ネット社会の現代では、子どもたちは簡単に性情報にアクセスできます。子どもたちが間違えた情報をうのみにしないために、家での性教育は必要不可欠です。とは言っても、いったいいつごろから、どんな話をすればいいのか困惑しますよね。2018年から公立小学校や企業主宰のイベントで、性教育の授業やワークショップを展開している医師夫婦のユニット「アクロストン」が、ママ&パパのお悩みに応えます。
今回のテーマは「生理」。赤ちゃんのもとになる生理を、どうやって子どもに説明するべきか……、じょうずな伝え方を教えてもらいます。
目次
6歳の娘に、生理をどう説明したらいいですか?生理中に一緒にお風呂に入って驚かれてしまい…
生理中に子どもたちといっしょにおふろに入ったら「ママ、血が出てる!」「痛くない? 大丈夫?」と心配されてしまいました。生理のことを伝えるよい機会だと思いながら、どこから話していいものかわからず、とりあえず「ケガじゃないから大丈夫」とは言っておきましたが……。(6歳娘・3歳息子の母)
子どもの理解度に合わせて、「赤ちゃんがどうやってできるか」を繰り返し話しましょう
母親の生理の経血を見て、子どもがびっくりするという話はよく聞きます。こういう機会があったら、この方がおっしゃるとおり、せっかくなので生理のことを教えてあげるといいですね。
3~4歳ならば「ケガじゃなくて、女の人は毎月こうなるんだよ」という伝え方でOK
ただ、子どもは血を見ると「痛い」「こわい」と思うので、とりあえず「ケガじゃなくて、女の人は毎月こうなるんだよ、生理というんだよ」というふうに伝えましょう。もっと色々と聞きたそうな場合は、“赤ちゃんのもと”の話をしてあげるといいですね
6~7歳になったら、お母さんには、“赤ちゃんのもと”を育てる部屋があることを伝える
6~7歳になって、いろいろなことが理解できるようになったら、赤ちゃんの話をします。いきなりセックスの話はハードルが高いので、とりあえず、男の人のおなかにある“赤ちゃんのもと”と、女の人のおなかにある“赤ちゃんのもと”がいっしょになって、女の人のおなかの中の赤ちゃんを育てる部屋で、赤ちゃんはできるんだよって。いっしょにならなかったら、赤ちゃんの部屋の壁だけが毎月、血になって外に出るんだよ。ケガで出る血とは違うから、痛くないんだよと教えてあげましょう。
繰り返し話すことで、理解度は深まります。性についての絵本をつかうのもおすすめ
ただ、この話は何歳だから話すということではなく、その子が理解できるなら、どんどん進めていってOKです。3~4歳でも理解できる子は理解できるし、小学生になって話しても理解できない子もいます。年齢ではなく、その子の理解度に応じて話しましょう。
とはいえ、その理解度を判断する必要もなく、何回も何回も繰り返し話せば、その子なりに理解度は深まります。また親のほうも何度も話しているうちに、慣れてきて恥ずかしさもなくなってくるでしょう。
親に抵抗があるなら、性についての本を使うのも手です。
『あっ!そうなんだ!性と生』は、「子どもといっしょに読んでよかったです」という人は、周りに多いですね。わが家の子どもたち(娘11歳・息子9歳)は、この本を家の本棚から取り出してすでに読んでいたので、いざ話そうと思ったら「もう知っています」と言われました(笑)。
娘が生理を迎える日のための準備はいつから?どうやって?
11歳の誕生日ごろまでに、「生理への備え」を教えておきましょう
では、実際に娘を育てる親は初めての生理に向けて、事前に何を伝えておけばよいのでしょうか。
初めて生理がくる年齢は、11~13歳ごろ。胸がふくらみ始めて一年後ぐらいにくる子が多いですね。ですから、11歳の誕生日ごろまでに、生理の具体的なしくみ、生理で起こる自分の体の変化、生理用品の使い方などを教えてあげるといいですね。
まず、生理については、妊娠に備えて子宮の内膜が毎月分厚くなること、妊娠しなければ、それが壊れて、血のような形で5日間ぐらい膣から出てくることを伝えましょう。膣から出てくる血の量は人によって違い、痛みのある人やない人、生理前は体調不良や心が不安定になる人がいることも合わせて教えます。
生理用品は生理用品とナプキンを用意して、ナプキンの使い方や捨て方をいっしょに実践してみましょう。
生理用ショーツも自分の好きなアイテムを選ぶことで前向きになれます
わが家では、娘の11歳の誕生日に生理用ショーツをいっしょに買いました。生理は「大変」「めんどうくさい」と思っている子も多いようですが、自分の好きなアイテムを選ぶことで、生理に対して前向きになれると思います。
娘は結局、ショーツとポーチがセットになったものを通販で買いました。ショーツは最初は1枚でOK。買うときは念のため、ヒップのサイズをはかったほうがいいですね。
抵抗なく手に取れる「無印良品」のシンプルなナプキン
ナプキンはサイズやデザイン、肌ざわりなど、いろいろなバリエーションがあります。
私たちが主催する生理のワークショップでは、かわいらしいデザインのものが人気ですが、最近、「無印良品」から発売されたシンプルなタイプの「生理用ナプキン」(羽あり、羽なし2タイプ)は、男の子でも抵抗なく手にとれるようでした。かわいらしいものとシンプルなもの、どちらも選べるのはすごくいいですよね。
いずれも選び方に正解はなく、子ども自身が使いやすいもの、好きなものを選ぶのがおすすめです。
いざ、娘に生理が来たら…。夫に伝える前に、本人に確認を
初潮がきても勝手にお赤飯を炊くのはNG!
いざ娘に初潮がきたら、「生理用品の使い方わかる? 困ったことがあったら言ってね」と、さりげなく声をかけましょう。「おめでとう」と言われるのが、いやな子もいます。お祝いがしたいなら、勝手にお赤飯を炊いたりせず、本人の希望を聞きましょう。
父親には伝えるべきかどうするか。母親にだけこっそり教えてくれたときは「お母さんがいないときに困ることがあるかもしれないから、お父さんにも話しておいていい?」と確認しましょう。嫌がるときは、本人の意思を尊重します。
シングルの父親の家庭は、子どもが困ったときに相談しやすいように、事前に生理について話し合えればよいですが、難しい場合は、子どもが信頼している大人の女性から話してもらえるとよいでしょう。
何にしても、本人の意思を尊重すること。これは生理に限ったことではなく、子育てすべてにおいて大事なことだと思います。
教えてくれたのは
妻のみさとは産業医、夫のたかおは病理医をしながら、2018年に「アクロストン」としての活動をスタート。公立の小学校の授業や企業主催のイベントなど、日本各地で性にまつわるワークショップを行う。『3~9歳ではじめるアクロストン式「赤ちゃんってどうやってできるの?」いま、子どもに伝えたい性のQ&A』(主婦の友社)、『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになっているなんて!』(主婦の友社)、『10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック(ほるぷ出版)』が発売中。
構成/池田純子