そら豆とは
5月頃に旬を迎え、大豆や落花生と並び世界中で食べられる豆です。未熟な若い豆を収穫し、甘く煮たものが甘納豆やお多福豆としておなじみです。完熟豆なら乾燥させた後、フライビーンズ(いかり豆)として食べられています。
エジプトではひよこ豆と共に、国民食ファラフェルとして愛され、また豆板醤に使われているのも、そら豆だそうですよ。「ジャックと豆の木」も、そら豆のお話ですから、お子さんにもお馴染みの植物ですね。
名前の由来
若さやの頃、空を向いてさやが伸びることから、空豆(そらまめ)という名前がつきました。さやが重みで下をむいてきた頃が食べ頃です。また、ちょうど一寸の大きさだったことから、一寸豆(いっすんまめ)とも呼ばれます。
気になる豆の匂い
新鮮なそら豆を調理していると気になるのが、その匂い。まるで足の裏を思わせる嫌な匂いがすることから、豆類を苦手とする方も多いです。これは、皮に含まれる成分が原因です。
対処法のひとつは、茹でる際に、ひとつまみの塩と共に10%程度のお酒を加える方法があります。または、外皮ごと焼くと生のまま皮を開かないので、気になりにくい調理ができます。換気扇を回し、最初の数分をやり過ごすと、かなり弱まります。
豆類は生命を繋ぐ最初の一粒ですから栄養が豊富で、豆自身を守る防御策としてこの匂いがある、と捉えてみるのはいかがでしょうか。ほっこりとしたかわいらしいお豆を味わうためには、通らざるを得ない道のようです。
そら豆を買ってきてから食べるまで
調理の直前まで皮のまま保存することが、おいしくいただく最大のコツです。
外皮をはずす
ゴワゴワの外皮を開くと、中にキレイな豆が並んでいるので、取り出します。可食部分よりも大きなゴミが出てしまいますが、この皮は豆を守るベッドです。なるべく皮のまま保存するほうが鮮度は保たれます。プロの料理人は、水の中で外皮をむいて、豆が空気にさらされないように気をつけるそうですよ。
薄皮をむく
豆を包む薄皮は固く、口にすることはできません。
【1】豆にある黒い筋と、反対側に包丁で切れ目を入れてください。
【2】切れ目からむいて薄皮をはずします。茹でた後に、むきながら食べるのも趣があります。
基本的な調理
潰してスープにしたり、天ぷらにしたり、調理法は様々ですが、ここではごく基本的な調理法をご紹介します。
・外皮ごと焼く
外皮ごとグリルやトースターで焼いて食べることができます。新鮮な豆の味がダイレクトに味わえる調理方法です。
外皮が黒く焦げるまで焼くと中の豆まで火が通り、ホクホクした食感が味わえます。
・塩ゆで
【1】鍋に少量のお湯を沸かし、2%分の塩を加えて豆を茹でます。(150ccの水に対して小さじ1/2が目安です。)
【2】茹で時間は2分〜3分程度。ザルに引き上げて冷まします。
【3】手で触ることができる熱さになれば、食べ頃です。
・炒める
薄皮をむいた豆を、オリーブオイルとにんにくで炒め、塩こしょうを振っていただくと、おつまみになります。
常温保存
常温で保存するのは、調理するまでの保管程度です。できるだけ早く冷蔵保存に移してください。
保存期間
すぐに味が落ちてしまいます。常温では1日程度の保存期限です。
冷蔵保存
冷蔵庫の野菜室に保存するのが、基本的な保存方法です。
手順
さやがついたまま、ポリ袋などに入れて野菜室に入れます。
保存期間
2〜3日程度の保存期限です。
冷凍保存1:皮のまま
サヤのままで冷凍する方法をご紹介します。鮮度が保てて、おいしさを逃しません。
冷凍手順
【1】そら豆の皮ごと、フリーザーバックに詰めてください。
【2】空気を抜いて、封をして冷凍庫へ入れます。
保存期限
1か月の保存ができます。
解凍方法
・そのままグリルで焼く
外皮が黒く焦げるまで焼きますが、中の豆は水分が保たれてジューシーです。
【1】魚焼きグリルやトースターを温めます。
【2】アルミホイルの上に、凍ったままのそら豆を並べて焼きます。
【3】皮に焦げ目がついたら火を止めて取り出し、器に盛ります。
【4】中身を取り出します。薄皮をむきながら、塩を振ってお召し上がりください。外皮の内側も、スプーンですくって食べることができます。
・電子レンジで解凍してから調理
【1】耐熱皿に、凍ったそら豆を並べ、電子レンジ600wで1分程度加熱して解凍します。
【2】外皮を外して、豆の薄皮をむきます。
【3】半解凍のまま、油で炒めたり茹でたりして調理します。
冷凍保存2:茹でてから
中身の豆を茹でてから冷凍する方法もご紹介します。小さくなるので省スペースになる保存方法です。
冷凍手順
【1】外側の皮を外します。
【2】薄皮に包丁で切れ目を入れます。
【3】鍋に少量のお湯を沸かして、塩をひとつまみ加えます。
【4】そら豆を入れて2分ほど加熱して引き上げます。固茹でに仕上げます。
【5】水に放ち、急冷した後、水気をよく拭き取り、薄皮をむきます。
【6】フリーザーバックに入れて冷凍します。
保存期限
2週間程度の保存期限です。
解凍方法
解凍方法をご紹介します。
・自然解凍
冷蔵庫に移して、3時間ほどでそのまま食べられます。
・電子レンジ
電子レンジ600wで、10粒で45秒を目安に加熱します。
