ブロードバンドとは何?
ネット回線に関して「ブロードバンド」という言葉を聞いたことがあっても、正確な意味や「Wi-Fi」との違いが分からない人は少なくありません。まずは、ブロードバンドとは何かを簡単に紹介します。
大容量のデータを高速で通信できる回線
ブロードバンドとは、大容量のデータを高速で通信できるインターネット回線全般を指します。データの通る道幅が広いことから、「広帯域」を表す「ブロードバンド」と呼ばれるようになりました。
現在使われているインターネット回線のほとんどがブロードバンドです。素早く大量のデータを送受信できるので、容量の大きい動画やゲームなども快適に楽しめるでしょう。
ブロードバンドの普及により、動画配信サービスやオンライン会議、クラウド上にデータを保存するサービスなど、さまざまな新しいビジネスが登場しています。
以前主流だったナローバンドとは
ブロードバンドが普及する前の日本では、通信速度が遅く送受信できるデータも少ない「ナローバンド」が主流でした。ナローバンドは「狭帯域」のことで、ブロードバンドとは対照的な回線との意味で使われています。
ナローバンドでも、文字だけのメールやWebサイトの閲覧程度なら十分に可能です。ブロードバンドが行き届いていないなどの理由から、現在もナローバンドを使っている地域もあります。
Wi-Fiとの違い
Wi-Fiは、インターネット回線をパソコンやスマホなどの端末に届けるための電波です。
インターネット回線にルーターと呼ばれる機器をつなぎ、電波に変換して飛ばすことで、ケーブルを使わずにインターネットに接続できる仕組みです。
近年は、Wi-Fiを使った接続が主流なので、Wi-Fiとインターネット回線を混同している人も少なくありません。
しかしWi-Fiを使うには、元となる回線が必要です。回線とルーターを用意することで、初めてWi-Fiが使えると覚えておきましょう。
ブロードバンドの種類は3つ
インターネット上のデータは、ケーブルを通じて各家庭に届きます。ブロードバンド回線も、使うケーブルの種類によって3種類に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
電話回線を使う「ADSL」
ADSLは、電話回線を利用したブロードバンドです。電話回線はほとんどの家庭に元々備わっているため、工事費用や月額料金を安く抑えられます。
その代わり通信速度は他の二つに比べて遅く、YouTube動画のスムーズな再生すら難しいほどです。
登場した当時はスピード感があったものの、データ通信量が飛躍的に増えた現在では、ブロードバンドとは名ばかりの低速回線となってしまいました。
他の回線に乗り換える人も多く、利用者の減少が続いています。ADSLを提供しているNTTやソフトバンクでもサービスの終了を決め、既に新規受付を停止しています。
ケーブルテレビ回線を使う「CATV」
「CATV」は、ケーブルテレビに使用するケーブルの空いている部分を活用した回線です。1996年に「武蔵野三鷹ケーブルテレビ」が、国内で初めてサービスを開始しました。
CATVを利用するためには、ケーブルテレビの視聴契約とケーブル引き込み工事が必要です。
回線速度やデータ通信量は業者によって異なりますが、ケーブルテレビ会社は地域で決まっており、複数の業者を比べることはできません。
しかし、テレビ番組の視聴とセットで申し込めば料金が割安になるケースが多く、映画や専門チャンネルなど地上波以外の衛星放送も見たい人にはメリットが大きいでしょう。
通信専用回線を使う「光回線」
「光回線」は電話やテレビとの兼用ではなく、「光ファイバーケーブル」と呼ばれるインターネット通信専用の回線を使っています。
ADSLやCATVに比べて料金は高めですが、通信速度と安定感では群を抜いています。
また、利用にはCATVと同様、通信事業者との契約とケーブル引き込み工事が必要です。外壁に穴を開けるケースもあるため、賃貸住宅に住んでいる人は事前に管理会社に確認する必要があります。
なお入居者サービスとして、CATVや光回線のケーブル工事をあらかじめ済ませている住宅もあります。
ブロードバンドのメリット
ブロードバンドには、ナローバンドの時代には考えられなかった多くのメリットがあります。ブロードバンドが私たちの暮らしにもたらす、主なメリットを見ていきましょう。
利用料が定額
ブロードバンドが登場するまで、インターネットの通信料金は使った量に応じて課金される「従量制」でした。
従量制では、電話をかけたときと同じように、長く使えば使うほど料金がかかります。このためネット利用を我慢する人や、子どもが勝手に長時間使ってしまい、多額の料金を請求される人などが現れました。
一方、ブロードバンドは定額制のため、どれだけ使っても決まった料金以上はかかりません。費用を気にせず好きなだけインターネットを使えるのは、大きなメリットでしょう。
常時接続
ナローバンドでは、毎回パソコンで「モデム」と呼ばれる機器を立ち上げる接続作業が必要でした。
使うたびに手動で接続し、利用が終わったら切断していたのです。これでは仕事での調べ物のような、よほどの用事がない限りインターネットを使う気になれないでしょう。
しかし、ブロードバンドは常時接続なので、手動の接続作業は不要です。端末をLANケーブルにつなぐかWi-Fiの受信設定をするだけで、いつでもインターネットにつながります。
ゲームのオンライン対戦やインターネット電話、スマート家電が使えるのは、このように常時接続が可能になったおかげなのです。
動画などのダウンロードがスムーズ
ナローバンドの時代は、動画ファイルや高画質の写真は容量が大き過ぎて、送受信が困難でした。
例えば、デジカメで撮影した子どもの写真を、そのままメールに添付して実家の両親に送るのは難しく、画質を落とすか印刷して郵送するしかなかったのです。
ブロードバンドが登場してからは、動画や画像の送受信がとてもスムーズになりました。
ダウンロードはもちろん、自分が作成した動画のアップロードも簡単です。オンラインゲームやSNS、ライブのネット配信などを楽しめるのも、すべてブロードバンドの恩恵といえるでしょう。
テレワークにおすすめの回線は?
テレワークの定着などで、自宅にブロードバンドを導入しようと思った場合、どのような回線を選べばよいのでしょうか。おすすめの回線と注意点を解説します。
速度が速く安定した「光回線」
快適なインターネット環境を手に入れたいなら、光回線を選ぶことをおすすめします。
三つのブロードバンドのうち、最も料金が安いのはADSLです。しかしADSLは、既に新規受付を停止しています。CATVはテレビ契約が必要なので、あまりテレビを見ない人やテレワークを快適に進めたい人には向いていません。通信速度や安定感も、光回線より劣ります。
現在、最も高速でデータ通信量が大きい光回線を選んでおけば、将来的に子どものオンライン授業が始まったときや、在宅ワークへシフトしたいときにも、十分対応できるでしょう。
ただし、光回線を提供する事業者はたくさんあります。業者の選び方によってかかる費用は変わってくるので、慎重に検討しましょう。また工事が必要なので、賃貸物件に住んでいる場合は注意が必要です。
ブロードバンドでストレスのないネット環境に
現在の私たちにとって、インターネットは重要なインフラです。ネットが使えなければ、仕事にもプライベートにも、さまざまな影響が出るでしょう。
インターネットがここまで身近になった背景には、ブロードバンドの普及があります。特に光回線が登場してからは、インターネットの使い勝手は大幅に向上しました。
今後はもっとストレスのない、新しいブロードバンドが登場する可能性もあります。子どもが大きくなる頃には、光回線が「ナローバンド」と呼ばれているかもしれません。
文・構成/HugKum編集部