撥音便という音便の種類や促音便との違い、見分け方や覚え方を解説

日本語の口語では、発音しやすいように単語の音の一部が変化します。これを音便(おんびん)といいます。音便にはいくつか種類があり、そのなかの1つが「撥音便(はつおんびん)」です。この記事では、音便や撥音便、他の音便、またその前提となる動詞の五段活用などを解説します。

撥音便ってどんな音便?

日本語は、発音しやすいように単語の音の一部が変化します。これを「音便(おんびん)」と言います。「撥音便(はつおんびん)」はその音便の一種。どんな音便なのか、見ていきましょう。

動詞の五段活用とは

音便には、動詞や形容詞が使い方によって変化することが関係しています。単語が変化することを「活用」といい、例えば動詞には「五段活用」という変化の形があります。動詞の一部が「ア・イ・ウ・エ・オ」の五つの音に変化する形のことです。

動詞の音便は、この「五段活用」の1つの「連用形」で起きます。文法は苦手、という方もいると思いますが、音便の前段階として、少しだけ五段活用の説明にお付き合いください。

五段活用の例

「書く」という動詞の活用を見てみましょう。

「書く」という動詞は、次につづく単語によって、次のように変化します。

・書かない(書く+ない→書かない)
・書きます(書く+ます→書きます)
・書くとき(書く+とき→書くとき)
・書け  (書く、を命令する→書け)
・書こう (書く+う →書こう)

それぞれ2文字目を見てください。「か・き・く・け・こ」と変化しています。

では「飛ぶ」という動詞だと、どうなるでしょう。「書く」と同じように変化させてみます。

・飛ばない
・飛びます
・飛ぶとき
・飛べ
・飛ぼう

2文字目は「ば・び・ぶ・べ・ぼ」と変化しています。つまり「書く」「飛ぶ」という単語は、単語の一部が次に続く言葉によって「あ・い・う・え・お」の段の言葉に変化しています。この活用を「五段活用」といいます。「書く」の場合は、か行で変化しているので、か行五段活用、「飛ぶ」の場合は、ば行五段活用といいます。

ここからはさらに五段活用の文法的な説明になります。概要だけでOKという方は読み飛ばしていただいても構いません。

単語の活用には

・未然形
・連用形
・終止形
・連体形
・仮定形
・命令形

の6つの形があります。活用の形をそれぞれ少し詳しく説明すると、

・未然形:助動詞の「ない」「う」などが続く形
・連用形:助動詞の「ます」「たい」などが続く形
・終止形:言い切る形
・連体形:名詞・代名詞が続く形
・仮定形:助詞の「ば」が続く形
・命令形:命令する形

となります。

先ほどの「書く」を当てはめると、

・未然形:書かない/書こう
・連用形:書きます
・終止形:書け
・連体形:書くとき
・仮定形:書けば
・命令形:書け

となります。

音便とは

話を音便に戻しましょう。音便とは、単語の一部が発音しやすいように、別の音に変わることでした。さらに詳しく見ていきます。

動詞の音便の種類

動詞の音便は、五段活用の動詞の連用形で起き、3つの種類があります。具体的には連用形のうしろに、「て(で)」「た(だ)」などが続くときに起きます。

撥音便(はつおんびん)

撥音便については別途、詳しく見ていきます。

促音便(そくおんびん)

促音便は、単語の中の音が促音「っ」(小さい「つ」)に変わることです。タ行・ラ行・ワ行などの五段活用の動詞の連用形で、うしろに「て(で)」「た(だ)」「たり」などが続くときに「っ」に変化します。

たとえば、

・待ちて → 待って
・立ちて → 立って
・売りて → 売って

などです。

イ音便

イ音便は、単語の中の音が「い」に変わることです。カ行・ガ行などの五段活用の動詞の連用形で、うしろに「て(で)」「た(だ)」「たり」などが続くときに、子音(k、g)が脱落して「イ」の音になります。

たとえば、

・聞きて → 聞いて
・咲きて → 咲いて
・漕ぎて → 漕いで

などです。

形容詞の音便の種類

ちなみに形容詞にも音便があります。「ウ音便」です。

ウ音便

ウ音便は、発音しやすくするために、語中や語末の「く」「ぐ」「ひ」「び」「み」などが「ウ」の音になることです。関西弁や古典でよく登場します。

たとえば、

・よく → よう
・早く → 早う
・ありがたく → ありがとう

などです。

撥音便とは

あとまわしにした動詞の撥音便を見てみましょう。撥音便は単語の中の音が「ん」に変わることです。ナ行・ラ行・ワ行などの五段活用の動詞の連用形で、うしろに「て(で)」「た(だ)」「たり」などが続くときに「ん」に変化します。

たとえば、

・読みて → 読んで
・学びて → 学んで
・飛びて → 飛んで

などです。

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促音便と撥音便の違い・見分け方

促音便と撥音便は五段活用の動詞で起こります。違い・見分け方を整理してみます。

違い・見分け方1:「て(で)」「た(だ)」の前の音が「っ」か「ん」か

「て(で)」「た(だ)」の前の音が「っ」の音なら、促音便。
「て(で)」「た(だ)」の前の音が「ん」の音なら、撥音便。

違い・見分け方2:生じる条件が違う

促音便は、タ行、ラ行、ワ行の動詞に起こります。
撥音便は、ナ行、バ行、マ行の動詞に起こります。
ただし、例外もあります。

促音便と撥音便の覚え方

促音便と撥音便は、漢字で見ると、混同してわからなくなることがあります。促音便と撥音便の覚え方を紹介します。

覚え方1:フレーズで覚える

「東京で飛んで、取ってこい」。このフレーズを覚えると、「飛んで」は「撥音便」、「取って」は促音便と覚えやすくなります。

覚え方2:漢字の意味で覚える

促音便の「促」の字には、「間がつまる」という意味があります。よって「っ」となるのが促音便です。

覚え方3:パンツとソックスで覚える

「パンツ撥音便、ソックス促音便」と覚えると、「ん」のほうが撥音便、「っ」のほうが促音便と覚えやすくなります。

難しそうだけど、毎日、無意識に言ってます

撥音便や促音便、さらには動詞の五段活用など、難しそうで、見たくない!と思われた方もおられるかもしれません。

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文・構成/HugKum編集部

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