・そのまま加熱調理に
炒めたり茹でたりする加熱調理には、凍ったままで加えてください。天ぷらなら凍ったまま衣をつけてそのまま揚げると、ホクホクに仕上がります。
乾燥させて保存
味が落ちやすいそら豆ですが、天日干しで乾かす方法なら、圧倒的に長い保存が可能です。自家栽培で大量に収穫できた際には、保存食として貯蔵することができますよ。
手順
【1】風通しの良い場所に、さやのまま並べて天日干しします。
【2】4日〜1週間程で黒っぽくなり、カラカラになれば乾いています。
【3】さやから乾燥した豆を取り出します。
【4】乾燥剤と一緒に紙封筒やポリ袋に入れて保存します。
保存期限
干し加減にもよりますが、半年〜1年程度は保つことができます。
使い方
一晩水につけて煮物に使う他、節分の煎り豆のように炒っていただくこともできます。
・煎り豆
【1】乾燥そら豆を水で一晩もどします。
【2】ザルにあげて水を切り、熱したフライパンで炒ります。
【3】絶えずフライパンを振りながら強火で炒ります。はじける音が鳴り始めたら弱火にして、15分ほど続けてください。
【4】お皿に移して、冷ましてからいただきます。
そら豆がたくさん使える!おすすめのレシピ
塩ゆで、焼き豆はシンプルでおいしいですが、豆を中心に使ったメニューをご紹介します。
そら豆とむきえびの春巻き
下処理が面倒で敬遠されがちなそら豆とえび。けれどやってみると意外と簡単なのでこの機会にぜひトライ! カリッと揚がった春巻きの中身は、そら豆のホクホクとえびのプリプリが美味しいですよ!
◆材料
(6本分)
そら豆(正味) 200g
むきえび 200g
春巻きの皮 6枚
粗塩 小さじ1/3
こしょう 少々
【A】
小麦粉、水 各大さじ1(混ぜてのりにする)
揚げ油 適量
◆作り方
【1】そら豆はさやから出して薄皮を取る。むきえびは背ワタを除いてきれいに洗い、水気をふき取る。
【2】【1】に粗塩とこしょうをふって、味をつける。
【3】【2】のそら豆、むきえびをそれぞれ3等分し、春巻きの皮で包み、【A】で縁をとめる。
【4】180度に熱した揚げ油で色づくまで揚げる。
教えてくれたのは
ウー・ウェンさん
北京生まれ。1990年に来日。雑誌で紹介した「北京の小麦粉料理」が評判となり、料理研究家に。東京と北京でクッキングサロンを主宰。
『めばえ』2018年6月号
そら豆とベーコンのポタージュ
冷凍食材を使ったお手軽ポタージュ。ご飯を加えてとろっとまろやかに仕上げました。ベーコンの塩気がアクセント!
◆材料
(大人2人+子ども2人分)
冷凍そら豆 40個
ベーコン 3枚
【A】
水 1と1/2カップ
顆粒スープの素 小さじ1
ご飯 茶碗小盛り1杯(120g)
牛乳 2カップ
塩 少々
◆作り方
【1】冷凍そら豆は皮をむき、ベーコンは細切りにする。
【2】鍋に【A】と【1】を入れて5分ほど煮る。
【3】火を止めて粗熱をとり、ミキサーにかける。鍋に戻して牛乳を加え、ひと煮立ちしたら、塩で味を調える。
※【2】のそら豆とベーコンの一部を刻んで浮き実にしても。大人は仕上げにこしょうをふってもおいしい。
◆ポイント
ミキサーがない場合は…
【1】素材をやわらかく煮たあと、熱いうちに、お玉の背でつぶします。お玉の代わりに、すりこぎやフォークを使ってもOK。
【2】さらに、なめらかにするには、作り終わった最後に、ざるでこし、ざるに残った分をへらでつぶします。
教えてくれたのは
ほりえさちこさん
栄養士、フードコーディネーター、飾り巻き寿司インストラクター1 級。男の子のママ。育児経験を生かした簡単で栄養バランスのとれた料理やかわいいレシピが人気。
『ベビーブック』2011年3月号
そら豆入り茶わん蒸し
大きな茶わん蒸しをみんなでシェアするので手間が省けるのでとっても簡単! 忙しい朝につるんと温かい茶碗蒸し、おススメです。
◆材料
(大人2人+子ども1人分)
卵 3個
そら豆 50g(正味)
こしょう 少々
塩 ふたつまみ
酒 大さじ1
水 200ml
【たれ】
しょう油 大さじ1
ごま油 大さじ1
こしょう 少々
※そら豆は、枝豆やグリーンピースなどでも代用可。
◆作り方
【1】ボウルに卵を割り入れてよくほぐし、水を加えて混ぜ、塩、こしょう、酒を入れる。
【2】【1】を注いだ耐熱の器を蒸し器(なければ鍋に水を張って代用)に入れて、フタをして強火で3分蒸す。
【3】さやから取り出して薄皮を除いたそら豆をのせて弱火にし、10分蒸す。たれをかけて食べる。
教えてくれたのは
ウー・ウェンさん
北京生まれ。1990年に来日。北京家庭料理が評判となり、料理家に。東京と北京でクッキングサロンを主宰。
『めばえ』2017年6月号
サヤと薄皮をむく作業も楽しい
ほどよい塩味が効いたそら豆のおいしさは、格別です。豆をむく作業もお子さんに手伝ってもらえば、植物が育つ過程を実感でき、食育の機会にもなります。楽しく下ごしらえをしながら、旬のおいしさを味わい、上手に保存してくださいね。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)