カタツムリは殻を取ったらナメクジになる? 両者の共通点と相違点は【親子でプチ科学】

カタツムリとナメクジに「殻」以外の違いはあるのでしょうか? 子どもに「どこが違うの?」と聞かれても答えられるように、両者の共通点・相違点を理解しておきましょう。カタツムリとナメクジの性質や違い、駆除方法や感染症の危険性について紹介します。

ナメクジはカタツムリの進化系

「ナメクジに殻(から)を付けるとカタツムリになる」と考える人もいますが、順番的には「カタツムリから殻を取るとナメクジになる」が正解です。カタツムリとナメクジ、それぞれの概要や生態を確認しましょう。

軟体動物の「腹足綱」に分類

ナメクジは、軟体動物の総称である「腹足綱(ふくそくこう)」に分類されます。文字通り、腹面全体を足にして這(は)い回る生物を指し、アワビやサザエ、カタツムリも同類です。

腹足綱は、生息地によって、陸産・淡水産・海産があり、ナメクジは陸産に該当します。

カタツムリと同様に、肺で呼吸する「有肺亜綱(ゆうはいあこう)」に属しますが、カタツムリは「カタツムリ科」、ナメクジは「ナメクジ科」で別の科です。

一般にナメクジは、カタツムリの殻が退化した種だといわれています。陸上では、殻の材料となるカルシウムを摂取するのが容易でありません。ナメクジは殻をなくすることで、陸上でより暮らしやすく進化したのです。

菜の花を這う「チャコウラナメクジ」。外来種だが、人家周辺で普通に見られるナメクジ。殻は退化して甲羅状になって体内にある。

夜行性で湿った場所を好む

ナメクジは、湿気を好む生物で、多湿な場所に多く見られます。活動域は数メートル程度で、さほど広くはありません。基本的には、夜に活発に活動し、日が昇ると薄暗い場所に戻ります。

薄暗い場所にじっとしているときのナメクジは、丸々しているのが特徴です。普段のイメージとはほど遠く、見つけると驚くかもしれません。活動を始めると、細長い形状に戻り、頭が入るところなら、どこにでも入り込みます。

また、ナメクジは雌雄の区別がなく、2匹いれば産卵できます。秋頃に産卵するケースが多く、1回に産む卵は20~60個で、数回に分けて産卵します。ナメクジの寿命は約1年といわれ、生涯で200~300個の卵を産みますが、産卵後に死にます。

カタツムリとナメクジの違いは?

進化前・後のカタツムリとナメクジは、同じ科目に分類されます。殻くらいしか違いがあるようには見えませんが、何が違うのでしょうか?  両者の違いを見ていきましょう。

カタツムリは石灰質を摂取する

カタツムリは、殻を維持するためのカルシウムの摂取が必要なため、昆虫の死骸やコンクリートを食べることがあります。これは、ナメクジとは大きく異なる点です。

ぶよぶよしたカタツムリを見ていると、「どうやって固いものを食べるの?」という疑問がわくかもしれません。

実は、カタツムリの口内には、1万本以上の歯が付いた「歯舌(しぜつ)」があります。咀嚼力(そしゃくりょく)は強く、固いものも食べられます。海外には、肉食のカタツムリもいるほどです。

カタツムリの内臓は殻の中

ナメクジとカタツムリを分ける殻は、カタツムリの体の一部です。ヤドカリのように殻を替えられませんし、殻を取ったからといって、ナメクジになるわけでもありません。

カタツムリの殻は、内臓を保護するために必要なものなのです。殻が大きく破損したり無理矢理剝(は)がされたりすると、内臓がダメージを受けます。ほとんどのカタツムリは、そのまま死んでしまうでしょう。

