LUSHのコスメティックレボリューション。地球生態系の一員としての企業のあり方とは?【親子で学ぶSDGs】vol.6 

 

SDGsとは、Sustainable(サスティナブル)・Development(デベロップメント)・Goals(ゴールズ)の略で、「持続可能な開発目標」という意味。地球の暮らしを守るため、2030年までに解決したい17の課題目標が2015年に定められました。「親子で学ぶSDGs」では、今、全世界が取り組んでいる持続可能な循環型社会のための「新しい社会と暮らし」の実践例を紹介していきます。ナビゲーターは、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生こと明石修准教授。第6回は、カラフルな石けんやスキンケアアイテム、ヘアケア商品が並ぶコスメショップのLUSH(ラッシュ)。ポップな印象が強いコスメショップですが、実は、SDGs が語られる以前から、本気で地球の未来のことを考え、ビジネスを通して社会や環境に貢献をしています。

私も、あなたも、地球もハッピーに!LUSHのコスメティックレボリューション

「美容業界でのSDGsの現状を知りたい」。明石ラボの女子学生からの提案が、今回の取材の発端です。いろいろとリサーチをしていくうちに、LUSHの取り組みが「かなり本気だ」ということに気がつきました。華やかな美容業界の中で異彩を放つ、LUSHの目指す世界とは?

——創業当時から大切にしている姿勢を教えてください。

LUSH 私たちの会社は、25年前にイギリスのプールという小さな港町で、ハンドメイドのコスメを販売するお店として誕生しました。6人の創立者は、動物実験や環境問題に対して、常日頃から意識を向けていました。そして、自分自身がハッピーで、お客様もハッピで、この地球に生きるすべての命がハッピーになるためには、どうしたらいいのかという視点をビジネスの中心に据えました。

「Lush Labs アプリ」のAI機能で商品を認識すると、原材料や商品説明情報だけでなく、使い方などが分かる動画まで閲覧できる。ラッシュのデジタルパッケージで、新しいショッピングの楽しみ方が実現!

キーワードはリジェネレイティブ(再生)。サスティナブルの一歩先を目指す取り組みを実践する部署「アースケア」

——その精神が、現在も引き継がれているのですか?

LUSH 環境と生態系が整った中で、みんなが自分らしく生き、人と動物が共存していくためには、どうしたらいいのか? などを考えながら倫理観をビジネスの原動力にしています。

——化粧品のための動物実験に異議を唱えた最初の企業の一つだと聞きました。

LUSH はい。ビジネスを通して、社会にいかに変化を与えられるかを考えています。ショップこそが最大のメディアだと捉え、ショッピングバッグに「NO動物実験」とメッセージを載せるなどのキャンペーンをしたこともあります。

——社会貢献とビジネスを両立させる秘訣はあるのですか?

LUSH とてもシンプルなことなのですが、一人ひとりが元々持っている倫理観を持ったまま、仕事をすればいいのだと考えています。

2016年から、コスメ業界では異例の「パッケージなし」で商品を販売

——現在は、どのような取り組みをしていますか?

LUSH 私たちの会社には「アースケア」という部署があります。そこで、サステナブル(持続可能)からさらに一歩進んだリジェネレイティブ(再生)という考え方を基本に、人間中心の視点ではなく、生態系の一部としてできることを常に考えながら、さまざまな取り組みをしています。また、2016年よりパッケージのないネイキッド(裸の)の商品を販売しています。

環境に配慮し、パッケージを削減。その分のコストを、高品質な原材料にかけています。LUSHの主力アイテムである石けんやバスボムなどは、ほとんどがネイキッド。カラフルでポップ!

日本文化である風呂敷をLUSHらしくアレンジしたギフトラッピング。その名もKnot Wrap。結び(Knot)包む(Wrap)という意味だけでなく、「使い捨てのパッケージで包まない(not wrap)」というメッセージも込められています。

 

——コスメ業界では、常識破りだったのではないですか?

LUSH 前例がなく薬機法のこともあり、実現までに10年かかりました。通常、コスメ業界でパッケージは、他社との差別化を図るための大切な要素でコストをかけますが、私たちは、最後にゴミになるものにコストをかけるのではなく、その分を原材料にまわすことにしたのです。

コスメの空き容器は、使用済みを回収して循環型のリサイクルを実現

——原材料へのこだわりも徹底していますね。

LUSH 自然の恵みである新鮮な野菜や果物を使った100%ベジタリアンのハンドメイドコスメなので、原材料にはこだわっています。私たちは工場のことを「キッチン」、作り手のことを「シェフ」と呼んでいるんですよ。ぜひ親子でお店に遊びに来て、スタッフに「なんでパッケージがないの?」「容器はリサイクルされてるの?」など、尋ねてみてください。そんな会話から、例えば「ゴミってなんだろう?」というような意識の芽生えになってもらえたら嬉しいです。

商品に使用するプラスチックをできるだけ削減するのと同時に、使用済み容器を回収し、循環型リサイクルを実現。空き容器5個を持参すると、フェイスマスク1個と交換してくれます。

LUSH のコスメが里山を守る!渡り鳥を追って原材料を探すプロジェクト

LUSH は、原材料や資材を購買することで地域社会や自然環境を再生し、元々そこにあった豊かさを取り戻すことを目指す「リジェネレイティブバイイング」に取り組んでいます。

その一環が、「渡り鳥プロジェクト」。豊かな里山の象徴とされる渡り鳥・サシバの数が減少していること、里山の環境が破壊されていることを危惧したバイヤーが、渡りルートを追いながら、里山で出合った自然の恵みを原材料として使用しています。LUSH の商品に込められたストーリーは、私たちに何かしらの気づきを与えてくれます。

里山のシンボルであるサシバを守ることが、豊かな暮らしにつながります。このプロジェクトから生まれた里山のお米が、フェイスマスクの原料に使われています。

記事監修

明石修准教授(オサム先生)

武蔵野大学環境システム学科准教授。主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。 https://akashi-lab.com/

「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2020年11月号 別冊HugKum 構成・文/神﨑典子 写真提供/ラッシュジャパン 

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 12 つくる責任つかう責任
  • 14 海の豊かさを守ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう

SDGsとは?

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