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「ソーラークッキング」って、知っていますか?
みなさんは、料理をするときにどんなエネルギーを使っていますか?ガス? 電気? 冬場は薪ストーブや灯油ストーブで煮物をする、という方もいるかもしれません。兵庫県・淡路島在住のソーラークッキング研究家サトウチカさんは、おひさまの力だけでおいしい料理を簡単に作ってしまう達人です。有限である化石燃料を使わず、地球に負担をかけることなく、家計にやさしく、健康にも役立つ──。そんな、いいことずくめのソーラークッキングについて、サトウチカさんにお話を伺いました。
おひさまのエネルギーだけで料理。まるで魔法のように食材がおいしくなる!
──ソーラークッキングとは、どのようなことですか?
サトウチカさん(以下、サトウ)ソーラーは太陽、クッキングは料理という意味なので、文字通り、太陽で料理をすることです。この地球には、太陽からの光がたくさん降り注いでいます。その光を集めると熱になるので、それを利用して、お湯を沸かしたり、料理をすることができます。
──ソーラークッキングを始めたきっかけは?
サトウ 2011年の東日本大震災です。当時、私は神奈川県横浜市に住んでいて、会社勤めをしていました。地震が起きたあと、4時間かけて歩いて家まで帰ったものの、停電で何もすることができませんでした。ご飯も作れない、お風呂にも入れない、暖房も使えない……。どれだけ電気に依存していたのかとショックを受け、エネルギーの自給に挑戦することにしました。太陽の力で電気の自給をして、電力会社との契約を解消(オフグリッド)しました。その流れで、ソーラークッカーの存在を知り、ガスの代わりに使い始めました。
メインからデザートまでソーラークッカーで作れます
太陽の光で料理をするためには、調理器具のソーラークッカーが必要。サトウさんは、主にエコ作(寺田鉄工所)を使って、さまざまなレシピを開発しています。オリジナルレシピやエコ作については、サトウさんのホームページをチェック。
──エネルギーの自給率はどれくらいだったのですか?
サトウ 当時は、太陽熱温水器も導入して、お湯やお風呂を沸かしていたので、ほぼ100% です。
──横浜という都会で実践していたというのが驚きです。
サトウ よく言われます(笑)。けれども、我慢しながらエネルギーの節約をしていたわけではなく、エアコンも冷蔵庫も使っていて、みなさんと変わらない生活をしていました。おひさまのリズムとともにある、楽しい暮らしです。
──ソーラークッキングですが、どのように料理をするのですか?
サトウ 私は主に「エコ作」という真空管式の調理器を使っています。真空構造になっているガラスの筒に水や素材を入れ、反射板にセットして、太陽が当たる場所に置くだけ。ガラスの中の温度は200℃くらいまで上がります。お湯だったら30~40分で沸きます。
「エコ作」を使ったソーラークッキングのやり方
食材を適当な大きさにカットして、塩を多めにまぶします。
食材をガラスの筒に詰めます。
反射板にセットして、1時間ほど太陽の光に当てます。
「日」が通り、甘い香りがしてきたら完成。
──雨の日はできない?
サトウ はい、雨が降っているときは、お休みです(笑)。曇りでも、おひさまを感じるような天候なら、時間はかかりますけれど、調理は可能。ちなみに、太陽光があれば、外気の気温には左右されないので、冬でも使えます。
──サトウさんのオススメレシピは何ですか?
サトウ なんといっても、焼き芋です。太陽光に含まれる赤外線が、サツマイモの甘さを引き出し、しっとりホクホクに仕上がります。晴れていれば40分くらいで焼き上がります。曇っていたら3~4時間かかりますが、低温調理でじっくりと「日」が通るので、これがまた美味!お芋だけでなく、いろいろな食材が、魔法をかけられたようにおいしくなります。
──しかも、太陽光そのものはお金がかかりませんね。
サトウ おっしゃる通り。ぜひ、太陽の恵みに目を向けてみてください。そして、太陽とともに暮らす楽しさと豊かさをソーラクッキングで実感してもらえたらうれしいです。
親子で体験! 干し野菜作りでおひさまの力を実感!
ソーラークッキングにチャレンジするその前に、おひさまの恵みを簡単に実感できる方法をサトウさんに教えてもらいました。
ソーラークッキングには専用の調理器具が必要なので、いきなりトライするにはハードルが高い……。そんな親子でも手軽に「太陽の力を実感できる」オススメの方法が、干し野菜作り。ダイコンやシイタケなどを切り、ザルに並べて、2~3日天日干しするだけ。おひさまに当てるだけで、旨味と栄養がアップ! 干し上がっていく過程を親子で観察して、でき上がったら、お味噌汁などの具にして、味を確かめてみましょう。
ゴーヤとダイコンを干してみました。3日後には……こんなに小さくなっちゃった! でも、おいしさがギュッと凝縮されています。お味噌汁にして「いただきまーす!」。
電力会社との契約を解消し、100%電力の自給を実現したサトウさんの暮らしの知恵をまとめた一冊。楽しく、豊かで、サステナブルなオフグリッド生活には、これからを生きるヒントが満載。
記事監修
サトウチカ
1983年、神奈川県生まれ。会社員時代に起きた東日本大震災をきっかけに、エネルギー問題に向き合い、2014年から横浜市でオフグリッド(電力会社との契約を解除し、電気を自給自足する)生活をスタート。17年までの2年半にわたり、光文社『女性自身』web版でコラム「サトウさん家のオフグリッドで暮らす知恵」を連載し、話題に。20年に淡路島へ移住し、エネルギーや食の一部を自給しながら、執筆や講演会などで楽しくオフグリッドするための”種”を蒔き続けている。
https://amaterasu.life/
『小学一年生』2021年12月号 別冊『HugKum』 構成・文/神﨑典子 写真提供/サトウチカ
1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。