今年は寅年!でも「寅」は動物のことじゃなかったんです!【知って得する日本語ウンチク塾】

「寅」は、「つつしむ」という意味の漢字

「干支」は「かんし」とも読みますが、もともとは「十干十二支(じっかんじゅうにし)」、つまり「十干」(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)と、「十二支」(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)のことで、この組み合わせも言います。

2022年はこの組み合わせで言えば、「壬寅(みずのえ・とら)」になります。ただ、現在では十干を省略して十二支だけで「えと」ということもあります。

十二支は暦法で使われた語で、子(し)・丑(ちゅう)・寅(いん)・卯(ぼう)・辰(しん)・巳(し)・午(ご)・未(び)・申(しん)・酉(ゆう)・戌(じゅつ)・亥(がい)の12です。

そして、これらに12の動物をあてはめて、日本では、鼠(子(ね))・牛(丑(うし))・虎(寅(とら))・兎(卯(う))・竜(辰(たつ))・蛇(巳(み))・馬(午(うま))・羊(未(ひつじ))・猿(申(さる))・鶏(酉(とり))・犬(戌(いぬ))・猪(亥(い))と呼ぶようになりました。

 

中国では古くから、十二支に動物を当てはめていたのですが、なぜこれらの動物が選ばれたのか、実はよくわかっていません。というのも、「子」「丑」をはじめとして、「寅」もそうですが、十二支で使われる漢字には、もともと動物の意味はなかったからです。

「寅」の読みは「イン」

「寅」は、「イン」で、「つつしむ」という意味の漢字です。

でも日本では、こうした十二支にある漢字を、それぞれあてはめられた動物の名で読む読み方がすっかり定着しています。「寅」も、山田洋次監督の映画「男はつらいよ」シリーズの主人公、「寅(とら)さん」のように、この漢字を見て、ほとんどの人が「寅」=「虎」だと思っているでしょう。

くり返しますが、「寅」はもとより、十二支に使われている漢字には、本来動物の意味はなかったのです。

 

 

記事執筆

神永 暁|辞書編集者、エッセイスト

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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