航空整備士とはどんなお仕事? なるための方法や需要や将来性も

飛行機関係の仕事は人気の職業ですね。航空関係の仕事には、パイロットだけでなく空港のグランドスタッフや航空管制官などさまざまな職種があります。空の安全を守る「航空整備士」も、飛行機を運航させる上で欠かせない職業のひとつ。今回は航空整備士について、仕事内容やなるための方法などを解説します。

航空整備士の主な仕事は三つ

航空整備士の主な仕事は、「ライン整備」「ドック整備」「ショップ整備」の三つです。整備する点は共通していますが、それぞれ仕事内容が異なります。

仕事に必要な資格も異なるため、仕事内容を具体的に見ていきましょう。

ライン整備

「ライン整備」では、飛行前・到着後の機体の整備・点検を行います。空港で見かけるフライト前の航空機を点検する航空整備士の仕事が、ライン整備です。

ライン整備には、スピーディーかつ正確な仕事が求められます。航空機の到着から次のフライトの出航までの約40分~1時間というわずかな時間で、ミスなく整備・点検しなければなりません。

ライン整備の仕事に就くには、航空整備士または航空運航整備士の資格が必要です。

ドック整備

格納庫に収容した機体を定期点検・整備する仕事が「ドック整備」です。「定時整備」「重整備」とも呼ばれます。一定時間フライトした航空機のメンテナンス作業で、車でいう車検のイメージです。

ドック整備で不具合が見つかれば、部品交換や修理で安全にフライト運行できるようにします。金属疲労の検査や機体の再塗装などもドック整備で行うため、ライン整備に比べてかなり大掛かりな整備といえるでしょう。

ドック整備になるためには、航空整備士の資格が必要です。

ショップ整備

機体から取り外した航空機の心臓部分を点検・整備する仕事が「ショップ整備」です。「工場整備」とも呼ばれます。ショップ整備での点検対象は、エンジン・コンピューター系統のパーツや油圧系統の関連部品となります。

取り外された部品は分解され、点検・修理・改修作業を経て機体に戻されます。次回のショップ整備までにどれくらい状態が変わるかを読み、先手を打つ必要があります。各部品の専門家としての技術や知識、経験が求められるでしょう。

ショップ整備を行うためには、航空工場整備士の資格が必要です。

求められる資格や難易度

航空整備士として働くには資格が必要です。航空機の整備への関わり方によって、求められる資格は異なります。資格そのものや取得難易度を知り、航空整備士になるために必要なことを把握しましょう。

資格は5種類

航空整備士として働くためには、航空法第24条に掲げられた5種類の国家資格のいずれかを取得する必要があります。

●一等航空整備士
●二等航空整備
●一等航空運航整備士
●二等航空運航整備士
●航空工場整備士

一等と二等の違いは、整備する航空機の大きさです。大型ヘリコプターや旅客機などの大型機は、一等でのみ扱えます。二等では、最大離陸重量5.7t以下の中・小型機を扱うことができます。

航空整備士と航空運航整備士の違いは、整備できる範囲です。上位資格の「航空整備士」は整備全般に携わることができますが、下位資格の「航空運航整備士」はドック整備のような大掛かりな整備に携われません。

航空工場整備士には一等・二等の区別はなく、担当領域に応じて9種類の分野に分かれています。

試験ごとに受験資格がある

整備経歴や年齢で一定の条件を満たさなければ、各種航空整備士の国家試験を受けることができません。これは航空法第26条で定められています。それぞれの資格の受験資格は以下の通りです。

●一等航空整備士:整備の経験4年以上、20歳以上
●二等航空整備士:整備の経験3年以上、19歳以上
●一等航空運航整備士:整備の経験2年以上、18歳以上
●二等航空運航整備士:整備の経験2年以上、18歳以上
●航空工場整備士:整備の経験2年以上、18歳以上

受験資格を得る方法は、就職後に整備経歴を積む方法と国道交通省指定の学校に通う方法の二つがあります。

試験の内容と難易度

各種航空整備士の国家試験には、学科試験と実地試験があります。学科試験に合格しないと実地試験には進めません。科目合格制度を採用しているため、最初の合格から1年以内に全科目に合格すれば実地試験に進めます。

実地試験の受験期間は、学科試験合格から2年以内です。航空整備士と航空運航整備士は、航空機の種類や等級・型式によって細かく分類されます。国交省指定の「指定航空従事者養成施設」で学ぶと、実地試験が免除されるのがメリットです。

合格率は公表されていないとはいえ、国交省指定の学校では100%の合格率を叩き出す学校が大半です。しっかり勉強していれば合格できるものの、日頃の勉強の積み重ねがなければ合格は難しいでしょう。特に一等航空整備士では、求められる知識が高度なため難易度は非常に高くなっています。

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航空整備士になるための方法は?

