「折檻」の読み方は?
さて、まずは読み方クイズです。上の言葉、正しく読んだものは以下のどれでしょう。
1)せつらん
2)しゃくらん
3)せっかん
4)しゃっかん
正解は
3)せっかん
「折檻」の意味
「折檻」はせっかんと読み、意味は以下のとおり。
過ちをきびしく指摘することのたとえ。転じて、責めさいなむことや、叱って体罰を加えることのたとえ。
『小学館 故事成語を知る辞典』
「せっかん」という言葉は、昨今では子どもへの虐待などを伝えるニュースの中で聞かれる言葉です。
でもこの「折檻」、使われている字を見ると「檻(手すり)を折る」となっていますね。「檻」はもともと罪人や動物を入れるおりや板囲いを意味する字。叱ったり体罰を与えることをなぜ「折檻」というのでしょうか。
「折檻」の由来
由来は紀元前一世紀の後半、前漢の時代。「漢書―朱雲伝(しゅうんでん)」にその逸話が記されています。
成帝(前漢の帝)が一人の大臣ばかりを重用して、その不公平な人事の弊害で朝廷は乱れていました。それを憂いて、別の臣下・朱雲(しゅうん)が帝に諫言しました。「帝に媚びてばかりの大臣を切り捨てるべきです」と。
すると成帝は怒って、朱雲を引っ立てて死刑にせよと命じました。すると朱雲は「自分の命よりも、王朝の未来が心配なんです」と叫んで宮殿の手すりにしがみつき、手すりが折れてしまったのです。
結局、他の大臣のとりなしによって朱雲は許され、成帝も折れた手すりを手元に保存することで、命をも顧みず帝を諫めてくれた臣下への感謝を胸に刻んだとのことです。
「折檻」は法律違反?
この逸話が物語るのは、相手の非を責めるにしても、心から相手のことを思う気持ちが大切ということです。
今では「折檻」は、「過ちをきびしく指摘する」という意味から「責めさいなむ」「体罰を加える」という意味に転じていますが、もともとは相手に肉体的な苦痛を与えることではなく、自分の身を危険にさらしてまでも、相手を正しい道に導こうとする正義感から起こった故事が由来でした。
そして、たとえ相手を思う気持ちがあったとしても、2020年4月からの児童福祉法改正で、体罰は家庭の中でも禁止されています。つまり体罰を伴う折檻は法律違反になります。
子どもを叱る際には、それがオリジナルの故事の折檻にあたる気持ちからなのか、転じて「懲戒としての暴力」になっていないか、ひと呼吸おいて見極める必要がありそうです。
参考:
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について
「体罰等によらない子育てのために|厚生労働省
* * *
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構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
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