紫陽花(あじさい)の花を這うカタツムリ。二対の触角の長い方の先に目がある。でんでんむし、まいまいつぶり、蝸牛。

一方、ナメクジは体内に内臓を持ちます。

ナメクジは乾燥や外敵に弱い

カタツムリは、殻に入れば、乾燥や敵から身を守りやすくなります。しかし、ナメクジには殻がありません。乾燥が激しかったり、敵に襲われたりすると、非常に不利な状態です。

ナメクジには、「殻がないからこそ身軽」というメリットがあります。

乾燥が激しいときは、湿気の多い場所に隠れればよく、敵が来たら、素早く逃げることも可能です。ナメクジ、カタツムリとも一長一短で、どちらが優れているとはいえません。

また、ナメクジは敵に襲われたとき、粘液を大量に出すのも特徴です。粘液はカタツムリよりも遙(はる)かにネバネバしていて、この点もカタツムリとは大きく異なるといえるでしょう。

駆除方法と注意点

ナメクジもカタツムリも、植物の葉を食べるため、ガーデニングの天敵です。大量発生する前に、適切に駆除しましょう。駆除方法と注意点を紹介します。

駆除には薬剤や熱湯を使おう

カタツムリやナメクジが大量発生したら、駆除剤を使うのが効率的です。カタツムリ類用の駆除剤を選んで散布しましょう。スプレータイプ・粒材など、さまざまな種類があるので、植物や散布範囲に合わせて選ぶのがおすすめです。

農薬を使いたくない場合は、熱湯をかけて駆除する方法があります。ナメクジ、カタツムリに熱湯をかけると、タンパク質が固まって即死します。

ただし、熱湯が直接植物にかからないよう、ナメクジ、カタツムリを地面に落としてから駆除しましょう。

また、卵を発見したときは、早急に取り除くことも必要です。卵は塊になっているので、割り箸(わりばし)などでつまんで駆除します。

「塩をかける」は効果が薄い

ナメクジ駆除でよくいわれる「塩をかける」は、現実的な駆除方法ではありません。

1匹を駆除するのに多量の塩が必要なうえ、時間もかかります。塩をまけば、塩害の恐れもあるため、植物のそばで塩を使うのは避けましょう。

ナメクジが塩をかけると小さくなるのは、体の成分のおよそ90%が水分でできているためです。

ナメクジの体を覆う膜は水分を通しやすく、塩をかけると浸透圧の影響で水分が体外に出てしまいます。体が小さく縮んで、そのまま死んでしまうように見えるのです。

ただし、ナメクジに塩をかけても、溶けてなくなるわけではありません。水分を吸収すれば元に戻ることもあり、確実に駆除したいときには不向きです。

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死に至る寄生虫に要注意

カタツムリやナメクジには、「広東住血線虫(カントンじゅうけっせんちゅう)」が寄生しているケースがあります。これはネズミなどの肺動脈内に寄生する線虫です。

寄生された人は、潜伏期間1~3週間の後、頭痛や倦怠感(けんたいかん)・吐き気・全身の痛み・発熱などの症状が現れます。

症状が重い場合は、麻痺(まひ)や失明といった後遺症が残ったり、死亡したりする可能性もあります。

自分はもちろん、子どもがカタツムリやナメクジに触れないよう、よく注意することが必要です。万が一触れてしまったら、石けんでしっかりと手を洗いましょう。

同じ祖先から進化した仲間同士

カタツムリとナメクジは、どちらも巻き貝の一種で、生物学的には同じ種類に分類されます。カタツムリから進化したのがナメクジだと覚えておきましょう。

両者は性質もよく似ていて、乾燥を嫌い、湿度のある場所を好みます。ただし、カタツムリは殻を維持する必要性から、カルシウムの摂取が必要です。

ガーデニングの天敵であるカタツムリやナメクジも、それ以外は無害に見えますが、これらに付いている寄生虫が原因で、深刻な感染症を引き起こすことがあります。

子どもには、カタツムリやナメクジに触れないこと、万が一触れてしまったら、しっかり手を洗うことを教えておきましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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