航空整備士になるための一般的な方法として、四年制大学の航空整備コースや理工系学部、専門学校に進学するルートがあります。卒業後には航空会社または関連整備会社に就職し、航空整備士としてのキャリアを積むことが可能です。

四年制大学から目指すルート

四年制大学から航空整備士を目指すルートでは、航空整備コースや理工系学部への進学が必要です。これらの学部やコースでは、航空整備以外にも幅広い知識を身に付けられます。

卒業後の進路は「整備会社の航空整備士」「航空会社の技術系総合職」の2通りです。ただし、四年制大学での在学年数は整備経験としてカウントされません。航空整備士の資格を取りたい場合は注意しましょう。

技術系の総合職に就くと、航空整備の管理業務を担うのが一般的です。また、必ずしも技術系総合職で実際の航空整備に携われるとは限りません。航空整備士として働きたい場合は、最初から整備会社に就職するのがよいでしょう。

専門学校から目指すルート

専門学校から目指すルートでは、航空整備士の国家資格を最短で取得できます。専門学校を修了すると、在学年数が整備経験にカウントされるからです。

ただし、すべての専門学校で整備経験の年数をクリアできるわけではありません。最短で航空整備士になるには、「指定航空従事者養成施設」か「航空機整備訓練課程」に国交省が指定した専門学校に進学する必要があります。

両者は航空業界への就職を前提としたカリキュラムを組んでいるため、早ければ在学中に航空整備士の資格を取得可能です。国交省指定の専門学校のうち、実地試験が免除されるのは「指定航空従事者養成施設」だけのため、進学先を選ぶときは注意しましょう。

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どんなタイプの人に向いてるの?

航空整備士の仕事は24時間体制で、シフト制の勤務形態が一般的です。生活リズムが不規則になりやすいため、体力的なタフさが求められます。では、性格面ではどんなタイプの人に航空整備士は向いているのでしょうか?

責任感が強く向上心のある人

航空整備士に適しているのは、「責任感が強く向上心のある人」といえます。

航空機トラブルの多くは、整備の漏れやミスによる機体の不備が原因といわれています。フライト中にトラブルが起きても簡単に停止できないため、ちょっとしたミスが大事故を招く可能性もあるでしょう。

添乗員・乗客問わず、航空機に乗る人の命に対して責任感を持てることが重要です。また、航空整備士の国家資格取得後も学び続けられることも必要です。

航空整備士には、日々進歩する科学技術を学んだり航空機を扱う技術を磨いたりする向上心が求められます。仕事で英語を使う機会も多いため、英語を習得できる意欲もポイントになります。

ルールに沿って冷静に判断できる人

「ルールに沿って冷静に判断できる」ことも、航空整備士に必要な要素です。

航空機は公共交通機関の一つであり、徹底した時間管理が求められます。ライン整備が遅れるとフライトが遅れ、乗客はもちろん目的地の空港にも迷惑がかかるでしょう。限られた時間内でテキパキと仕事を進められる人が、航空整備士に向いています。

また、機体に不具合を見つけた場合、ルールに則った冷静な判断が必要です。独断による判断ミスが大事故につながる恐れもあるため、ルールを守り問題に慌てず対処・判断できることが大切です。

コミュニケーション能力が高く誠実な人

「コミュニケーション能力が高く誠実な人」も、航空整備士の適性があるといえるでしょう。航空整備士の仕事はチームワークです。扱う航空機が大きければ大きいほど、整備には多くの航空整備士が携わります。

テクノロジーの進歩に伴い整備業務が細分化されている上に、些細なミスが重大な事故の原因になり得ます。同僚と円滑にコミュニケーションを取れる能力は、航空整備士に欠かせないものといえます。

自分にミスがあったときに正直に申告できる誠実さや実直さも、航空整備士に求められる適性の一つです。

就職先と需要・将来性

航空整備士の就職先は、航空会社や関連整備会社以外にもあります。また、航空整備士の需要や将来性も気になるところです。就職先と需要・将来性を把握し、航空整備士として働く具体的なイメージを持ちましょう。

航空整備士が活躍できる場所

航空会社で技術系総合職として採用された場合、現場に出る機会は多くありません。実際の現場で航空整備士として働きたい人は、整備会社に就職するのが一般的です。

官公庁への就職は、公務員試験で採用される場合と民間企業からの委託のケースがあります。警察・消防・海上保安庁・自衛隊などの航空機の整備でも、航空整備士を募集しています。

航空機の本体や部品のメーカーも、航空整備士の就職先といえるでしょう。完成した機体の整備以外に、航空機の開発業務に携わる場合もあります。

航空整備士の多くは正社員として雇用されます。勤務時間や休日は就職先によって異なるものの、シフト制で土・日・祝日も含めて働くワークスタイルが一般的です。

需要や将来性はある?

航空整備士は需要も将来性もある職業です。近年は女性の航空整備士も多く活躍しています。

格安航空会社(LCC)の就航や各航空会社の路線拡大により、国内では航空業界の需要が高まっています。定年による航空整備士の退職も、新規採用を促進する動きの一因です。

旅客機だけでなく、コミューター航空も路線を拡大中です。「コミューター航空」とは、近距離輸送を目的とした小型飛行機で、従来の離島路線に加えて地方都市間の路線を増やしています。官公庁での航空整備士の需要も高まっているため、資格を持っていれば将来性を見込めるでしょう。

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空の安全を守る重要なお仕事

航空整備士は空の安全を守る重要な仕事です。国家資格が必要で、四年制大学や専門学校を経て航空整備士として就職するパターンが一般的です。旅客機以外における航空整備士の需要が増えていて、将来性もある職業といえます。

まずは航空整備士の仕事内容や進路などを知り、航空整備士として働く具体的なイメージをつかみましょう。

構成・文/HugKum編集部

 

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