外には「シュタイナー教育」や「モンテッソーリ教育」があります。
シュタイナー教育
シュタイナー教育とは、ドイツを中心に活躍した教育者が考案した、頭と手足を使った活動を通じて人間形成を図る教育です。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、学び続ける人間を育てるがモットーで、アメリカやヨーロッパの学校でも採用されています。日本にもシュタイナー教育やモンテッソーリ教育を取り入れた保育所や幼稚園、認定こども園があります。
一方で日本にも有名な幼児教育があります。
ピグマリオン
ピグマリオンとは、幼児教育家の伊藤恭氏が、長年の幼児教育の経験からつくり出した教育法です。人類が知性を獲得した歴史に順じる形で、教育を進めます。
七田式
七田式については、日本の幼児教育の草分け的な存在。子どもの生まれ持った才能を引き出すトレーニングの様子を、何かのメディアで目にした経験もあるかもしれません。
ヨコミネ式
ヨコミネ式については、学ぶ力、体の力、心の力をバランスよく育てる教育法で、こちらも知名度は高いです。
幼児教育で失敗しないためのポイントは?
こうした数ある幼児教育の中から、自分の子どもに合った教育法を探すには、どうしたらいいのでしょうか。ポイントとしては、以下の点に注意してください。
・子どもが楽しめるか
・継続できるか
・親がフォローできるか
子どもが楽しめなければ続きませんし、子どもが楽しそうにやらないと、親も忙しい毎日の中でフォローができないはずです。
幼児教育に興味がある場合は、上に紹介したプログラムを試しに触れさせてみて、子どもが楽しんでいるか、継続できそうか、親が一緒に寄り添ってできる内容かどうか、1つずつ確かめてみるといいかもしれません。
いつから始めるべき?
幼児教育は一体、いつから始めると理想的なのでしょうか? かつてHugKumが取材した汐見稔幸先生によれば、非認知能力のベースは3歳ごろまでにつくられると言います。幼いときに身につけるほど、良い影響が長く続くと言いますから、3歳になるまでの1~2歳が始め時と言えるかもしれません。
家庭で進める幼児教育のポイント
上で紹介したモンテッソーリ教育やシュタイナー教育、七田式やヨコミネ式などの教育現場が身近にない場合は、試しに自宅で始めてみる方法もあります。その際には、何に注意すればいいのでしょうか。
年齢に沿ったプログラムを与える
最も大事なポイントとして、年齢に沿ったプログラムを与える必要があります。
1歳は、「見る」「聞く」「触る」の感覚を通じて、脳に刺激を伝える。
2~3歳は、指先をたくさん動かす遊びを行い、脳に刺激を与える。例えば、シールを張る・はがす、ブロック遊びや型はめ、ひも通しなどのおもちゃで遊ぶ。
4歳以降は、高い「身体能力」が身に付き、手先も格段に器用になるため、鉛筆を持って文字を書く、数字を1から10まで書けるようにする、自分の名前をひらがなで書けるようにする。
5〜6歳になったら、1けたの足し算、引き算をやってみる、平仮名・カタカナを覚える、時計を読めるようにするなど、具体的な目標を定める。
自宅で上のポイントを意識して幼児教育をスタートしてもいいですし、こうしたプログラムを行っている場所を探して、通ってもいいかもしれません。
すき間の時間を幼児教育に活用してみる
親が継続してフォローできるかどうかが大事だと、上で言いました。まとまった時間を幼児教育に割くばかりが、親の寄り添い方ではありません。朝ごはんの時間やお風呂タイム、寝るまでの時間など、子どもと一緒に過ごす時間を大切にして、幼児教育に取り組む方法もあります。
その細切れの時間にプラスして、休日には子どもファーストでまとめて幼児教育に取り組めると理想的です。
詰め込みすぎない
逆に時間にゆとりのある人は、詰め込みに注意してください。幼児教育(学習)の時間は上限を決め、子どもが飽きたら、思い切り外で運動させてください。
また、親子の狭い関係で幼児教育に没頭すると、他の人とのかかわりが少なくなります。社会的マナーや協調性を養えないデメリットが出てきますので、公園で友達と遊ぶ、祖父母の家に出掛けるなど、積極的に外に出る工夫も取り入れたいです。
幼児教育のおすすめ教材
家で幼児教育に取り組むとなれば、教材が役立ちます。代表的な幼児教育の教材には、何があるのでしょうか。
『まなびwith』(小学館)
HugKumを運営する小学館つながりで言えば、幼児教育の教材として『まなびwith』があります。幼児向けには年少コース(3〜4歳)、年中コース(4〜5歳)、年長コース(5〜6歳)が用意されていて、各コースでは生活の中で「学ぶって楽しい!」と体験できるプログラムが組まれてます。
『ちえあそび入門 (幼児の基本ワーク)』
もっと気軽に、遊びに近い形で幼児教育を始めたい人には、『ちえあそび入門』もあります。子どもの考える方と知能が伸びるように工夫されたワークブックで、親はガイダンスに沿って、子どもと一緒に学びを深めていけます。
『Z-KAI』(Z会)
『Z会』と言うと、受験生向けをイメージするかもしれません。しかし、幼児向けのプログラムもあり、子どもの考える力と知識の幅を広げる、実体験を通じて好奇心を広げる、幼児教育が受けられます。
幼児教育のポイントまとめ
幼児教育とは、お受験のための勉強ではありません。文字や数、英語などの認知能力を鍛える勉強でもなく、「学びたい」という気持ちを育てる教育だと紹介しました。
詰め込むのではなく、子どもが楽しいと思える学びや体験、遊びを、親子で長く続けていく、その先に一生ものの力が身に付きます。幼児教育を重視する保育所や幼稚園、認定こども園を身の回りに探したり、自宅でできる教材を使ったりしながら、子どもの生きる力を、非認知能力を、しっかりと育ててあげたいですね。
文・坂本正敬、写真・繁延あづさ