「月下〇人」一字違いで大違い
いずれも「月」という字を含む「月下美人」と「月下氷人」。
字面の美しい四字熟語ですが、このふたつの言葉が指しているものを、それぞれ説明できますか?
読み方をチェック!
ふたつの語の意味を確認するまえに、読み方をチェックしましょう。
「月下美人」は、げっかびじん
「月下氷人」は、げっかひょうじん
と読みます。読み方はそんなに難しくありませんね。
「月下美人」とは?
では、「月下美人」とは何でしょうか。
実はこれ、植物(花)の名前なんです。
サボテン科の多年草。クジャクサボテンの仲間で、茎は平たく、葉状。夏の夜、白色で香りのある大花を開き、数時間でしぼむ。メキシコの原産。
出典・大辞泉(小学館)
月下美人の花には強い芳香があり、その香りだけで咲き始めたことがわかるのだとか。地面に根をおろさず、他の樹の上に着生して育ちます。宵から咲きはじめ、朝にはしぼんでしまうそのはかなさが、この詩的な名前の由来でしょうか。園芸交配種で「満月美人」という品種もあるそうで、いずれにしても夏の夜にふさわしいロマンティックな名前ですね。
「月下氷人」とは?
いっぽう、「月下氷人」はまったくちがう意味のことばになります。
男女の縁をとりもつ人。媒酌人。なこうど。
出典:『小学館 四字熟語を知る辞典』
知らなかった人には意外に感じられるかもしれません。なぜ月下で、氷の人なのでしょうか。
この「月下氷人」、もともとは、同じく仲人を表す「月下老人」と「氷人」というふたつの故事成語がもととなり、やがて混同・合成されて「月下氷人」となったようなのです。
「月下老人」にまつわる故事
ある青年が見合いのために寺に行くと、月の光の下で、老人が本を読んでいました。不審に思って尋ねると、老人は結婚を司る幽界の人だと言います。袋の中には、縁結びの赤い縄が入っていました。
老人は、青年の結婚相手は別にいると告げます。それは三歳の少女でした。結局、青年は後に、成長したその相手と結婚します。これは「続幽怪録」という書物の中の「定婚店」という話です。出典:『小学館 四字熟語を知る辞典』
「氷人」にまつわる故事
ある人が氷の上に立ち、氷の下にいる人と話す夢を見ました。占い師に聞くと、「それはあなたが仲人を務めるという夢だ」と告げられました。そして結局、そのとおりになったということです。こちらは「晋書」に載っている話です。
出典:『小学館 四字熟語を知る辞典』
上の「月下老人」「氷人」が混じりあって定着した「月下氷人」という言葉。「月」「氷」といった冴え冴えと冷たい印象の語ではありますが、実は愛のキューピッド役を表していたのですね。
「月下美人」とあわせて覚えておきたい言葉です。
構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
イラスト/小幡彩貴
小学館 四字熟語を知る辞典
編/飯間浩明 定価/1900円+税
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