「枕草子」の内容を簡単におさらい。作者や冒頭の季節の章段を解説【親子で古典に親しむ】

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枕草子といえば、誰もが一度は耳にしたことのある有名な随筆の一つで、中学校・高校の教科書で多く取り上げられています。しかし、冒頭の「春はあけぼの…」は出てくるものの、続きがぼんやりしてしまっている人もいるのではないでしょうか? この機会に、枕草子の内容を改めて勉強し直してみましょう。

枕草子は日本三大随筆の一つ

「枕草子(まくらのそうし)」は、今から千年以上前、平安時代中期に書かれました。鎌倉時代前期の「方丈記」と鎌倉時代後期の「徒然草」と並んで、「日本三大随筆の一つ」とされています。まずは枕草子の概要からおさらいしていきましょう。

作者は清少納言

枕草子を書いたのは、「清少納言(せいしょうなごん)」という女性です。清少納言は第66代天皇・一条天皇の正妻(皇后)である藤原定子(ふじわらのていし)に仕えていました。

父の清原元輔(きよはらのもとすけ)や曾祖父の清原深養父(きよはらのふかやぶ)は優れた才能をもった歌人であり、清少納言は幼い頃から文学のセンスを磨く環境に恵まれていたのです。

『小倉百人一首』にも、第42番の歌人である父・清原元輔(きよはらのもとすけ)とともに、62番目の歌人として登場しています。

同時期の女流作家には「紫式部」がいます。紫式部は一条天皇のもう一人の正妻・藤原彰子(ふじわらのしょうし)に仕えていました。清少納言と紫式部は、互いに意識し合うライバル関係だったようです。

おおまかな内容

枕草子全文は現代の注釈書が作られる際に、約300の章段に分けられました。その章段は、大きく以下の三つに分類されます。

・類聚(るいじょう)段
・日記段
・随想段

類聚段とは、例えば「山とは」など、そこに掲げられた一つのテーマについて書かれた章段です。日記段には、清少納言が日常生活で感じたことや、藤原定子との思い出などが書かれています。

どちらにも当てはまらず、自然や人間関係についてつづられたものが随想段です。清少納言はこうした事柄について、彼女ならではの繊細かつ鋭い見解を枕草子に書き留めました。

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一度は聞いたことがある? 冒頭の季節の章段

「春はあけぼの…」から始まる冒頭の章段を、かつて暗唱できるように練習したという人も多いのではないでしょうか?

枕草子には清少納言が何をどのように「をかし」と感じたのかが書かれています。「をかし」とは、「趣や風情があること」です。清少納言が感じた四季の「をかし」について、くわしく見ていきましょう。

春はあけぼの

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる。」

「あけぼの」とは、「明け方」を意味します。清少納言は「春は夜明けの頃に趣がある」と感じていました。

夜明け前にうっすらと辺りが明るくなり、昇ってくる朝日に照らされた山の稜線(りょうせん)がくっきりとし始めます。その周りに、細く紫がかった雲が薄くかかっていたのでしょう。

夏は夜

「夏は夜。月のころはさらなり、やみもなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。」

夏の見所は「夜」です。月に照らされる夜はもちろん、暗闇の中で一面に蛍の光が飛び交う様子が美しかったのでしょう。一方で、ほんの1~2匹の蛍が通り過ぎるのも、雨の夜も風情があるといっています。

現代ではなかなかお目にかかれる光景ではなく、日常的に蛍が見られていたというのも情緒を感じるシーンです。

秋は夕暮れ

「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、からすの寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫のねなど、はたいふべきにあらず。」

秋は、「夕暮れ」に最も風情ある景色が見られたようです。夕日が山の向こうへ隠れようとする頃、カラスが巣へ帰り急ぐ様子や、雁の群れが遠く空の向こうへ隊列を組んで去っていく様子は、どこか物寂しい趣があります。すっかり夕日が沈んだ頃の、涼やかな風の音や虫の声もお気に入りだったのかもしれませんね。

冬はつとめて

「冬はつとめて。雪の降りたるは、いふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。」

冬は、「早朝」が清少納言のおすすめだったようです。夜の間に降り積もった雪や降りた霜を眺めたときに、冬という季節を強く実感していたのでしょう。

もちろんとても寒い時期で、朝は火をおこしたり焼けた炭を部屋に運んだりと大忙しです。こうした様子も、冬らしくてよいと感じていました。しかし、昼頃になると寒さが和らぎ、火桶の炭も白くなって風情がなくなってしまったようです。

小学生から読みやすい枕草子

最後に、枕草子をやさしく解説した本を2冊紹介します。小学校高学年くらいから理解できる内容のため、タイミングを見て用意してあげるとよいかもしれません。

入門編として「NHKまんがで読む古典 1 枕草子」/ホーム社

字だけ追って理解しようとするのは、小学生にはややハードルが高いかもしれません。そこでおすすめなのが、まずは「まんが」で枕草子がどのようなものなのか知っておくことです。

「NHKまんがで読む古典 1   枕草子」なら、入門編として抵抗なく読めるでしょう。清少納言が何に心を動かされたのか、平安時代の人々はどのような生活をしていたのか、イラストですっと頭に入ってきます。

清少納言の魅力もわかる「枕草子 清少納言のかがやいた日々」 / 講談社青い鳥文庫

「枕草子 清少納言のかがやいた日々」は小説ですが、親しみやすい文体で書かれているのが特徴です。清少納言の一人称で話が進んでいき、難しい言い回しはありません。

文中に枕草子の原文も挿入されており、わかりやすい解釈も付けられています。清少納言のように周囲に対する感覚を研ぎ澄まし、日本語の美的センスを磨く参考書にもなるでしょう。

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ママも枕草子をおさらいしよう

平安時代の女流作家・清少納言の感覚は、現代に生きる私たちにも共感できる部分がたくさんあるのではないでしょうか?

控えめでいることが美徳とされていた時代にありながら、清少納言は枕草子の中ではっきりと自分の意見を述べています。当時のリアルな女性の意見が読めるという点でも、実に興味深い作品です。

小中学生の子どもは、これから本格的に古文の勉強が始まります。子どもの予習も兼ねて、一緒に枕草子に目を通してみると面白いかもしれませんね。

日本の古典をよむ(8) 枕草子 /小学館

日本古典文学のベストセラーが現代語訳と原文でよめる『日本の古典をよむ』シリーズ。おなじみの「春はあけぼの」、お気に入りのものを綴った「うつくしきもの」、昇進できなかった人々の姿は興ざめだと描く「すさまじきもの」、自分の教養の自慢話など、その多種多様にして不可思議な世界は、千変万化の味わい――まるで言葉の玉手箱。平安時代のエスプリを、ぜひお楽しみください。

構成・文/HugKum編集部

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