土器は粘土をもとに作り上げる素焼きの器のことで、時代ごとに異なる特徴を持っています。それぞれの時期で製法やデザイン等に違いがあります。ここでは弥生(やよい)土器について掘り下げながら、弥生時代についても合わせておさらいしていきましょう。
弥生土器とはどんなもの?
土器は、古(いにしえ)の時代から日本の暮らしを支えてきました。食べ物の調理や貯蔵において、大切な役割を担い続けてきたのです。
弥生土器は、縄文(じょうもん)土器と並んでよく知られています。しかし、それらの違いについて深く理解していない人も少なくありません。はじめに、弥生時代をおさらいしながら縄文土器との違いを見ていきましょう。
まずは弥生時代をおさらい
弥生時代は、長い歴史を日本独自の考え方で区切った歴史的区分の一つです。西暦で見ると紀元前3世紀頃から紀元後3世紀頃とされています。
弥生時代の最大の特徴は、農耕が発達したことです。狩猟や採集が中心だった社会が次第に姿を変え、農耕が本格的に人々の暮らしを支えるようになりました。日本の米文化の始まりといってもよいでしょう。
当時、中国大陸や朝鮮半島から数多くの技術者たちが日本にやって来ました。彼らによって、日本にはなかった金属製の道具などが持ち込まれ、技術的にも大きく発展したことが特徴です。
福岡県の「板付遺跡(いたづけいせき)」には、日本における米作りの基礎を見ることができます。発見された水田の跡からは、米作りの規模をより大きくしていった証(あかし)が見受けられます。
縄文土器との違いは?
弥生土器と縄文土器の違いを、作り方の面から考えていきましょう。
縄文土器は「紐(ひも)作り」という技法で形を作ります。その後、くべた草木で平らな場所に積み上げた土器を焼き上げる「野焼き」を行います。
対して弥生土器は、野焼きまでの工程は同じですが、さらに「覆(おお)い焼き」をします。野焼きを土でドーム状に覆うことで、窯(かま)のような役割を果たし、土器全体に熱を均一に伝えられるのです。
覆い焼きのメリットは大きく二つあります。一つは、野焼きよりも高温で仕上げられることです。そして二つ目の利点は、一つ一つの土器にまんべんなく熱を伝えられることが挙げられます。
これらのメリットによって、弥生土器は縄文土器より丈夫で耐久性の高いものとなりました。
弥生土器の特徴とは?
縄文土器から発展した弥生土器は、耐久性も用途も広がりをみせることになりました。弥生土器の特徴を、さらに詳しく解説します。
薄くて硬い
縄文土器と比べ、弥生土器には「薄くて硬い」という特徴が見られます。これは、弥生時代に開発された覆い焼きなどの新しい技法により、製造法が発達したことが要因となっています。
高温で一つ一つの土器にまんべんなく熱を伝えることができると、硬く仕上がるようになります。そうして強度が高まったことにより、薄くても壊れない器を作ることができるようになったのです。
窯で蒸(む)すように焼き上げる弥生土器は、赤みを帯びた褐色のものが多いことも特徴の一つです。
シンプルな文様
縄文時代、土器は調理や貯蔵の他、祭祀(さいし)や埋葬などにも用いられていたといわれています。縄目(なわめ)状をはじめ、押型文(おしがたもん)、圧痕文(あっこんもん)などの複雑な文様があしらわれるものが多いのが特徴です。
野焼きのみで仕上げるため高い強度が得られず、厚ぼったいものが多かった縄文土器は、赤褐色や黒褐色であることも特徴です。
一方、より器として実用的に進化した弥生土器は、デザインもシンプルなものへと変わっていきました。形状も洗練され、模様も質素な方向へとシフトしていきます。無地か、あったとしても、三角や丸、直線・波型など幾何学(きかがく)的なものがほとんどでした。
用途に応じた土器の種類
主に食べ物の調理や貯蔵、祭祀において用いられていた縄文土器の用途は、限定されていたといえます。
一方で、弥生土器にはより広い用途がありました。例えば、壺(つぼ)状の土器は穀物や液体の保存に用いられていたといわれています。貯蔵方法や技術がまだ少なかった時代に、保存ができることはとても大きなメリットです。
また、甕(かめ)状の土器は調理の幅を広げました。蓋(ふた)付きの土器も作られるようになったことで、多彩な調理方法が取り入れられるようになっています。
そして高坏(たかつき)や脚が付いた土器は、食事の盛り付け用に使われていました。土器の製造方法の発達は、食文化の向上にも貢献したといえるでしょう。
弥生時代について学べるおすすめの本
ここまで、弥生土器についての知識を深めてきました。弥生時代についてもさらに学べば、時代背景がよりはっきりと理解できるでしょう。弥生時代を知るためにおすすめの本を、2冊ピックアップして紹介します。
弥生時代の入門書「知られざる弥生ライフ」譽田 亜紀子
学生時代に学んでなんとなく分かったつもりでいる弥生時代が、一気に身近に感じられるようになるおすすめの1冊です。弥生人の当時の暮らしを分かりやすく理解したい人には、打ってつけの本でしょう。
複雑な紋様を配した縄文土器と比べて、質素さが特徴の弥生土器についてはもちろんのこと、中国や朝鮮半島からの渡来人や稲作・環濠集落・卑弥呼(ひみこ)と邪馬台国(やまたいこく)についてなど、弥生時代全般を知るための入門書としても適しています。
まんがで学べる「日本の誕生」佐原 真
「まんがで分かりやすく学びたい」という人も多いでしょう。本書は、学習まんがの決定版として名高いシリーズのうちの1冊で、旧石器から縄文、弥生時代について解説しています。
集団で狩猟採集を行っていた旧石器時代に始まり、土器を発明し村を形成しはじめた縄文時代、そしてさまざまな技術や文化の発展とともに村同士の争いも生まれた弥生時代についてなどが、まんがで読むことができます。
子どもはもちろん、大人にもぴったりな歴史入門書です。
弥生時代や土器についておさらいしよう
弥生時代は、国外から道具や技術が持ち込まれ、社会が大きく発展した時代です。技術の進化は土器にも反映され、弥生土器の誕生を後押ししました。
土器一つからも、作られた時代の暮らしや文化が感じとれます。弥生時代や当時の土器についておさらいし、古の日本に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
構成・文/HugKum編集部