小学生の子どもを持つ保護者であれば、いつか当番が回ってくる(かもしれない)登下校の見守り活動。その際の大切な道具に横断旗(黄色い手旗)があります。誰でも一度は見た覚えがあるはずですが、路上でいざ使えと言われたら正しく使えますか?
横断旗の正しい扱いについて、各地の自治体が出す資料を基にまとめました。疑問点については、自治体の交通安全・自転車政策課などにも問い合わせてみましたので、見守り活動のデビュー前にぜひチェックしてみてください。もちろんすでに経験がある人も復習を兼ねて要チェックですね。
子どもが関係する事件・事故は減っていない
そもそもの疑問として、登下校の見守り活動はなぜ必要なのでしょうか。ボランティアでやっている場合でも、朝の忙しい時間などに駆り出されると「面倒だな」と感じてしまう瞬間もあるはずです。
しかし、歩行中の死者数を年齢別で見ると、80代~90代の高齢者が突出して多いものの、15歳以下で見ると7歳(小学1・2年生)が最も多いと警視庁の資料でも明らかにされています。
さらに、警察庁の情報を基に文部科学省が作成した資料によると、人口10万人当たりにおける犯罪の発生(が認知された)件数は右肩下がりで改善されてはいますが、小学生以下10万人当たりの件数はむしろ、強制わいせつ・暴行・傷害において悪化しています。
要するに、社会全体の事件・事故は減っているのに、子どもが関係する事件・事故は減っていない、内容によっては増えている状況があるのですね。
その事件・事故を防ぐために大切な役割が、保護者やPTA、地域住人による登下校の見守り活動と考えられるはずです。
旗振りの手順とやり方
そんな大事な見守り活動で旗振り誘導の役割が回ってきたとしましょう。慣れていないとちょっと緊張しますよね。受け持ちの交差点や横断歩道に出向いたら、まず何をすればいいのでしょうか。
動きやすく目立つ服装で出掛ける
千葉県八千代市の『通学路 旗振り誘導ハンドブック』や神奈川県横浜市が作成した『はたふり誘導講習会資料 児童の見守り活動 ~活動される皆さんへのお願い~』、YouTube動画の『通学路のはたふり誘導』など、自治体が公開する各種資料でも述べられているように、旗振り誘導中は、
・動きやすい
・目立つ
といった服装を選びます。雨の日は傘を差さなくて済む格好で出向きます。自動車やバイクと誘導者自身の接触するリスクを低くできるからですね。
自動車から見える+歩行者や自転車の邪魔にならない場所に立つ
受け持ちの交差点や横断歩道の周囲には電柱・看板などがたくさんあると思います。それらの物陰に誘導者が隠れてしまえば、ドライバーから見えなくなり、接触事故のリスクも高まります。
一般のドライバーから目立つ位置に立ったとしても、居眠り運転やわき見運転のリスクもあると考えれば、
・ドライバーから目立つ
・後方などに退避できるスペースがある
などの場所を探して立つといいようです。
とはいえ、通行人や自転車の走行を妨げるような場所では元も子もありません。点字ブロックの上や自転車横断帯の上などを避ける配慮も忘れないようにしたいですね。
横断旗を左手で水平に構えて、子どもを待機させる
交差点や横断歩道に子どもたちが近付いてきたら地面と水平に横断旗を持ち、子どもたちの目線の高さに横断旗を出して飛び出しを防ぎます。いわば、遮断旗で道路内への侵入を防ぐイメージですね。
信号が変わったり、自動車が停車したりするまでの間は、子どもたちを車道から一歩下がらせて待機させてください。車道ギリギリの位置は、車道の脇をすり抜けてくる自転車やバイクとの接触リスクが高くなります。
交差点の場合は、左折する大型車の内輪差に巻き込まれる危険性もあります。
右手で持った旗を車道に出して、子どもを渡らせる(信号がある場合)
歩行者用信号が青になり、左右の安全を確認して侵入車両の有無を確かめたら、誘導者は車道に入るのではなく、横断旗だけを歩道から車道に出して子どもを渡らせます。誘導者も横断歩道に出る必要はないのですね。車の進行方向に対して横断旗は直角、路面に対しては水平に出します。
どうして誘導者は車道(横断歩道)に出ないのか。やはり、誘導者の安全リスクを考えての話のようです。さらには、次に来る子どもたちをすぐに制止できるポジションを確保するためでもあるみたいですね。
子どもたちを渡らせる際には、自分の目でも安全確認して、手を挙げるように声掛けしてください。無反応の子どもが多くても恥ずかしがらず、一方で反応がないからと強要するのでもなく、明るく元気に声掛けを続けたいですね。
左手で子どもを制止しながら、右手で斜め前に旗を上げてドライバーに合図する(信号がない場合)
信号のない横断歩道を受け持つ場合は、必要に応じてドライバーに止まってもらう必要もあります。横断歩道で歩行者が待っている場合、ドライバーは止まらなければいけないルールが道路交通法で定められています。
だからといって自動車の流れを高圧的に止める権利を誘導者が持っているわけでもありません。横浜市道路局交通安全・自転車政策課に聞くと、車を止める法的な根拠が誘導者にはないとのコメントがありました。
「歩行者がいるよ」と合図を出せるだけですので、自動車が安全に止まれる距離まで来たら、横断旗をはっきりと斜め前に上げ、歩行者の存在をドライバーに伝えてください。
自動車が止まってくれた段階で、左右の安全を確認し、自分は歩道にとどまって旗だけ右手で車道(横断歩道上)に出し、子どもを渡らせます。自分たち本人の目でも安全を確認して渡るように声掛けしたいですね。
右手に持った旗を頭上で左手に持ち替え、次に来た子どもを制止する
子どもたちが渡ったら右手に持った旗を頭上で左手に持ち替え、次に来る子どもたちの目の前に下ろします。一度上げて持ち直すと、自分の近くに集まってきた背の低い子どもの顔などに旗が接触するリスクを軽減できます。
この際、交通整理のスタッフをまねて、自動車の進行を旗でうながすような動作は控えたいです。かえって事故の原因になりかねないので、旗を頭上で左手に持ち替えお礼したら、自分の判断で自動車が動き出すまで見守ってください。
横断歩道の前で大型車が止まった時の話
信号のない横断歩道で旗振り誘導していると大型車が止まる場合もあるはずです。
横浜市道路局交通安全・自転車政策課が作成した「はたふり誘導講習会資料」によると、信号機のない横断歩道で旗振り誘導する際には原則として、大型車に止まってもらうのではなく、普通車に止まってもらうほうがいいとされています。
信号のない道路で大型車が止まると、前の見えない後続車が反対車線から追い越しを掛けたり、バイクが左側の路肩をすり抜けたりする可能性が高まるからですね。
それでも、道路交通法の定めによって、歩行者の待機する横断歩道の前では大型車も本来止まらなければいけません。ルールを守ってドライバーが止まったら、誘導者はどうすればいいのでしょうか?
横浜市道路局交通安全・自転車政策課に聞くと、大型車だからといって何か特別なやり方があるわけでない、とのこと。通常どおり、誘導者は車道(横断歩道上)に出ず、あくまでも歩道上から横断旗だけを出して子どもを渡らせてください。
その際には、すり抜け・追い越してくる車両がないか、子どもたち本人にも普段以上に自分の目でしっかり確認させましょう。
取材・文/坂本正敬
【参考】
※ はたふり誘導講習会資料 児童の見守り活動 ~活動される皆さんへのお願い~ – 横浜市